西島秀俊のハリウッド進出作となるミステリースリラー『サニー』は、7月10日(水)よりApple TV+にて全世界配信。本作の配信を記念して来日を果たした製作陣に直撃インタビュー!
本作の魅力や、西島秀俊らキャスト陣、日本での撮影などについて語ってもらった。
目次
海外ドラマ『サニー』概要
Apple TV+とA24がタッグを組んだ『サニー』は、日本在住のアイルランド人作家コリン・オサリバン著「ダーク・マニュアル」を原作に、京都を舞台に繰り広げられるダークなユーモアに溢れたミステリースリラードラマ。
主演と製作総指揮を兼任するのは、ラシダ・ジョーンズ(『オン・ザ・ロック』『ジ・オフィス』)。本作で本格的なハリウッド進出となる西島秀俊(『ドライブ・マイ・カー』)に加え、ジュディ・オング、YOU、國村隼、annie the clumsyなど、日本人キャストが多数出演していることでも注目を集めている。
この度、海外ドラマNAVI独占でインタビューしたのは、この2名。
★ケイティ・ロビンス(クリエイター、ショーランナー/製作総指揮)
本作では脚本も務めたほか、『アフェア 情事の行方』やF・スコット・フィッツジェラルド原作の『ラスト・タイクーン』などで脚本家、プロデューサーを務めてきた。元ジャーナリストで名門イェール大学卒。
★ルーシー・チェルニアク(製作総指揮/監督)
ロサンゼルスとロンドンをベースに活動するイギリス人の脚本家であり監督。『このサイテーな世界の終わり』では高い評価を受け、彼女が監督した回は、「Time」誌から2018年のテレビのトップ10に選ばれた。ほかに、『ステーション・イレブン』などを監督している。
海外ドラマ『サニー』製作陣インタビュー
キャスト&キャラクターについて
スージーとサニーのコミカルな掛け合いが面白かったです。二人の関係性を描く際にどんなことを意識しましたか?
ケイティ:最初にスージーが登場したとき、彼女は夫と息子を失くしたばかりで、考えうる最悪な状況にいます。そして夫について知らなかった事実を初めて知ることになり、精神的に動揺してしまうんです。そして彼女は、大変なときに内向きにこもってしまうタイプの人間なんです。そんな時に他人と交流することで自分は弱くなるんじゃないかと心配していて、家族を失くしたことでそのことを改めて思い知るんです。
物語の最初、彼女をそんな状態から引っ張り出してくれる誰かが必要だったんです。内側に引きこもるのを防いでくれる人ですね。なので、人生で最悪な瞬間を過ごしている人にとって、どんな関係性が必要なのかを探ることが興味深かったです。それだけでなくミステリーな要素も残せるような関係性を追及しました。最初にサニーが登場したとき、視聴者はこのロボットになにを期待していいのか分からないようになっているんです。
ラシダ・ジョーンズさんをキャスティングした理由は?本作で彼女は製作総指揮も務めていますが、彼女とはどのようにキャラクターを作り上げましたか?
ルーシー:私たちはコメディとドラマ要素どちらも演じることのできる俳優を探していたので、ラシダにスージーを演じてほしかったんです。彼女は、この二つの要素をバランスよく演じられるのでぴったりでした。また、彼女はスージーの機敏さと皮肉っぽさを表現するのにとても優れていたんです。だからラシダ以外は考えられなかったですね。
ラシダは、キャラクター作りにも大きく貢献してくれました。私たちとたくさん会話をして、彼女自身が選択をしたり、たくさんのアイデアを提供してくれました。彼女のおかげでスージーに命を吹き込むことができました。
西島秀俊さんをキャスティングした決め手は何だったのでしょうか。現場での彼の印象やエピソードなどがあれば教えてください。
ケイティ:彼の名前が候補として挙がった時点から、彼以外のマサは考えられませんでした。ちょうど『ドライブ・マイ・カー』が公開された頃で、私たちも見る機会があり、その後直接彼に会ったんですが、ぞっこんで惚れ込んでしまいました。彼は並外れた才能とカリスマ性があり、感情的な深さ、知的さもあります。
この男の人が、素晴らしいAIのシステムを発明した人なんだ、と視聴者に信じさせる必要があったんです。なのでそのような話し方ができて、真実味を与えつつ、さらにラシダの相手役としてケミストリーを感じる人じゃなきゃダメだったんです。
さらに、スージーという殻に閉じこもっている女性の心を開いた人である、ということも感じさせる人である必要がありました。実際に彼が部屋に入ってくると、その場がパッと明るくなるんです。彼なら誰の心も開けると思います。彼は、本当に素晴らしくて、優しいし、温かい方でした。私たちはとても恵まれていました。
ルーシー:そうですね。彼は、非常に細部まで気にかけてくれますし、キャラクター作りの上で色々な質問を投げかけてくれてました。勉強熱心で、とても素晴らしい方でした。
AIは孤独な人に変化を与えてくれる
本作を映像化しようと思った理由はなんだったのでしょうか?
ケイティ:原作が私の元に送られてきました。私はSF作品は好きなんですが、書くという点では惹かれるジャンルではありませんでした。だから、これまでSF作品をを執筆したことがなかったんですが、本作の原作を読んでみると、コアとなる大事な部分があったんです。
私が特に惹かれたテーマは、「私たちは困難な時、どのように乗り切るのか」です。私たちはどんな回復力を持っていて、どのように前進し続けることができるのか、という点です。原作にはその要素がありましたし、AIという要素は、人と人との繋がりというテーマを探求する方法として、私にとって興味深いものだったんです。
また、少し横道にそれますが、私は、人々が繋がりを持つのが難しいときに、AIがその代わりだったり、あるいは一時的に繋がりとなる存在になるかについて、多くのリサーチを行いました。喪失だったり、トラウマだったり、人々が心を閉ざしてしまうさまざまな理由があり、彼らが再び心を開くためには何が必要なのか。ロボットのおかげで人が再び周りとつながることに徐々に安心感を覚えることができるというアイデアは、とても興味深いものでした。
日本社会の描写
日本を舞台にした作品ということで、「引きこもり」「やくざ」「戸籍」など日本社会独自のものもたくさん登場していましたが、日本の描写で特に大変だったことはありますか?
ケイティ:私自身、映画業界に入る前にジャーナリストをやっていたことがあり、この仕事をする上で、リサーチは私にとってとても重要な部分です。日本で時間を過ごし、脚本を書いていく中で、できるだけ日本の要素を詰め込むことを意識して執筆しました。本当に日本に住んでいるような感覚を与えられるほどの信憑性と現実味を表現したかったんです。たくさんのコンサルタントたちが制作の全ての段階で参加してくれて、本当に日本にいるかのように見せることができているか常に確認してくれました。
そして、日本っぽさを感じないことに関しては、柔軟に変更していくことも重要でした。ストーリーテリングをする中で、ある意味で日本という場所に導いてもらったんです。自分の母国でない場所に住んで仕事をするということは、当然いろいろなことが違います。アメリカとは撮影の仕方も違いましたが、日本での撮影経験のある素敵なクルー、デザイナー、俳優、プロデューサーたちと協力して、お互いに多くのことを学びました。アシスタントディレクターはアメリカ人でしたが、途中から、撮影が始まる前に毎回「(日本語で)静かにお願いします」と言っていました。お互いの慣例を交換することで、本当に素敵なチーム「サニー」ができあがったんです。
日本の撮影で思い出に残っていることは?
ルーシー:たくさんあります。その中でも特に私たちの中で印象に残っているのは、ラシダがサニーを自転車の後ろに乗せて京都を駆け巡るシーンです。その撮影中に、舞妓たちの横を通り過ぎたり、有名な橋を通ったり、アイコニックな祇園の街並みの中で、あの撮影をやり遂げることができたのは信じられないです。最高なシーンですね。
希望を見つけてほしい
特にこだわったポイントや注目してほしいところは?
二人:たくさんありますね。
ケイティ:1つに絞るのは難しいですが、視聴者がこのキャラクターたち、スージー、サニー、ミクシー、マサ、ノリコたちに深く共感してくれればと思います。
あと、本作のビジュアルスタイルは特徴的で美しいので、そこにリアクションがあれば嬉しいです。登場キャラクターのフレームを見ただけで、すぐにサニーだと気付くことができますよね。ルーシーとデザイナーやほかの監督たちが、この作品の素晴らしい世界感を作り上げてくれました。
最後に、本作の核の部分は、孤独と繋がりを描いています。ダークで、ひねりが効いていて、ミステリーやスリラー、コメディの要素も含まれていますが、ベースにあるのは孤独と繋がりなんです。なので視聴者の方たちがそこに共感してくれて、さらに少しでも希望を見つけることができたら嬉しいです。
本作をこれからご覧になる日本の方に向けてメッセージをお願いします。
ケイティ:『サニー』をぜひ楽しんでご覧ください。撮影は本当に楽しかったですし、今回また日本に戻ってこられて嬉しいです。キャストのみんなは本当に素晴らしいので、キャラクターたちに共感してほしいです。
ルーシー:ベストを尽くした作品です。文化が違う国で撮影をするのは、挑戦だった部分もありますが、たくさんのリサーチをしたので正当に描けていると思います。ぜひ、本作を楽しんでください。
【あらすじ】
本作の主人公スージー(ラシダ・ジョーンズ)は京都に住むアメリカ人女性。彼女の夫で、電子機器メーカーの冷蔵庫部門で働いていたマサ(西島秀俊)と息子ゼンが、共に謎の飛行機事故によって行方不明となり人生が一転してしまう…。悲しみに暮れるスージーの元に、ある日マサの同僚だという田中(國村隼)が、ある贈り物をもって現れる。
それは、マサヒコが作ったという新型家庭用ロボット「サニー」だった―。突然登場した、得体のしれないロボットに戸惑い、苛立つスージーだったが、マサヒコの手によって、スージーの情報がプログラミングされていたことを知り、しだいにサニーとの間に奇妙な友情が生まれていく。やがて、スージーはサニーとともにマサヒコや息子に何が起きていたのかを探り始めるのだが…、それは恐ろしい世界への扉だった――。
『サニー』は全10話構成。最初の2話は7月10日(水)にAppleTV+にて独占配信。その後は9月4日まで、毎週水曜日に1話ずつ配信。(海外ドラマNAVI)
Photo:「サニー」 Apple TV+にて7月10日(水)全世界同時配信開始!
画像提供 Apple TV+