劣悪な職場環境を訴えていたマーベルのVFXスタッフが労働組合加入を求める!

第75回プライムタイム・エミー賞授賞式の延期の原因にもなっているハリウッドのストライキ。そんな中、マーベル・スタジオの視覚効果を担うVFXチームが、全国労働関係委員会に組合結成選挙を申請し、50人以上のマーベル・クルーのほとんどが映画産業の労働組合、IATSEが代理を務めるという内容の認可書に署名した。米Deadlineなど複数のメディアが報じている。

これまで与えられてこなかった権利と保護を求めて

IATSEのマシュー・ローブ会長は、「業界の古い壁を打ち破り、私たち全員がこの闘いにともに参加していることを証明するという、前例のない連帯の波を目の当たりにしています。これまでのことと無関係に起こっていることではありません。どこのエンターテインメント業界の労働者も、お互いの権利を守るために立ち上がっています。この重要な一歩を踏み出し、彼らの声を結集した労働者たちを私は支援します」と述べた。同組合によると、VFXのプロフェッショナルたちが映画産業で組合に加入している仲間と同じ権利と保護を要求するために団結したのは今回が初めてだという。

IATSEとは、International Alliance of Theatrical Stage Employeesのことで1893年にニューヨークで設立。アメリカとカナダで、舞台、映画、テレビ、展示会、コンサートなどに従事する人々の労働組合で、およそ17万人の組合員で構成されている。IATSE のVFXオーガナイザーであるマーク・パッチは、「視覚効果のプロフェッショナルたちはほぼ半世紀にわたり、ハリウッド映画産業が始まって以来、ほかの同僚やクルーが頼りにしてきた保護や福利厚生を否定されてきました。これは、VFXに従事する人々が仕事に対する敬意を求める声を結集するための歴史的な第一歩です」と話している。

映画やテレビにおけるプロダクション・デザイナー/アート・ディレクター、カメラ・オペレーター、ヘアメイク・アーティスト、衣装/ワードローブ、音響、編集、脚本、グリップ、照明、小道具、画家などの職種は、長い間IATSEによって代表されてきたが、VFXのスタッフはその対象に入っていなかった。VFXコーディネーターのベラ・ハフマンは、自分たちが直面する問題点を以下のように説明する。「(コンピュータやシステムにやらせてからプロジェクトが完了するまでの時間である)ターンアラウンドタイムは私たちVFXスタッフの報酬時間には含まれず、法定労働時間もなく、平等な報酬も私たちには適応外です。視覚効果の部門は、あまりにも長い間苦しめられてきたすべての人と、搾取されないことを知る必要のあるすべての新人のために、持続可能で安全な部門にならなければなりません」

マーベルのVFXといえば、同スタジオがここ最近発表したいくつかの作品、『シー・ハルク:ザ・アトーニー』『ソー:ラブ&サンダー』『アントマン&ワスプ:クアントマニア』『シークレット・インベージョン』などのVFXの出来が良くないと批判を受けたことも。その裏では、次々とマーベル作品が作られることから、VFXのスタッフがポストプロダクションの厳しいスケジュールや人員不足について何度も不満を漏らす様子が報じられていた。

IATSEは、WGA(全米脚本家組合)とSAG-AFTRA(全米映画俳優組合)によるストライキが続く中、組合選挙の申請は「映画・テレビ業界において極めて重要な時期に行われた」と指摘。また、現在進行中のストライキにより悪影響を受けた組合員を支援するためにさらに200万ドル(約2億9000万円)を割り当てており、これで6月以降の総額は400万ドル(約5億8000万円)に上る。この追加資金は、IATSEの執行委員会に全会一致で承認された。前述のローブ会長は、「ストライキによる組合員への影響は多大です。このような困難な時期ではありますが、組合員はこのような闘いが起こらざるを得なかったことを理解しており、俳優と脚本家に対する組合員の支援は、私たち自身が交渉の席に戻った時にも同じ支援を受けられることを保証するものです」と話している。WGAは今年5月2日から、SAG-AFTRAは7月14日からストライキを続けている。(海外ドラマNAVI)

参考元:米Deadline