メディアミックスの多い現代では、映画からドラマ化されることも多いが、映画としてヒットしたり賞レースを席巻したりした作品がもともとはドラマだった例もある。その中には、あなたは映画がオリジナルだと考えているものもあるかもしれない。そんな作品をいくつかご紹介しよう。(映画と、もとになったドラマのキャスト・スタッフが同じ作品は除く)
目次
ドラマから大ヒット映画となった作品
『ミッション:インポッシブル』
ドラマをもとにした映画が最もヒットしている作品といえば、トム・クルーズが1996年から主演しているスパイ映画『ミッション:インポッシブル』シリーズだろう。主人公イーサン・ハントを演じるトムが、仲間とともに不可能と思われるミッションの数々に挑むスパイアクションで、ブライアン・デ・パルマ、ジョン・ウー、J・J・エイブラムス、クリストファー・マッカリーなどがメガホンを取ってきた。2023年までにシリーズ7作品が作られており、2025年に8作目が公開予定。これまでの全世界での興行成績は40億ドル(約6200億円)を超える。
もとになったドラマシリーズは、米CBSにて1966年から1973年まで7シーズンにわたって続いた。製作総指揮を務めたのは、『マニックス特捜網』や『刑事ブロンク』でも知られるブルース・ゲラー。映画でもおなじみのオープニングテーマはドラマ当初からおなじみ。リーダー役のピーター・グレイヴスをはじめ、オスカー俳優のマーティン・ランドー、『スター・トレック』シリーズのミスター・スポック役でおなじみのレナード・ニモイなども出演。ピーターは1988年から米ABCで2シーズン放送された続編ドラマ『新スパイ大作戦』にも主演していた。
『逃亡者』
ハリソン・フォード演じる医者リチャード・キンブルが妻殺しの濡れ衣を着せられ、護送途中の事故をきっかけに逃亡者となって無実を証明するために奔走する1993年の映画『逃亡者』。アカデミー賞で作品賞を含む7部門にノミネートされ、キンブルを追うサミュエル・ジェラード役のトミー・リー・ジョーンズ(今では某CMの宇宙人役でおなじみ)が助演男優賞を受賞と、ハリソン出演作の中でも評価が高いことで知られる。
その元ネタとなったドラマシリーズも評価が高く、米ABCにて1963年から4シーズンにわたってリチャード・キンブルの逃走劇が描かれた。1967年に放送された最終回の視聴率は50%にも達し、1980年に『ダラス』に破られるまで全米最高記録を保った。1950年代に実際に起きた事件をモデルとしており、エミー賞作品賞を受賞した同作のクリエイターは、『シャイアン』や『マーベリック』もヒットさせたロイ・ハギンズ。2000年のリブート版はクリフハンガー展開のまま1シーズンで打ち切られた。
日本でも江口洋介、渡辺謙主演でリメイク。また、ハリソン主演の映画版は1998年にジェラード役のトミー・リーを主人公にした『追跡者』という続編も作られたが、こちらは前作のような成功を収めることはできなかった。最近では、2020年にボイド・ホルブルック、キーファー・サザーランド出演のミニシリーズも作られている。
『アンタッチャブル』
『逃亡者』と同じくアカデミー賞に絡む名作映画が出来上がったのは、1987年の『アンタッチャブル』。1930年代のシカゴを舞台に、ギャングのボス、アル・カポネを摘発すべく、腐敗した組織の中で孤独な闘いを繰り広げた捜査チーム“アンタッチャブル”の姿を描く。アカデミー賞助演男優賞に輝いたショーン・コネリーをはじめ、ケヴィン・コスナー、アンディ・ガルシア、ロバート・デ・ニーロらが出演。スタッフも、監督にブライアン・デ・パルマ、脚本にデヴィッド・マメット、音楽にエンニオ・モリコーネなどの一流が揃った。
原作は、チームのリーダーを務めたエリオット・ネスの伝記。映画よりも先に米ABCにて1959年から1963年まで4シーズンにわたってドラマ化されており、こちらではネスをロバート・スタックが演じてエミー賞を手にした。ドラマシリーズは1993年にも作られ、その『新・アンタッチャブル』ではトム・アマンデス(『エバーウッド 遥かなるコロラド』)が主演を務めている。
『21ジャンプストリート』
ジョナ・ヒルとチャニング・テイタムがオトボケ刑事コンビを演じた2012年のアクションコメディ映画『21ジャンプストリート』。2年後には続編『22ジャンプストリート』も作られた。その元ネタとなったのは、20代の頃のジョニー・デップが出演していたことでも知られる刑事ドラマ『21ジャンプ・ストリート』で、本国アメリカで1987年から1991年までの5シーズン続いた。なお、ジョニーをはじめとしたドラマ版のキャスト数人は映画1作目にカメオ出演している。
『チャーリーズ・エンジェル』
チャーリー探偵事務所に所属する3人組の美人探偵の活躍を描く『チャーリーズ・エンジェル』は、ドラマ・映画ともに大ヒット。キャメロン・ディアス、ドリュー・バリモア、ルーシー・リューというタイプの違う3人が主演した2000年の映画版は、アップテンポな展開と小気味良いアクション、明るいコメディがハマり、制作費のおよそ3倍となる2億6000万ドル(約403億円)を荒稼ぎ。3年後にはデミ・ムーアが悪役を演じる続編『チャーリーズ・エンジェル/フルスロットル』が公開された。2019年にはクリステン・スチュワート、ナオミ・スコット、エラ・バリンスカが新たなエンジェルを演じる形でリブート版が作られるも、こちらは過去作ほどの成績を収めることができなかった。
米ABCにて1976年から1981年まで5シーズンにわたって続いたドラマ版の『チャーリーズ・エンジェル』は、3人のエンジェルのうちジルを演じたファラ・フォーセットが特に人気を博した。彼女が1シーズンでレギュラーから降板した後は、エンジェルの顔ぶれを適宜入れ替える形でストーリーが綴られた。こちらも2011年に『新チャーリーズ・エンジェル』というリブート版が作られ、映画シリーズで主役の一人を務めたドリュー・バリモアが製作総指揮として参加。エンジェル役をアニー・イロンゼ、ミンカ・ケリー、レイチェル・テイラーが務めた。当初は全13話想定だったが、視聴率の低さを受けて早々にキャンセルが決定。急遽最終話とされた8話目は結局アメリカでは放送されなかった。
『アダムス・ファミリー』
Netflixで2022年より配信されると史上最も見られた海外ドラマとなった『ウェンズデー』の影響もあり、再度注目されるようになった1991年・1993年のホラーコメディ映画シリーズ『アダムス・ファミリー』。アンジェリカ・ヒューストン、ラウル・ジュリア、クリストファー・ロイド、クリスティナ・リッチといった個性的な面々が洋館に暮らすお化け一家を演じた。1930年代より描かれたチャールズ・アダムズの漫画を原作としており、最初の映像化は1964年にスタートした米ABCのドラマ『アダムズのお化け一家』。こちらで一家の長ゴメスを演じたのはジョン・アスティン(『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのサム役で知られるショーン・アスティンの父親)。
このタイトルはメディアミックスが特に盛んで、1973年には米NBCで、1992年には米ABCでアニメシリーズに(前者にはジョディ・フォスターが声優として参加)。また、1998年にはそれぞれ別のキャストで2本の実写ドラマも作られた。さらには2010年にブロードウェイでミュージカル舞台に生まれ変わっている。そして、前述した通り、2022年にはアダムス家の長女ウェンズデーを主人公にした犯罪コメディドラマが誕生。現在はシーズン2の製作が進められている。
(海外ドラマNAVI)
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