『グッド・ドクター』シーズン6放送直前!主人公ショーン役声優、岡本信彦インタビュー「ショーンを見て自分も頑張ろうと思える」

天才的な能力を持つ自閉症でサヴァン症候群の青年がドクターとして成長していく姿を描く人気ドラマ『グッド・ドクター 名医の条件』。米ABCで昨秋から今年5月にかけて放送されたシーズン6(全22話)が、いよいよWOWOWにて10月25日(水)より放送・配信となる。

それに合わせて、シーズン6のアフレコが絶賛行われている収録現場にお邪魔し、主人公ショーン・マーフィーの日本語吹替えを担当する岡本信彦に直撃! 通算エピソード100話を迎えるシーズン6の見どころや、本作の魅力、思い出などを語ってもらった。

『グッド・ドクター』シーズン6

今回お邪魔したアフレコでは、シーズン6の第19話の収録が行われており、収録ブースには、ショーン役の岡本、グラスマン役の岩崎ひろし、リア役の保澄しのぶが揃っていた。岡本は、シーズン6である問題を抱えるグラスマンに対して今までにない感情を見せるショーンや、サヴァン症候群でありながら外科医として一人前になったショーンという難しい役柄の吹替えを難なくこなす。そこに、岡本と長年に渡って共演してきた岩崎と保澄が、息の合ったバツグンのコンビネーションを見せていた。収録全体も、医療用語のアクセントの指摘など医療ドラマの吹替えならではの演出があったりと、随所にこだわりのあるアフレコとなっており、シーズン6の放送が待ち遠しいものとなっていた。

(※以下、シーズン5までの展開に関する内容を含みます)

『グッド・ドクター』ショーン役声優、岡本信彦インタビュー

ショーンと僕の成長が重なっている

――いよいよシーズン6、そして通算エピソード100話を迎えますが、今まで吹き替えをしてきてどのような思いでしょうか?

僕はもともと吹替えの経験があまり多いほうではなかったんですけど、だからこそ吹替えの時のお芝居とアニメの時のお芝居ってどういう違いがあるんだろうというところからスタートしていました。その中でも、『グッド・ドクター』のショーン・マーフィーは、リアルなキャラクターではあるものの、どこかデフォルメ要素もあるので、そういうところにアニメの要素もあったほうが魅力を伝えられるキャラクターなのかなと思っていたんです。なので、毎話、自分の中でショーンの魅力を声でどうやって表現できるかというのを考えながらやっているんですけど、100話を迎えると、ショーン自体もだんだん成長してきているので、ショーンと僕自身のリアルな成長が重なっていって、今は大人への階段を登っているような感覚がショーンにも僕にもありますね。

ショーン・マーフィーについて

――今もお話がありましたが、フレディ・ハイモア演じるショーンの魅力とはどんなところでしょうか?

ピュアなところだと思っていまして、可愛らしくもあり、不思議さもあり、頭がいいが故の怖さみたいなものもどこかに眠っているのかなとは思いますね。たびたび出てくる描写として、人とのコミュニケーションの中で、これは言わないほうがいいよねというのがあると思うのですが、例えば、ガンの宣告をさらっと言ってしまうのがショーンなんです。そこは怖さにもなったり、おっかなさとかそういう不安要素にもなったりするんですよね。だからこそ、彼が「このガンは治ります」と言うと治るんじゃないかという安心感もありますね。そういうピュアさがとても可愛らしくもあり、ドラマを引き立てている要素なのかなとは思います。

――この作品のアピールポイントの一つに、ショーンが自閉症であるとともに天才的記憶力を持つサヴァン症候群であるというところがフォーカスされていますが、吹替えで演じていてその点について感じていることはありますか?

お芝居としては、感情の浮き沈みというのがローのテンションの時もあるんですよね。自分が好きなものや、怒りたくても言語化がうまくできないという苛立たしさという時に結構、感情が爆発する傾向があるんです。そこだけ子供が持っているピュアさにちょっと近い感情解放の仕方というのがあるのかなという風に思っています。大人だったらというのはもしかしたらいい例えではないかもしれないのですが、例えば、社会の中で怒っていても、それを鎮めるというのが大人の中の世界だとすると、ショーン自体はまだピュアな分、全部ストレートに思いとか言葉とかを投げつけたりしているんです。そういう部分がサヴァン症候群の天才的な部分につながったらいいなとは思っていますね。

一番難しいのは「オッケー」

――今日もアフレコを拝見させていただきましたが、台本でショーンが喜ぶところのセリフもカタカナで「オオー」という感じで書いてあって、他の作品の台本とはちょっと違うなと思いました。

他の作品だと、「オオー」みたいに書かずに、アドリブの記号「(AD)」とかで書かれていることが多いと思うんですけど、ショーンの場合は「オオー」とか「オッケー」とか台本に書かれています。特に、この「オッケー」のセリフが難しかったですね。シーズン1からずっとショーンが言っているセリフですけど、この「オッケー」の中にどれだけ本当にオーケーだと思っている部分と、納得いかない部分と、あとさらに言えば、言い方が難しいんですけど、どこか天才的な要素というのを出したいなと思った時に、普通の人の反応ではないしゃべりというか、ある意味で人知を超えているような部分というのを出したかったんです。普通に「オッケー」と言うと、やっぱりナチュラル過ぎて一般人のように聴こえてしまうんですよね。そうではなくて、あくまでもピュアで天才的な要素というのをこの「オッケー」一つで出すにはどうしたらいいんだろうなと考えました。「オッケー」のセリフについて、よくディレクションで「今のちょっと普通過ぎちゃったかも」と言われたこともありました。『グッド・ドクター』のショーンを通して、求められているものは何かみたいな、すごいとは何かというのは結構考えたりしますね。コミュニケーション能力が苦手な分、どこかでその天才性的な部分というのを出してあげられたらいいなとは思いつつ、その中で一番難しいのが「オッケー」なんです。

――原音の“OK”と言っているのを聴きながら、そこまで考えているんですね。

あくまで和製英語の「オッケー」にならなきゃいけないので、英語風の“OK”だと違うんだろうなと思っています。

――過去のシーズンとシーズン6でも、その「オッケー」というのは聴きどころ、見どころですね(笑)。

そうですね。たびたび、「オッケー」と言うので、いろんな変化のある「オッケー」を聴いてもらえたら嬉しいです(笑)。言いよどみながらとか、いろいろあったりするんですよ。

『グッド・ドクター』の面白さや魅力

――改めて、吹替えをされていて感じる本作の面白さや魅力を教えてください。

『グッド・ドクター』の魅力は、単純に話がめちゃくちゃ面白いというところです。医療ドラマって、言葉が難しいというのがセリフ的には苦しいところではあるんですけど(笑)でも、人の生死が関わるというのが本当にドラマティックなんです。もちろん、いろんなジャンルのドラマでも生死が関わることはあるかもしれないですけど、本作では1話ごとに必ず2人ぐらい生死に関わる人が出てきたりするんです。だいたい2軸で物語が動く構成も好きですね。ショーン側の話しがメインの軸であって、他の指導医だったりレジデント側の話が必ず1軸動いていたりするんです。その2軸が交互に入り乱れて、飽きさせないような、そういうテンポの良さを感じます。それはもうシーズン1から感じていますね。こっちの部屋ではガン患者がいて、こっちのほうでは妊娠している方がいてとか、必ず2つのドラマが同時に動くんですよね。それが圧倒的に素敵だなと思います。

――その中に、各登場人物たちのプライベートの物語が織り交ぜられていますよね。

そうなんですよ。脚本がめちゃくちゃ上手で、本当に素晴らしい脚本だと思います。感動もしますし、それと同時にぞっとしたりもするんですけどね。さらに言えば、こういう作品だとショーン自体が天才として描かれているので、さっき言ったとおり、「治ります」と言ったら基本的には治るんですけど、ショーンは失敗もするんです。そこがまたリアルで面白いですね、絶対じゃない、神じゃない、やっぱり人なんだという。その失敗をちゃんと経験して、そして学んで成長していくショーンがまた素敵で、ショーンを見ながら自分も頑張ろうと思わせてくれる、そんな作品だと思います。

ハッピーエンドだけではない

――ハッピーエンドだけじゃないですよね。

シーズン5のラストに、病院で結婚式を挙げている時、ヴィラヌーヴァとリム先生が刺されるなんてこともありましたよね。本当に色々ある作品ですけど、嬉しかったのはショーンが結婚したということです。ショーンはいろんな方を好きになって、いろんな付き合いをしたんですけど、最終的にやっぱり選んだのがリアだったという。リアのイメージも、だいぶ変わりましたね。最初、リアはお隣さんでパンキーというかピーキーというか(笑)。ちょっと変わったクラブが大好きなポジティブな女の子みたいなイメージが強かったんですよ。昔は、ボーイフレンドがいっぱいいるイメージが強くて、ショーンと一緒に暮らしていた時も、リアがボーイフレンドを連れ込んでいましたね(笑)リアはおおらかな性格なんですけど、彼女と最終的に結婚もするんですよね。それに、ショーンとリアとの間に子供が生まれるはずだったのに流産するというのも、すごいストーリー展開だなと思いました。

――普通のドラマだったら、子供が生まれてハッピーになる展開が待っていると思いますよね。

そうですね。ショーンとリアの挙式も何度か失敗していますし。それで、成功したと思ったら、リム先生が刺されるという事件が起きたりとかもするわけで、必ずハッピーだけじゃ終わらせないのがドラマとしてすごいなって思いますね。

シーズン5までの思い出

――シーズン5までを振り返って、思い出に残っているシーンやエピソードがあれば教えてください。

やっぱり人の死というのは辛いもので、まず、メレンデス先生の死は本当にビックリしました(シーズン3第20話)。聖ボナベントゥラ病院の中で、エース級の存在であって、しかも天才のショーンが認める努力型の天才だったんです。その方が亡くなるなんて、本当に驚きました。普通なら、メレンデスの怪我が治るみたいな、なんだったらショーンが治すみたいな感覚だったんですけど、そのまま亡くなってしまったというのが印象に残っています。

そこからまた新キャラがどんどん入ってくるというのも面白かったですし、それとクレアですね。クレアがドクターとしてメキシコに残るというエピソード(シーズン4第20話)もビックリしたんですけど、シーズン5でクレアが帰ってきて(シーズン5第17話)、再会できたのは本当に嬉しかったです。100話も迎えるということで歴史がある分、いなくなってしまった昔のキャラクターが再登場するのは嬉しいですね。ジャレッドも序盤でまさかいなくなる(シーズン2第1話)とは思わなかったので、ビックリしました。アオキというキャラクターもいなくなりましたし、いろんなキャラクターがいて、そのキャラクターの出会いと別れというのは僕にとっても印象深いエピソードになっています

それと、やっぱりグラスマン先生の病気に関するエピソードの数々ですね。シーズン6でも実はそこに関連したエピソードがあるんですけど、シーズ1の終わりで脳腫瘍が見つかって、シーズン2以降も脳の問題で死ぬかもというエピソードがたびたびあって、本当に死んじゃうのかなと一瞬思っちゃいましたね。メレンデス先生が亡くなったのを含めて、医者は何とかしてあげられる力を持っているけども、なんともならない時もあるというのをそういうエピソードで感じているので、常にどっちに行くか分からないというドキドキ感があります。

――グラスマン先生が今回で本当に死んでしまうんじゃないかと、いつもハラハラして見ています。

いろいろなエピソードがありますけど、僕の中で最も衝撃的で苦しい話だったのが、『ベイツ・モーテル』の吹替えでもご一緒だった日野由利加さんがゲストで出てきた回(シーズン2第5話)ですね。由利加さんが吹替えているお母さんが病気で、脳のある部分を切断すると子供に対して愛情がなくなってしまうというエピソードなんです。お母さんが「愛情は絶対なくならない、だって母親だもの」という感じで手術して、手術の後に子供がお母さんを抱きしめると、お母さんが愛を感じないような表情をするんですよね。それがぞっとして、コワっ!て思ったんです。由利加さんの吹替えも含めて繊細なお芝居のシーンで、これは本当に愛情がなくなってしまったのか、それとも残っているのか、どっちのお芝居なんだろうというのがあって、すごく怖かったですね。

シーズン6の見どころ

――最新シーズンとなるシーズン6の見どころを教えてください。

まずはリム先生がどうなったかというところですね。シーズン5の最後に刺されてどうなったのかと。予告でも流れているんですけど、リム先生は生きています。だけど、リム先生はショーンに対してある感情があって、ショーンはショーンで自分は間違ってないということから、衝突が起こるんです。そのリム先生とショーンの確執みたいなものをどう対処するのか、どういう結末を迎えるのかというのも楽しんでもらいつつ、今回、僕の中ではジャレッドが戻ってくるというのが大きいです。

――ジャレッドは単なるゲストキャラクターではないですよね。

僕も最初は1話か2話でいなくなるゲストだと思ったんですけど、ショーンとジャレッドの関係性の中で、いろいろと乗り越えるエピソードがあって、ただのゲストじゃないんだなと思えました。ジャレッドも自信に満ち溢れたキャラクターになっていて、ジャレッドが戻ってきたことによっていろんなことが起きるんですけど、そこが面白いんです。あるキャラクターの恋路の中でちょっと三角関係みたいなことになるんですけど、ジャレッドってこのポジションなんだと思って、ちょっと驚きましたね(笑)

女性弁護士が主人公のスピンオフに繋がるエピソード

――シーズン6で言うと、話題になっているのが、強迫性障害の女性弁護士ジョニを主人公としたスピンオフとなる『Good Lawyer(原題)』のパイロットエピソード(シーズン6第16話)がありますね。

『Good Lawyer』の話しは、アメリカで「グッド」シリーズとして弁護士バージョンをやるんじゃないかというのを、シーズン5の後半ぐらいから聞いていました。そのお話では、ジョニがゲストキャラみたいな感じでショーンと絡みがあるんです。ショーンとジョニはお互いに天才だけど、自分にとっては弱点みたいなものを抱えた弁護士と医者がタッグを組むような話になっているのが面白かったです。

『ベイツ・モーテル』との比較、本作ならではの役作り

――先ほども日野さんのお話で『ベイツ・モーテル』のことが出てきましたが、『ベイツ・モーテル』からフレディ・ハイモアの吹替えをされていて、殺人鬼ノーマン・ベイツの少年時代から、そして本作でサヴァン症候群のドクターと難しい役どころを担当されていますが、岡本さんの役作りについて『ベイツ・モーテル』と比較しての違いや、本作ならではの役作りというのはありますか?

『ベイツ・モーテル』の時は、ノーマンにお母さんのノーマが乗り移ったりとか、多重人格者として色々やっていたので、ノーマンっていうキャラクターを作った後に、そのノーマンをどれだけ隠すかみたいな役作りをしていました。隠して違う人格を出させるというような、激高ノーマンみたいなのが僕の中にいるんですよ(笑)普通の可愛らしい純粋なノーマンと悪ノーマンみたいなのが僕の中にいて、悪とも言いづらいんですけど、手段を選ばない悪ノーマンよりはるか頂点にいる母親のノーマが乗り移るという3キャラが主にいて、その3キャラが入り乱れた時にどうするかみたいな難しさがありました。その全部のキャラクターを区切って、最終的にはグラデーションで1個のキャラクターにしていくみたいなイメージが、殺人鬼ノーマンを演じる難しさでしたね。

ショーンを見て「明日から頑張ろう」と思ってほしい

――ノーマンと比較して、ショーンはどうですか?
『グッド・ドクター』のショーン・マーフィーの難しさは、成長もそうなんですけど、サヴァン症候群の天才肌と言われる、先ほど言った通り、ピュアな部分にどう天才的な要素を盛り込むかというのがやっぱり難しかったですね。最初、サヴァン症候群感というのはどうしたら一番いい塩梅になるのかというのが本当に難しくて、どこかしらリアリティがありつつ、どこかしら聴いている人に違和感があるようにしなきゃいけないんですけど、変にはしたくなかったんです。語弊があるかもしれないですが、変わっていることはいいんですけど、僕の中でマイナスのイメージに捉えられたくなかったんですよね。あくまでも個性の一つとして捉えてほしくて、プラスの方向でポジティブに捉えてほしかったんです。サヴァン症候群というのはすごいねとか。その中で人とコミュニケーションが苦手でも、挑んでいって、いろんな人とコミュニケーションを取るようになって、取れるようにもなったとか。取れるようになったけども、独特の空気感の中で自分の中でのコミュニケーション方法を見つけるとか、そういった苦悩も含めて、全部をポジティブに捉えてもらえたらなという気持ちで演じていましたね。

大きな違いで言うと、ガッツリとマイナス方面に演じているのがノーマンで、プラス方面に演じているのがショーンという、ざっくりとしたそういうイメージがありますね。むしろ、僕の中では嫌われたいのがノーマンなんです(笑)ノーマンを見て、嫌ってほしい、気持ち悪いと思ってほしいとか、イライラしてほしいと思っています。それとは真逆で、ショーンを見て、明日から頑張ろうとか、こういうピュアな気持ちでいようとか、負けないように頑張ろうとか、努力しようとか思ってほしいんです。


――それでは、シーズン1の第1話の時は本当に大変でしたか?

第1話は本当に大変でしたね。吹替えの経験がそこまでなかったというのもあって、ナチュラルにやろうとは思っていたんですけど、ナチュラルにやろうとすればするほど、違和感もあるんです。だけど、あの時にしか出せない部分もあったと思っています。ショーンも、あの頃のフレディ・ハイモアさん自体も若かったので、その若さみたいなものが出ていたのかなと思っています。シーズン2、3となると、ショーンもレジデントとして頑張って成長していくので、落ち着きがだんだん出てくるんですけど、指導医になってからは言葉をしっかり立たせるようにしていますね。後輩たちにもしっかりどの部分を教えたいかというのを明確にするようにはしていて、シーズン1はそれよりもコミュニケーションが苦手だからこそ、おそらく言葉とかは自分の中で完結しているけど、相手にはもしかして降りかかってないのかなとか思いながらやっていたんです。今こういう状態だから、酸素の値がこうだからこうみたいな、次こうなるとか、体の中で今はこういうことが起きているとか、そういったいろんな情報を、自分の中でペラペラっとしゃべって、それをみんなが拾うみたいな感じでした。ですけど、シーズン3以降、特にシーズン6に関してはしっかりと患者は今こういう状況だから、こうしてほしいとまで言えるように成長したのかなと思います。

アフレコの現場で印象に残っていること

――シーズン1から振り返って、演出の高橋剛さんによるアフレコの演出で印象に残っていることがあれば教えてください。

剛さんは『ベイツ・モーテル』の頃からご一緒させていただいているんですけど、いつも指示が的確で、その指示が僕にとってもめちゃくちゃ分かりやすいんです。

――今日のアフレコでも、岩崎さんに「ここの言葉を立ててください」という演出がありましたね。

そうですね。会話のシーンで、この言葉を聴かれているから、その言葉を立ててほしいという指示もすごく明確だなと思いますね。ショーンが作中でちゃんと指示しているのに、僕が不明瞭だと指示できなくなっちゃうと思うので、ちゃんと言葉を立てるようにというのは意識しています。なので、剛さんには全幅の信頼を寄せながら、吹替えをしています。でも、逆に言うと、僕らのお芝居を容認してくださるというか、基本的に自分が面白いと思ったことをちょっとやってみてと泳がしてくれる方なんです。だから、そんな方が指摘するということは相当なんだなっていうのがありますね(笑)剛さんからの演出はありがたくて、どうそれに答えられるかっていうのは常日頃から、この『グッド・ドクター』の収録でも毎回、気にしているところです。

――アフレコの現場で、声優の皆さんと印象に残っていることはありますか?

今日の収録でご一緒だった方だと、岩崎さんは本当に面白い方です(笑)『スター・ウォーズ』のC-3POの吹替えや、アニメだと『TIGER & BUNNY』という作品で共演させていただいていて、本当に変わったキャラクターの具現化がうまい方なんです。どんなに変人と言われるようなキャラクターでもリアルにやれる方で、そんな方がグラスマン先生という重々しいキャラクターを演じてくださっているんですよね。だから、シーズン1のグラスマン先生を吹替えている岩崎さんの声を聴いた時はビックリしましたね。僕の中の岩崎さんのイメージは、トリッキーなキャラクターや面白いキャラクターが多かったんですけど、グラスマン先生は純粋にすごくかっこいいなと。グラスマン先生は落ち着いたキャラクターで、ドラマでもショーンとの絡みがある時は必ず最終的には涙が出そうになるシーンだらけなんですよね。やっぱりショーンにとって、グラスマン先生はお父さん代わりなんです。医者としても有能な先生というのも含めて人生の師というか、父でもあり、師匠でもあるという。

そんな岩崎さんが、シーズン1ではガッツリやっていて、シーズン6でもガッツリかっこよく演じてくださっているんですけど、ひとたびマイクから離れるとずっとボケ倒しているんですよ(笑)。『Good Lawyer』の声優の方々が来た時に、岩崎さんの横に僕が座った瞬間、岩崎さんが「あれ、名前なんて言うんだっけ?」と言って、僕が「岡本です」と答えるやり取りを100回ぐらいやっているんです、飲み会を含めて(笑)それを真に受けた『Good Lawyer』のメンバーが「え!? 今までなんて呼ばれていたの?」と驚いて、僕が「いや、岡本って呼ばれてます」と答えていました(笑)ある時には、「岡本って、名前なんて言うんだっけ?」とまで言われたこともあって、「僕、それです。答え出てます」というやり取りをしたこともありましたね(笑)

コロナ禍について「リアルとリンクしている」

――コロナのエピソード(シーズン4第1~2話)も『グッド・ドクター』にありましたが、コロナ禍のアフレコはどんな感じでしたか?
コロナ禍の時は、収録ブースの中をパーティションで区切って、数人と一緒に収録していました。だから、1人だけで演技するということはほぼなかったですね。コロナではないですけど、シーズン1の時にスケジュールの都合で、第2話をみんなで収録した後に、1人で第1話のアフレコをしたぐらいです。コロナ禍から、基本的には絡みがあるキャラクターの声優3人か4人で収録しているんですけど、コロナ禍の前はいろんな方々とお会いできていて、それこそゲストキャラを吹替える方ともお会いできたんですよ。なので、コロナ禍になってから、それがなかなかできないというのは辛いところですね。

――シーズン6のアフレコではだんだんと緩和されてきた感じですか?
緩和はされてきていますね。『グッド・ドクター』の吹替えをしていて、一番コロナを実感したのは、やっぱりコロナのエピソードでした。明確にコロナとは言ってないですけど、コロナみたいな風邪が流行って、原因不明の死人がいっぱい出るというエピソードでしたね。その次のエピソード(シーズン4第3話)の冒頭で、フレディ・ハイモアがドラマの中ではコロナが収束し、マスクのいらないその後を描いていると説明するんですよね。だから、コロナとしっかり向き合った作品でもあるのかなと思いましたし、リアルとリンクして、実感しながら吹替えをしていました。

「名声優の条件」とは?

――最後の質問になりますが、作品タイトルの「名医の条件」にちなんで、岡本さんが考える「名声優の条件」とは?

すごく難しいんですけど、音という観点としてですが、もちろん俳優も声優もやっていることは芝居なんですよ。声優に限らず演技、芝居をしている。これが両方とも役者ではあるものの、じゃあ声優というところにフォーカスを当てると、音だけで感動させられるのが声優なのかなと思いますね。

『グッド・ドクター』シーズン6 放送・配信情報

WOWOWプライム、WOWOWオンデマンドにて10月25日(水)スタート(※第1話無料放送)

【二か国語版】毎週水曜日23:00~
【字幕版】毎週木曜日22:00~

(取材・文/豹坂@櫻井宏充)

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Photo:グッド・ドクター 名医の条件』シーズン6©2023 Sony Pictures Television Inc. and Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved. THE GOOD DOCTOR – ABC’s “The Good Doctor” stars Freddie Highmore as Dr. Shaun Murphy. (ABC/Art Streiber)