英国ドラマの二大巨頭とも言える2つの放送局、BBCとITVが国外向けに共同で展開していた動画配信サービス BritBox International。この度、BBCが2億5500万ポンド(約485億円)を支払い、ITVが保有していた同ストリーミングの株式を買い取ったと、ロイター通信など複数のメディアが伝えている。これはBBCの商業部門において過去最大規模の取引となり、業界を驚かせている。
950億円以上の価値がある!?
すでにITVは保有していた50%の株式をBBCに売却したことが確認されており、BritBox InternationalのCEOを務めていたリーマー・サカーンは事業から退任することが決定。BBCは新たな組織づくりへの円滑な移行をすでに進めているとし、まもなく発表予定だと声明で述べている。
BritBox Internationalでは、『ライン・オブ・デューティ』『ミステリー in パラダイス』といったBBCやITVの過去の名作に加えて、英国で放送されたばかりの作品を24時間以内に最速配信するなどして、競合との差別化を図ってきた。米国をはじめ、カナダやオーストラリア、北欧など世界8つの地域でおよそ400万人の登録者数を誇り、5億ポンド(約950億円)以上の価値があるストリーミングサービスと評価されている。
なお、ITVがすべての株式を保有しているBritBox UKは今回の買収の影響を受けず、BBCのコンテンツは別の長期契約の一部として同ストリーミングサービスに留まる予定。
BBC StudiosのCEOトム・ファッセルは、「これは私たちにとって重要な買収です。我々がよく知るサービスであり、成功と成長を続けるサービスの完全所有権を獲得するというのは、当社のビジネスの規模を倍にするという目標に適しています。Britbox Internationalは英国コンテンツを取り揃えており、国外における英国番組の需要を生み出し、満たしています。BBCに長期的な価値をもたらすべく、今後も多額の投資を続けていきます」と声明で発表。
これまでBritbox Internationalを率いてきたサカーンも、「BBCが我々の培ってきた成功と野心的な DNAを引き継いでくれることは間違いありません」と声明で述べている。
ユーザーが気になるのはコンテンツへの影響だが、そうした心配はいらないそう。最高峰の英国エンターテイメントを国際的に届けるという理念は変わらず、「買収戦略や番組を変更する予定はない」と発表している。
富士通も関連した郵便局スキャンダルを描いた社会派ドラマ『Mr Bates vs the Post Office(原題)』など、世界的に注目を集めるシリーズを世に送り出しているITV。いわゆる薬害エイズ事件をテーマにした新作ドラマの制作も報じられており、社会問題に一石を投じる実話に基づいたドラマで存在感を増しているが、今回の取引を機に、今後は自社の動画配信サービスITVXやグローバル部門の強化に注力していくという。(海外ドラマNAVI)
Photo:『ライン・オブ・デューティ』© World Productions (Northern Ireland) MMXIX