6年連続ダウン!テレビ界のLGBTQキャラクターの36%は翌シーズンに戻ってこない!?

NPO法人GLAAD(Gay & Lesbian Alliance Against Defamation)の調べによって、アメリカのドラマに登場するLGBTQキャラクターの3分の1以上が翌シーズンに戻ってこないという結果が出た。米TV Lineが伝えている。

番組の終了、1シーズン化が影響

アメリカ国内でLGBTQに関するモニタリングなどを行っているGLAADが年に一度行っている調査結果の今年度分が発表され、ドラマにおけるLGBTQキャラクターのうち36%が翌シーズンには戻ってこないことが明らかに。考えられる理由の一つには、番組の打ち切りが相次いでいることも含まれているという。

『ザ・ルーキー:FEDS FBI新米捜査官ファイル』のように複数のLGBTQキャラクターが登場する作品が打ち切りになった後、同じような作品が続けば問題ないものの、実際にそのようなことが起きていないため、結果として放送局のドラマにおけるLGBTQキャラクター数は6年続けて下降している状況だ。

昨年ハリウッドで起きたストライキの影響を認めている一方で、前述のような問題があることも示す今回の結果。報告書には「現在ネットワークで放送されているドラマでLGBTQキャラクターが唯一の主人公として登場するシリーズは一つも存在しません」と書かれている。

GLAADの代表であるサラ・ケイト・エリスは、「エンターテインメントにおけるLGBTQの存在は、全米にいる成人の5人に2人以上にとって重要であり、18~24歳のLGBTQと非LGBTQの若者の圧倒的多数がクィアに包括的なメディアを積極的に求めているが、LGBTQの人々に対する表現に満足しているのはそのうちのわずか38%だ」という調査結果を用いて、包括性が重要な理由について説明。「Z世代に当たる米国の成人の5人に1人以上が自らをLGBTQとして認識している」と、別のデータも示している。

今回の調査結果の中から、いくつか注目すべき項目を見てみよう。

<プラットフォーム別キャラクター減少数>
ネットワークの作品全体で合わせて454人に上るシリーズレギュラーキャラクターのうち、今年度は39人(8.6%)がLGBTQで、昨年度から31人(2%)減少。翌シーズンに再登場するLGBTQキャラクターは、ネットワークが昨年度から37人減の64人、ケーブルテレビが62人減の77人、配信が29人減の327人。

<36%がカムバックしない理由>
前述したようにLGBTQキャラクターのうち36%がカムバックしない結果に。その理由として、番組の終了や打ち切りに加えて、キャラクターが死んだりどこかへ行ってしまったり、番組のリミテッドシリーズやアンソロジーシリーズ化が増えていることが挙げられる。

番組が終了となったLGBTQキャラクターがいる作品の例としては、『プリティ・リーグ』『The Other Two/ジ・アザー・トゥー』『独身女の禁酒ライフ』『グッド・ドクター 名医の条件』『スター・トレック:ディスカバリー』『ラ・ブレア』など。なお、先日キャンセルされた『NCIS:ハワイ』もこうした作品の一つだが、打ち切られたのが最近のため今年度のデータには含まれていない。

<放送局>
LGBTQキャラクターの数は、今回は2017~2018年シーズン以来の最低結果を記録。2021~2022年シーズンに比べると半分以下まで減ってしまった。

局別に見ると、LGBTQ包括性が最も高かったのは15%を記録したABC。次いで9.2%のCBS、7.3%のNBC、6.3%のCW、そして5.2%のFOXと続いた。新しい経営体制になったCWは、それまで6年連続でキープしていた1位の座を失うことに。なお、ABCの数字が高い理由の一つは、『9-1-1:LA救命最前線』がこのシーズンからFOXより移ってきたため。

<ケーブル局>
ケーブル局でゴールデンタイムに放送された脚本付き作品におけるLGBTQキャラクター数は合計77人で、昨年より45%ダウン。

7人のLGBTQキャラクターが出てくる『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』を抱えるFXは、Showtimeと並んで15人で1位タイ。しかしFXに関しては、同作が来シーズンで終了となり、『フュード』『アメリカン・ホラー・ストーリー』といった今年の数値に貢献した新作もリミテッドシリーズ/アンソロジーシリーズであるため、急激な減少が待ち受けていると予測している。

また、HBOは昨年の26人から5人へと大幅に減ったが、これは『ユーフォリア/EUPHORIA』『THE LAST OF US』『サムバディ・サムウェア』という3作がいずれもこの2023~2024年シーズンは新シーズンの放送がなかった(新シーズンを製作中)ため数値に含まれなかったことが影響している。そして、これまで『NYガールズ・ダイアリー 大胆不敵な私たち』『FAMOUS IN LOVE』『クルーエル・サマー』『独身女の禁酒ライフ』といった作品で知られたFreeformは、昨年の16人から半減の8人となり、10年間で初めてトップ3圏外に。同プラットフォームは脚本付き番組を今後制作しない方針を打ち出しているため、GLAADが嘆いている。

<配信>
作品数の多さも影響しているだろうが、プラットフォーム別で最多のLGBTQキャラクター数を誇るのは配信だ。しかし、合計327人のうち119人(36%)は翌シーズンに戻らない見込み。

327人のおよそ半分(47%)にあたる155人を抱えるのはNetflixで、『セックス・エデュケーション』『ヤング・ロイヤルズ』『アッシャー家の崩壊』といった作品が貢献したが、これら3作はいずれも番組終了やリミテッドシリーズである関係により翌シーズンには反映されない。一方、『ストレンジャー・シングス 未知の世界』『アンブレラ・アカデミー』『愛をこめて、キティより』などはシーズンの狭間にあるため今年度はカウントされなかったが、翌シーズンの数値には影響してきそうだ。

Netflixに次いで多いのはAmazon Prime Videoで、54人のLGBTQキャラクターを有する結果に。これは前年比で11人増だが、そのうち16人が翌シーズンは戻らない見通しだ。Maxは38人(前年比4人増)、Huluは25人(12人減)、Paramount+は21人(11人増)、Apple TV+は11人で横ばい、Disney+は10人(4人減)という結果になっている。

(海外ドラマNAVI)

参考元:米TV Line

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