現在ハリウッドで起きているストライキでは全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)の組合員である俳優たちもピケを張っているが、その中にいわゆる“トップスター”と言われる人たちがいないのはなぜか、その理由について米Varietyが伝えている。
参加することは組合にも本人にも得策ではない?
7月中旬、全米脚本家組合(WGA)に続いてストライキに入った全米映画俳優組合。6月下旬にメリル・ストリープやジェニファー・ローレンス、ラミ・マレックといった俳優たちがストライキの準備はできているとして闘う姿勢を表明していたが、スタジオの前でプラカードを掲げて抗議する人々の中に彼らの姿は見られない。
レオナルド・ディカプリオも自身のInstagramのストーリーズで組合との連帯を示して立ち上がるという主旨の投稿をしていたが実際にピケで目撃されたことはないし、7月半ばにデモ参加者の一人は「ベン・アフレックは一体どこにいる?」と書かれたプラカードを持ってロサンゼルスにあるNetflix本社前に立ったけれど、ベンがピケの最前線に立っているところを見た人は今のところ誰もいない。
もちろんレイチェル・マクアダムズやルピタ・ニョンゴ、マーク・ラファロというアカデミー賞の候補になったり受賞したりした面々、『アボット エレメンタリー』のキンタ・ブランソン、『ベター・コール・ソウル』のボブ・オデンカークといったドラマスターなど、支持を表明している人気俳優もいる。しかしデンゼル・ワシントンやサンドラ・ブロック、ジョージ・クルーニー、ジュリア・ロバーツなど、一般人がビッグスターと聞いて思い浮かべる俳優たちは、なぜピケに参加しないのだろうか。
とある組合員は、「今の段階で最も成功し、裕福で、目立つ人たちが(ピケの)スペースを占拠するのは必ずしも私たちにとって有益ではない」と語る。「私たちはすでに問題を抱えている。“SAG-AFTRAは単なる裕福な俳優の集まりだ”と考えられていることだ。こうしたスターは賃金の水準アップのために働きかけることはない。なぜなら、より良い契約による保護など必要ないから」と語る。
そして匿名で取材に応じたトップタレントのアドバイザーによると、数人のクライアントから、どのピケに参加するべきか、メディアから取材される可能性を考慮してヘアメイクを予約しておくべきかを尋ねられたという。そうした質問に対し、このアドバイザーは今回のストライキが「非常に深刻な問題であり、レッドカーペットの機会ではない」と警告したのだとか。
また、近年スターが自ら制作会社を立ち上げて作品作りを行うことも増えてきたが、こうした業界事情も理由の一つ。アメリカで先日封切られると記録的な大ヒットを飛ばしている『バービー』を手掛けたマーゴット・ロビーのLuckyChapや、リース・ウィザースプーンのHello Sunshine、ライアン・レイノルズのMaximum Effort…こうした会社を率いるスターたちは俳優とスタジオのどちら側につくかという立場を明確にすることに消極的なのだろうともVarietyは指摘する。
そのほかには、ソーシャルメディアで声をあげようにも、どのような反応がありそうかを考えると慎重にならざるを得ず、戦略担当とのやり取りに時間を要するという実情もあるそう。
こうした事情もあり、スターたちが本当にストライキを支援したいのであれば、表立ったものではない形が望ましいと、業界を知る関係者はVarietyに話す。「Aリストの俳優たちが実際に支援できるのは、救援基金への寄付と、舞台裏でスタジオの責任者にロビー活動を行うこと」
実際にこうした方法で支持をしているのがドウェイン・ジョンソンだ。彼は、ストライキで働けなくなったため収入面での困難が生じたことを証明できる人々に資金援助を提供するSAG-AFTRA財団に7桁(数百万ドル単位)の寄付を行った。同様に、ジェイミー・リー・カーティスも夫との連盟で2万5000ドル(約350万円)を同財団に寄付している。
ストライキへの支持を表明する方法は必ずしも一つではない。ピケに参加することができないのであれば、異なる方法で自身の影響力や財力を最大限に活かした支援をすることが求められているのかもしれない。(海外ドラマNAVI)
参考元:米Variety
Photo:レオナルド・ディカプリオ ©babiradpicture/F.Altmann