『スター・トレック:ピカード』エンタープライズはCGではない!3ヶ月かけて一から制作していた!

『新スター・トレック』のジャン=リュック・ピカード艦長のその後を描くスピンオフドラマ『スター・トレック:ピカード』。先月ついにシリーズファイナルを迎えた本作だが、シリーズ終盤に登場したあのエンタープライズ号のブリッジ内部が一から制作されていたことが分かった。米Varietyが報じている。

予算、時間、資料すべてが足りなくても

本作のスタッフは、最終章であるシーズン3をさらに盛り上げるため、あらゆる手段を講じてきた。その結果、ついにエンタープライズ号、つまり『新スター・トレック』でおなじみのエンタープライズD型艦が登場した。シーズン3の第9話「声」の最後、再会したクルーがあのUSSエンタープライズDに集合した。本作のエグゼクティブ・プロデューサーであるテリー・マタラスは、この舞台を制作するまでの過程を次のように語っている。

「誰もが、これを作るのは悪夢だと言っていました。予算がほとんどありませんでしたし、スケジュールも厳しかったので撮影を開始する直前までいろんな部品を接着していたんです。でも、オリジナル版の同窓会をする上では、主要キャラクターの一つであるエンタープライズ号が欠かせなかったのです」

1987年から1994年まで7シーズン放映されたテレビシリーズのオリジナル版『新スター・トレック』でエンタープライズDブリッジの存在感が際立っていたにもかかわらず、今回のプロジェクトの指揮をとったプロダクションデザイナーのデイヴ・ブラスとアートディレクターのリズ・クロツコフスキにはあのブリッジの制作ガイドラインがほとんど存在しなかったという。「『スター・トレック』シリーズのアイテムをすべて収納している倉庫がどこかにあるという噂を聞きますが、実はほとんどのアイテムは残っていないのです」とブラス。

そのため、スタッフはオリジナルのエンタープライズD型艦が映った資料を集め、艦内の細部まで捉えた写真の数々を制作現場に貼ることで情報共有。そのように工夫することで、思い出のエンタープライズをよみがえらせることに成功した。

さらに、『スター・トレック』の伝説的な制作チームのマイク・オクダとデニース・オクダがコンサルタントとして参加。「『新スター・トレック』のエンタープライズは、私がグラフィックデザインを担当した最初のエンタープライズ号でした。『スター・トレック』シリーズの生みの親であるジーン・ロッデンベリーと一緒に、あのブリッジに命を吹き込むことができたんです。(それをよみがえらせる上で)私が最初にしたのは、倉庫にあるたくさんの箱の中身を確認することでした。原画や美術も一部ありましたが、その大部分は失われていたのです。そのため、ほとんどをゼロから再構築しなければならないことに気づいたのです」

実際にブリッジを完成させるまでには、およそ50人体制で3ヵ月かかったという。グリーンスクリーンやVFXで再現するのではなく、物理的に作り上げたブリッジの大きさは、オリジナルのセットとまったく同じ、幅50フィート(約15メートル)、長さ100フィート(約30メートル)のサイズだった。シーズン2と3の撮影が間を置かずに進められたため、このブリッジの制作は他のセットの制作と合わせて行われた。

「タイタンの内装(ブリッジ、転送室、クルー室、廊下、医務室など)、そして敵艦シュライク、デイストロームステーション、ボーグもすべて同時にやっていました。つまり全部が同時進行だったのです。目標はオリジナルのものをできる限り忠実に再現することでした。ただしディスプレイに関しては、コンピュータ・ディスプレイ技術の進歩を利用して、多少アップグレードを施しました。ディスプレイがアップになるシーンは、昔であればポストプロダクションでディスプレイに映るアニメーションを挿入しなければならなかったでしょう。ですが今は簡単にアニメーションが作れますし、それをセットで再生できるので、演じるキャストがリアルタイムでそのディスプレイを見にしながら演じることが可能なのです」

また、本編でパトリック・スチュワート演じるピカードも言及していた懐かしのカーペットは、「何十年も在庫切れになっている柄なので、入手が非常に困難でした」とブラスは付け加えた。そしてマタラスは、ブリッジ全体の物理的な構造だけでなく照明についても言及。「1990年代当時の照明を再現するのが大変でした。現代は映画的なスタイルで撮影しますし、昔とは違うカメラを使用しています。そのため、撮影監督のジョン・ジョフィンと一緒に、古いスタイルと新しいスタイルのハイブリッドとなるスタイルを確立しなければならなかったのですが、本当に素晴らしい仕上がりになりました。このエンタープライズでの撮影には2日間しかありませんでした。そこで、みんなをエンタープライズ号に乗せて5分足らずノスタルジーに浸ったら、すぐ撮影に進むしかなかったのです。でも彼らにとっては、あのブリッジでそれぞれの役に戻って演じるのはとても自然なことでした。あの時は、まるで(昔の)パラマウント社の第8スタジオに戻ったような気分でした」

スタッフが情熱をかけてよみがえらせたエンタープライズ号は、その後どうなったのだろう? 「ありがたいことに、今回制作したエンタープライズ号のセットを保存したいという声が多かったので、『スター・トレック』シリーズのアーカイブ置き場に保存されています」とブラスは明かす。オリジナルと異なり大事に保存されているならば、またいつか再びファンの前にお目見えするかもしれない。

『スター・トレック:ピカード』全3シーズンはAmazon Prime Video(アマゾンプライムビデオ)にて配信中。(海外ドラマNAVI)

参考元:米Variety

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