クライムドラマの金字塔、『ブレイキング・バッド』で、一般的に最も評価が低いエピソードと言われているのはシーズン3第10話「かなわぬ最期」だ。しかし米Screen Rantがその説に異論を唱え、他のエピソードを「シリーズ史上最悪のエピソード」として挙げている。
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『ブレイキング・バッド』キャストたちは今?!
ハリウッドにおけるTVドラマの評価を急上昇させた作品として間 …
物語全体との結び付きの弱さが理由
『ブレイキング・バッド』はテレビ史を変えた社会現象として評価されており、「駄作エピソードが存在しない作品」として語られることも多い。しかしファンの間では、あえて“最も評価が低い回”を巡る議論が長年続いている。特にシーズン3第10話「かなわぬ最期」は、しばしばシリーズ最低評価の回として挙げられてきた。ただし近年では、その評価は再検討されつつあり、むしろ本当に評価が分かれる回はシーズン4第3話「マリーの苦しみ」ではないかと指摘されている。
「かなわぬ最期」の評価が低い理由は明確だ。この回は、主人公ウォルターと相棒ジェシーがメス・ラボに侵入した一匹のハエを追い続けるという極めて限定的なストーリーで構成されているからだ。派手な展開やドラッグ抗争はほぼ描かれず、物語は密室劇のような構成になっている。そのため初見では「物語が停滞している」「本筋と関係が薄い」と感じる視聴者が多く、長年“退屈な回”というレッテルを貼られてきた。
しかし最近では考察が進むにつれ、この回はむしろ、心理描写が優れたエピソードとして評価が高まっている。ウォルターが抱える罪悪感や自己崩壊が、ハエという象徴的存在を通して描かれているからだ。表面的には小さな出来事であっても、ウォルターとジェシーの関係性を深く掘り下げ、後の悲劇を予感させる重要な伏線として機能している点は見逃せない。緊張感を派手な事件ではなく、キャラクターの内面から生み出している点は、脚本と演出の巧みさを示すものだと言える。
一方、「マリーの苦しみ」が問題視される理由は、物語全体との結び付きの弱さにある。この回の直前では麻薬王ガスの脅威が高まり、ウォルターとマイクの対立が激化するなど、シリーズ屈指の緊張感ある展開が描かれた。しかし「マリーの苦しみ」では、その流れが一度途切れ、ウォルターとスカイラーが洗車場購入を巡って交渉する展開が中心となる。重要な転換点になり得る設定ではあるものの、演出は比較的穏やかで、ドラマ的な高揚感に欠ける構成となっている。
さらに、この回ではマリーが空き家の見学中に窃盗を繰り返すサブプロットが描かれるが、この要素が物語の主軸と十分に結び付いていない点も批判されやすい。マリーが虚偽の人物像を演じ続ける展開は、キャラクターの心理を示す意図はあるものの、シリーズ全体の緊張感から逸脱している印象を与える。しかも、このサブストーリーは大きな影響を残さないまま比較的あっさり解決されるため、物語上の重要性が希薄に感じられる。
IMDbで両エピソードはどちらも8点前後の評価を受けており、数字上は大きな差がない。しかし物語構造を分析すると、両者の役割には明確な違いがある。「かなわぬ最期」は主軸の物語を直接進めない代わりに、キャラクターの心理を深めることでシリーズ全体の厚みを増している。対する「マリーの苦しみ」は物語のテンポを緩める役割を担っているものの、テーマ的な深みや長期的な影響がやや弱い。そのため、シリーズの完成度という観点では、「マリーの苦しみ」は相対的に印象が薄くなりやすい。
もっとも、『ブレイキング・バッド』は全体として極めて完成度が高く、「失敗作」と断言できる回は存在しない。評価の差は微々たるもので、各エピソードが物語全体に何らかの役割を果たしている点は変わらない。むしろ、このような議論が長年続いていること自体が、本作がいかに精密に構築されたドラマであるかを示していると言えるだろう。
『ブレイキング・バッド』全シーズンは、NetflixとHuluで配信中。(海外ドラマNAVI)






