『ONCE ダブリンの街角で』『はじまりのうた』『シング・ストリート 未来へのうた』などの音楽映画を手掛けてきたジョン・カーニー監督の最新作『フローラとマックス』はApple TV+にて配信中。本作の主役にU2ボノの娘イヴ・ヒューソンを起用した理由について米EWに語っている。
映画『フローラとマックス』
シングルマザーのフローラが、ギターと作曲を習うことで10代で反抗期の息子マックスと心を通わせていく音楽映画。フローラ役を、U2のフロントマン・ボノを父親に持つイヴ・ヒューソンが演じている。
脚本も手掛けたカーニーが、イブの起用理由や本作のインスピレーションについて話した。
キャスティング
キャスティングについて、イブがロックのレジェンドの娘だから起用したのか?という問いに、カーニーは以下のように答えた。
「彼女が俳優だとは知らなかったんだ。エージェントに脚本を送ったら、電話がかかってきて、"イヴを考えた方がいい"と言われたんだ。それで彼女とZoomをしたんだが、その電話で彼女がフローラと完璧にマッチすることが分かったよ。彼女との話し合いの後、他の誰に会ったとしてもその人たちはフローラではないと思わせてくれた。彼女は毎日本当に頑張ってくれていたよ」と話し、イブの起用はすぐに決まったという。
カーニーは「彼女は自分を歌手だと思ったことはないと思う。彼女は、セメントにつけられた父親の手形に手を重ねようとはしなかった。彼は何十年もの間、最も偉大なロックの歌声の一人なのだから。彼女が完全にコミットしたシンガーかシンガーソングライターでない限り、それ(プロの歌手)に近づくことはないだろうね」と続ける。
「彼女がこの役を演じる勇気と自信を持っていたのは、素晴らしいシンガーであるかそうではないかはこの役には関係ないということを理解していたからだ。彼女はとても良い声を持っている。でも、この映画は彼女が素晴らしい歌手であるということを描いているわけではないからね」
インスピレーション
また、本作のインスピレーションは、自身の体験が基になっているという。
「ダブリンのストリートを歩いていて、ゴミ箱を通り過ぎたんだ。ゴミ箱の中には、瓦礫やカーペット、ワイヤーの切れ端など、たくさんのものが入っていた。その中に、誰かが捨てていった小さな練習用のアンプがあった。それを家に持って帰って修理したら動いたんだ。もしアンプを持っていなかったら、自分にとってどういう意味があるのだろう?と思ったよ。私はアンプを何台も持っているから、それほど大きな意味はなかったけれど、もしお金がなかったら、もしアンプがなかったら、それはかなり大きな意味を持つだろう。その体験は、失礼ながら私の心に響いたんだ。アンプじゃなくてギターにしようと思って、瓦礫の中からギターを救うと同時に拾った人がギターに救われる、というストーリーが生まれたんだ」
イブは、これまで映画『パピヨン』『フッド:ザ・ビギニング』やドラマシリーズ『瞳の奥に』『バッド・シスターズ』などに出演してきた。『フローラとマックス』は、Apple TV+にて配信中。(海外ドラマNAVI)
Photo:©Apple TV+