マーベル映画『アベンジャーズ』シリーズのハルク/ブルース・バナー役で最も知られているマーク・ラファロが、そのイメージを覆す渾身の演技で絶賛された米HBOのミニシリーズ『ある家族の肖像/アイ・ノウ・ディス・マッチ・イズ・トゥルー』(2020年)を、米Colliderが「見逃し厳禁」作品として推しているので紹介したい。
HBOドラマ『ある家族の肖像』の見どころ
『ある家族の肖像』は、ウォリー・ラムによる1998年出版の小説「この手のなかの真実」のドラマ化で、1990年代のコネチカット州スリーリバーズで育った双子の兄弟、ドミニク&トーマス・バードシーの物語が描かれる。作家としてのキャリアが下降線を辿っていたドミニクは、妄想型統合失調症を患うトーマスを支えながら、過去の悲劇や新たに明かされる衝撃的な家族の秘密に直面しながらも、人生を立て直そうと懸命に前へ進もうとする──。
双子の間に存在する深く強い絆を探求する同シリーズでは、メンタルヘルスの問題に取り組みつつ個人が直面する課題に光を当て、メロドラマ的な展開や美化に逃げていない点に注目したい。また、統合失調症と共に生きることがトーマスの現実だとし、メンタルヘルスの問題を“避けるべきトピック”として描いていないところも評価に値するだろう。
劇中では、ドミニクとトーマスの波乱万丈な歴史を描く効果的な手段として、フラッシュバックが使われている。通常フラッシュバックは、過去に何が起きたかを説明する冗長な言い訳として投入されることが少なくないが、本シリーズでは兄弟の子ども時代について知るべき必要なシーンだけが切り取られ、それらの場面が、二人の関係性を違った角度で捉えているのが興味深い。
マークの演技力に注目!
そして、何といっても本シリーズの見どころは、双子の感情的な深みを真実味をもって演じ分けたマークの傑出した演技力だ。トーマスの世話に疲れ切り、不満を抱えるドミニクの苛立ちが攻撃性と誤解されれば、視聴者がドミニクに感情移入できなくなってしまう。また、妄想型統合失調症を患うトーマスの描写に配慮が欠けていたら、メンタルヘルスに光を当てようとするシリーズの意図を裏切ることになっていただろう。しかし、マークは兄弟に対して妙な先入観を抱かせず、一つの特徴だけでキャラクターが定義されないよう体現している。9kg減量して弟ドミニクを、その後18kg増量し兄トーマスを演じた役作りにも注目だ。
まさにキャリアを決定づけるかのようなマークの熱演により、メンタルヘルスやうつ病、機能していない社会基盤などの問題を、驚くほど緻密なディテールさで浮き彫りにしたシリーズは見逃し厳禁だ。
全く異なる双子の兄弟を巧みに演じ分けたマークは、この年のエミー賞とゴールデングローブ賞主演男優賞を受賞した。『ある家族の肖像/アイ・ノウ・ディス・マッチ・イズ・トゥルー』は、U-NEXTにて配信中。(海外ドラマNAVI)
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