名優ドナルド・サザーランド死去。息子キーファーやバイデン大統領が追悼

カナダ出身の名優、ドナルド・サザーランドが88歳で逝去した。80代になっても映画やドラマに頻繁に出ていたドナルドだが、実は長患いをしていたと伝えられており(病名は不明)、今月20日(木)にマイアミで息を引き取った。およそ200本の作品で活躍してきたベテランの死をアメリカの各メディアがトップで報じ、多くの共演者や監督が追悼の言葉を送っている。

『バックドラフト』共演者は「もう一人の息子」

カナダ東部ニューブランズウィック州のセントジョンに、11人兄弟の末っ子として生まれたドナルドは、若い頃からラジオのDJなど様々な仕事を経験。大学でエンジニアの資格を取ったものの、同時期に学んだ演劇の道に進むことを選ぶ。1960年代からドラマや映画に出演し始め、1965年にはクリストファー・リーやピーター・カッシングが出演した映画『テラー博士の恐怖』に参加。そして当初出演するはずの人が撮影開始直前に降板したことから抜擢された1967年の豪華キャストによる戦争映画『特攻大作戦』が成功を収めたことでドナルドも注目されるように。その3年後に主演した戦争映画『M★A★S★H マッシュ』がカンヌ国際映画祭のパルムドール(最高賞)やアカデミー賞脚色賞に輝く。

その後は、『コールガール』『赤い影』『普通の人々』『針の眼』『白く渇いた季節』『バックドラフト』『JFK』『アウトブレイク』『スペース カウボーイ』『プライドと偏見』『アド・アストラ』『ハンガー・ゲーム』シリーズなど、大作から芸術性の高いインディペンデント作品まで幅広く出演。息子のキーファー・サザーランドが主演した大ヒットドラマ『24 -TWENTY FOUR-』のファンだったと言われるドナルドは2000年代半ばからドラマに出演する機会も増え、『マダム・プレジデント ~星条旗をまとった女神』『ダーティ・セクシー・マネー』『クロッシング・ライン ~ヨーロッパ特別捜査チーム~』『TRUST』『フレイザー家の秘密』などでメインキャストを務めた。

飄々としたキャラクターから威厳あふれる悪役、主人公を支える恩師的なキャラクター、愛情豊かな父親まで幅広く演じていたドナルドだが、演技賞にはほとんど縁がなかった。1990年代にTV映画『ロシア52人虐殺犯/チカチーロ』でエミー賞とゴールデン・グローブ賞を手にしたものの、アカデミー賞には一度もノミネートされず2018年に名誉賞を贈られている。

そんなドナルドの死に数多くの業界人が反応。2015年の映画『ワイルドガン』で親子共演も果たしていた息子のキーファーは、幼い頃の自分と父親のツーショットをSNSに投稿。「父は映画史において最も重要な俳優の一人だったと思う。善人、悪人、醜い役…どんな役にもひるまなかった。彼は自分がすることを愛していた。それ以上に望むものはないだろう。いい人生だった」と綴っている。

1994年の『ディスクロージャー』で共演したマイケル・ダグラスは、彼とのツーショット画像に添えて「なんとも愛すべき、才能にあふれた、興味深い男だった」とコメント。

1991年の『バックドラフト』で組んだロン・ハワード監督は、「彼と一緒に仕事ができて幸運だった。頭が良く、興味深く、目を奪う俳優の一人だった。彼の演技の幅、新たなものを創り出す勇気、ストーリーへの献身性は信じられないほどだった」と称賛。

また、『バックドラフト』を含めてドナルドと3度共演(『ヴァイラス』『ダーティ・セクシー・マネー』)しているウィリアム・ボールドウィンは、故人を「いい意味で、複雑で風変わりな男だった。優しくて、どこか子どもっぽいところが大好きだったよ。彼は本当に唯一無二の存在で、ほかの誰とも似ていない。欠点すらもが彼を特別で、よりチャーミングな、より愛すべき存在にしていた」と表現。『ダーティ・セクシー・マネー』で2シーズンにわたって親子役を演じた際に、「自分の息子の一人じゃないかと思うくらい、君のことが好きだよ」と言ってもらえたことは決して忘れないとしている。

1971年の『コールガール』で共演したジェーン・フォンダは、同作に出た時の彼と自分とアラン・J・パクラ監督が写った写真をInstagramに投稿。彼とはこの映画で共演するだけでなく、ベトナム戦争に反対するツアーにも同行してもらったと回想し、そんな同志の訃報に「胸が痛い」と述べた。

1970年の『M★A★S★H マッシュ』でともにスターダムに駆け上がることになったエリオット・グールドもコメント。「ドナルドは身体的だけじゃなく、才能も巨大だった。それだけでなく、信じられないくらい親切で優しかった。(撮影当時の)俺たちは二人とも直前に息子が生まれ、父親になったばかりだった。人間としても俳優としても度量のある人物を失うのはいつだって悲しいことだが、ドナルドは俺にとって兄弟同然であり、俺のキャリアの重要な部分を占めているから余計にこたえるよ。親切な友よ、どうか安らかに。君のことがずっと大好きだし忘れないよ」

2017年の『ロング,ロングバケーション』でドナルドと老夫婦を演じたヘレン・ミレンは、次のような声明を発表。「ドナルドは私がこれまでに共演した中でも最も頭のいい人の一人。聴く耳を持っていたし、様々なことに対する造詣も深かった。さらにプロの俳優としての繊細さ、真剣さも持ち合わせていた。彼がレジェンドになったのは、そうした資質があったからこそ。私も一緒に仕事をしたことで友人になった。彼がいなくなって悲しいわ」

昔一緒に仕事をしたことがあるというロブ・ロウ(『ザ・ホワイトハウス』)は、演技を学んでいる人に向けて「『普通の人々』の彼を見るべきだ」と勧めている。

ドナルドと同じくカナダ出身で『クロッシング・ライン』で共演したキム・コーツは、彼とは赤ワインをしょっちゅう一緒に飲むような仲だったそうで、二人のオフショットを投稿。「我々は今日、レジェンドを失った。俺がカナダの若手俳優だった何十年も前、ドナルドはいつか会いたい人のリストのトップにいた。彼と『クロッシング・ライン』で一緒に働けたのは無上の喜びだったよ…」と、国が誇るレジェンドの死を悼んだ。

ドナルドの『赤い影』と『SF/ボディ・スナッチャー』に「大きな影響を受けた」と語るのはエドガー・ライト監督(『ショーン・オブ・ザ・デッド』)。キャリア初期からの彼の演技の素晴らしさについて熱弁を振るい、「ドナルド、あなたが逝ってしまったのは残念だけど、素晴らしいものを遺してくれた」と締めくくった。

また、アメリカのジョー・バイデン大統領も「ドナルド・サザーランドは夫、父親、祖父、そして何十年にもわたって世界中の人々を啓蒙し楽しませた唯一無二の俳優として多くの人に愛された」と追悼のコメントを寄せている。

そのほかにも、イライジャ・ウッド(『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ)、ヘンリー・ウィンクラー(『救命医ハンク セレブ診療ファイル』)、ルー・ダイアモンド・フィリップス(『プロディガル・サン 殺人鬼の系譜』)、デヴィッド・オイェロウォ(『グローリー/明日への行進』)、ローランド・エメリッヒ(『ムーンフォール』)、ゲイル・アン・ハード(『ウォーキング・デッド』)、マット・リーヴス(『THE BATMAN-ザ・バットマン-』)といったハリウッドの俳優、監督、プロデューサーらが名優の死を惜しんだ。多くの人に愛されたドナルドの冥福を祈りたい。(海外ドラマNAVI)

参考元:米Variety①米Deadline①米Variety②米Deadline②米Deadline③米Deadline④米Deadline⑤