辛口の原作者が絶賛した『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』の脚色とは?

シーズン2が解禁されて話題を呼んでいる『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』。本家『ゲーム・オブ・スローンズ』に続き、本作でも製作総指揮に名を連ねる原作者のジョージ・R・R・マーティンが、原作にはなかった脚色部分をベタ褒めしている。米Entertainment Weeklyなど複数のメディアが伝えた。

自分が作り出せたら良かったけど…

世界を熱狂させた『ゲーム・オブ・スローンズ』のおよそ200年前を描くスピンオフ『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』では、ターガリエン家を中心に熾烈な権力争いが描かれる。そんな同作についての熱狂的なレビューを、マーティンが自身のブログで公開した。

6月中旬から順次お披露目されたシーズン2の第1話と第2話について、マーティンは「なんて素晴らしいシーズンの始まりなんだ。見事な演出だった」とコメント。「第1話『息子には息子を』での(レイニラ・ターガリエン役の)エマ・ダーシーはたった一つの台詞だったけど、目や表情でとても多くのことを表現し、完全にエピソードを支配していた。息子を殺されたことへの悲しみが痛いほど伝わってきたよ。そしてトム・グリン=カーニーは、これまで見たことがない方法でエイゴン(・ターガリエン)に息を吹き込んだ。ここでの彼はヴィラン以上の存在で、王の怒り、痛み、恐怖や不信感…何よりも人間らしさを我々に見せてくれる」と俳優陣を絶賛した。

そんなマーティンはライアン・J・コンダルが加えた、とある設定に感謝しているそう。「僕は…その…映像化する時に、脚本家が原作にはいないキャラクターを加えることをあまりいいと思わないタイプ。その原作が僕の作品である場合は特にね。でも、あの犬は最高だった」

ハウス・オブ・ザ・ドラゴン

彼が言う犬とは、赤の王城で働くネズミ捕りのチーズ(『ライン・オブ・デューティ』のマーク・ストッバート)が連れている犬のこと。シーズン2第1話でずっとそばに付き添っているこの犬をチーズが蹴ると、SNSでは怒りの声が殺到した。マーティンも犬の存在に激しく感情を動かされたようで、ドラマならではの脚色に言及している。

「チーズを嫌いになる準備はできていたんだけど、彼があの犬を蹴った瞬間によりいっそう彼のことが嫌いになった。あとで犬がチーズを見上げて鳴いた時には…心が打ち砕かれそうになったよ。ほんの小さなことなんだよ…たかが犬…なんだけど、あの犬の存在、あの子が登場した少しの時間が、ネズミ捕りの人間性を表すんだ。人間って本当に複雑な生き物。その犬の静かな存在が、たとえどんなに卑劣で腐りきった者でも、愛し、愛されることができるのだということを僕たちに思い出させてくれた。あの犬を自分が作り出せたら良かった。ただ、僕はできなかったけど、ほかの人ができた。そのことには感謝してる」

ハウス・オブ・ザ・ドラゴン

同じくマーティンが脚色を感謝しているのは、フィア・サバン演じるヘレイナ・ターガリエンに関する記述だ。「彼女が劇中で見せた奇妙な面は原作には書かれていないし、予知能力についても同じだ。これらは脚本家たちの話し合いから生まれたものだけど、ドラマ版のヘレイナを一度見たら、難癖つけることなんてできなかった。フィア・サバンのヘレイナは、僕がもともと創り上げたものより豊かで魅力的なキャラクター。目が離せない存在だよ」

原作を重んじるあまり、世に数多ある映像化に対して時に厳しい言葉を口にすることもあるマーティンが、これほどまでに脚色を称えるのは極めて稀なことと言えるだろう。原作者の創造すらも越えてゆく『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』が今後どのように成長していくのか楽しみだ。

『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』シーズン2はU-NEXTにて毎週月曜日に新エピソードが配信中。(海外ドラマNAVI)

参考元:ジョージ・R・R・マーティンのブログ米Entertainment Weekly

Photo:ジョージ・R・R・マーティン © 2012 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related programs are the property of Home Box Office, Inc./『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』シーズン2 © 2024 Home Box Office, Inc. All rights reserved.