【世界本の日】『クリミナル・マインド』『スター・ウォーズ』『名探偵ポワロ』スターも…作家の顔も持つ俳優12人

本日4月23日は「世界本の日」。スペインの伝統的な本の記念日「サン・ジョルディの日」や、劇作家ウイリアム・シェイクスピアの命日が由来とされ、1995年のユネスコ総会にて制定された。本や作家に敬意を示す日であり、日本では4月23日から5月12日までの約3週間が「子ども読書週間」と定められている。そんな記念日に合わせて、俳優のほかに作家としての顔も持つ才人たち(日本語版が刊行されている人)をご紹介しよう。

マシュー・グレイ・ギュブラー(絵本)

『クリミナル・マインド』のドクター・リード役で知られるマシュー・グレイ・ギュブラーは、リードと同じく才能にあふれており、俳優のほか、モデル、映画監督、画家などとしても活動している。そんな彼は2019年に絵本「バナナのかわをのっけたら ランプル・バターカップのおはなし」を出版。マシューは作・絵はもちろん、日本語版題字も自ら手掛けている。緑色の肌で髪の毛は3本、歯は5本で全部ガタガタの主人公、ランプル・バターカップが架空の友達と一緒に冒険する物語。

マシューがこの絵本を書いたのは「はみ出し者に居場所を見つけてあげたい」気持ちがインスピレーションとなっており、絵本ではあるものの、対象は子どもだけでなく全世代に向けたものだという。なお、同作に登場するキャラクターは、リードよりもマシュー自身に近いとも明かしている。この初の絵本は発売から数週間でニューヨーク・タイムズ紙のベストセラー入りを果たした。そんなマシューは先日、新しい本を出版することを発表しており、創作活動は順調のようだ。

クリス・コルファー(児童文学)

『Glee/グリー』でカートを演じたクリス・コルファーは、30代前半にして作家として大きな成功を収めている。というのも、2012年から発表してきた児童文学「ザ・ランド・オブ・ストーリーズ」シリーズが、前日譚を含めて2021年までに9冊刊行されており、日本語版も続々と出版。シリーズ1作目がクリスの監督・脚本で映画化されるという話も報じられており、第2のJ・K・ローリングになるかもしれない。

クリスは幼い頃に母親におとぎ話を聞かされていろいろ質問したことから、自分でおとぎ話を書くことを勧められ、「ザ・ランド・オブ・ストーリーズ」の元になる話を綴り始めた。そして『Glee』にまだ出演していた2011年、20代になったばかりで出版会社と契約。演技と並行しながら、次々と作品を発表していった。

「ザ・ランド・オブ・ストーリーズ」の主人公は双子のアレックスとコナー。二人は12歳の誕生日に祖母からもらった絵本「ザ・ランド・オブ・ストーリーズ」の中に吸い込まれてしまう。そこはおとぎ話のいわゆる「めでたし、めでたし」のその後の世界だった。双子は元の世界に戻るため、「願いをかなえる呪文」を探す冒険に出る――。

スティーヴ・マーティン(小説)

ベテラン俳優のスティーヴ・マーティンは、作家としてもかなり長いキャリアを誇る。短編とエッセイをまとめた最初の本を出したのは1970年代後半。その後、児童文学やノンフィクション、戯曲も執筆しているが、彼の作品で特に有名なのは2000年に出版した最初の小説「ショップガール」だろう。

ロスでデパートの店員(ショップガール)として働きながら中年男性の愛人として暮らしている28歳のミラベルの姿を通して、今のアメリカの女性を描いたこの作品は高い評価を受け、15週にわたってニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーリスト入り。2005年にはスティーヴが脚色・製作・出演を兼ねる形で映画化されている。

キャリー・フィッシャー(小説)

『スター・ウォーズ』シリーズのレイア役で知られるキャリー・フィッシャーも、60年の生涯の中でそのおよそ半分の期間、作家としての顔も持っていた。最初の本は1987年の小説「崖っぷちからのはがき」で、一時麻薬中毒になっていたキャリー自身と母である女優デビー・レイノルズの関係を赤裸々に綴ったこの小説は1990年に映画『ハリウッドにくちづけ』として生まれ変わった。映画で娘役を演じたのはキャリーではなくメリル・ストリープ。キャリーは出演せずに脚色のみを担当した。

キャリーはその後、「ピンクにお手あげ」などの小説、ノンフィクション、戯曲を発表。また、ハリウッドの脚色家としても活躍し、『天使にラブ・ソングを…』や『ウェディング・シンガー』を担当していた。

デヴィッド・ドゥカヴニー(小説)

『X-ファイル』のモルダー役でおなじみのデヴィッド・ドゥカヴニーは、俳優になる前にプリンストン大学とイェール大学で英文学を専攻したこともあってか、『カリフォルニケーション』で演じた役と同じように作家としての顔も持つ。そんなデヴィッド本人の作家活動は2010年代からスタート。

農場で暮らす雌牛がやがて訪れる自分の運命を知り、豚・七面鳥とともに理想郷を目指して旅に出るという社会風刺と皮肉がたっぷりの「ホーリー・カウ」、疎遠になっていた父が末期がんと知った小説家の息子が、父親快復のために大芝居を打つ「くそったれバッキー・デント」など、作品ごとにかなり作風が異なる。

イーサン・ホーク(小説)

10代の頃から俳優として活動してきたイーサン・ホークは、20代後半に作家デビュー。自伝的小説となった処女作「痛いほどきみが好きなのに」は、ニューヨークに暮らす俳優の卵と、ミュージシャンを目指す女性が出会い、愛し合い、傷つけ合うという恋愛小説。イーサンが監督・脚色・出演も兼ねる形で映画化された。

2015年に発表した「騎士の掟」は、15世紀に英国の騎士だったホーク家の祖先が記した手紙を元にした短編集。「騎士の掟」を通して孤高、謙虚、正義といった美徳を教える作品で、「なかなか話題にしにくい道徳的なことを子どもたちと話すためのよいツールになっている」とイーサンは説明している。

イーサンの創作意欲はとどまるところを知らないようで、グレッグ・ルースと共著で犯罪小説を執筆したり、主演作『ビフォア・サンセット』と『ビフォア・ミッドナイト』の脚本に関わってアカデミー賞候補になったりもしている。

レナ・ダナム(エッセイ)

『GIRLS/ガールズ』で企画・監督・製作・脚本・主演と一人五役をこなしていたレナ・ダナム。大学に通っていた頃から短編映画を制作するなどストーリーテラーだったレナは、『GIRLS』がヒットして間もなく出版社と契約し、2014年にエッセイ「ありがちな女じゃない」を発表。

登場人物が怠け者だったりカッコ悪かったりと、ドラマチックではなくリアルさを追求した『GIRLS』が好きな人なら、レナが自分をさらけ出しているこのエッセイも気に入るはずだ。

読書家のレナは、Instagramで自分の本棚にある本を載せたり、オススメの本を紹介したりもしている。

キャメロン・ディアス(美容本)

元モデルで、21歳でジム・キャリー主演のコメディ映画『マスク』で女優デビューして以来、ハリウッドにおいてキュートで強いヒロインとして活躍したキャメロン・ディアス。近年はオーガニック食品をリリースしたり、美や健康について語る本を出版したりしている。

そんな美容本のうち2013年に出版された「ザ・ボディ・ブック 食べること、運動すること、生きることを楽しむ最高のレッスン」は、キャメロンがナチュラルな美しさの秘密を自ら解説。単なるダイエット本ではなく、心身ともに美しく、健康でいられるためのガイドブックとして高い評価を受けてベストセラーになった。

マイケル・J・フォックス(自伝)

俳優が出した本として最も多いのは自伝だが、その中でも特に有名な一冊はベストセラーとなったマイケル・J・フォックスの「ラッキーマン」だろう。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズで知られるマイケルが2002年に発表したこの自叙伝は、30歳の若さでパーキンソン病に侵された彼の人生、仕事、家族、難病との闘いについて、ウィットとユーモアを交えて綴られている。

生まれて間もない頃からの記憶があり、ハリウッドで若くして成功を収めたマイケルが紡ぐ文章は、感動的でありながらもペーソスとユーモアにあふれている。その文才の高さから、以降も「いつも上を向いて」「マイケル・J・フォックスの贈る言葉――未来へ踏みだす君に、伝えたいこと」などを発表。

デヴィッド・スーシェ(自伝)

デヴィッド・スーシェ

最近出版された自叙伝では、『名探偵ポワロ』のデヴィッド・スーシェによる「ポワロと私:デビッド・スーシェ自伝」がオススメ。“ミステリーの女王”アガサ・クリスティーが生んだ有名な探偵、エルキュール・ポワロを四半世紀にわたって演じ続けたデヴィッドが、その役との話をメインに、自身の半生について語っている。

完璧なポワロ俳優と言われるデヴィッドだが、『名探偵ポワロ』以前のポワロは、大きな口髭を生やした神経質な小男という風に滑稽に描かれることが多かった。そんな私立探偵をクリスティーが本来描いていた姿として完璧に表現すべく、「ポワロの守護者」を自負する彼がいかに努力したか――監督や衣装係と戦ったり、役作りのために猛暑の撮影でも分厚いファットスーツを着たり、ポワロの言動の一つひとつに心を砕いたり――が、具体的なエピソードを交えて本人の口から語られる。ポワロファンならぜひ読んでおきたい。

タン・フランス(自伝)

人気リアリティ番組『クィア・アイ』で依頼人の人生を変えるべくサポートするセンス抜群のゲイ5人組、“ファブ5”の一人でファッション担当のタン・フランス。パキスタン系移民3世としてイギリス、サウスヨークシャー州で生まれたタンは、西洋のテレビでゲイであることをカミングアウトした最初のイスラム教徒だ。

そんな彼が2019年に出版した自伝「僕は僕のままで」は、イスラム教徒のゲイとしてイギリスの片田舎や世界同時多発テロ後のアメリカで様々な差別を経験した彼が、自分らしく生きる方法について綴られている。軽妙なブリティッシュジョークを交えた愛すべきエピソード満載のこの一冊は、『クィア・アイ』と同じようにポジティブなパワーを与えてくれる。

タンは「この本が皆さんに、喜びや受け入れる心、知らないものに対する理解力を与えられるようにと願っているよ。僕たち一人ひとりが自分の人生を生きて、お互いをよりよく知ることで、もっと健全で幸せな世の中になるだろう」と述べている。

マイケル・ケイン(指南書)

マイケル・ケイン

マイケル・ケインは20代半ばから本格的に俳優活動を開始し、その60年以上に及ぶキャリアで150本を超える作品に出演してきた。アカデミー賞に6度ノミネートされ2度(『ハンナとその姉妹』『サイダー・ハウス・ルール』)受賞する一方、一時は作品を選ばずに出演していると揶揄されたことも。

そのように光も闇も経験してきた彼は、その経験をもとに、回想録をはじめ何冊もの本を執筆。映画を作る時の俳優の役割について自身の知識を惜しげもなく披露した「映画の演技」は高い評価を受け、日本語にも翻訳されている。そんな彼が2018年に発表した「わが人生。名優マイケル・ケインによる最上の人生指南書」は、そのタイトル通り、俳優に限らずどんな人にも当てはまる彼からの人生の指南書だ。イギリスの労働者階級として生まれ育ち、第二次世界大戦下に子ども時代を送り、演劇学校に通わなかった彼がいかにして世界を代表する名優となったのか。「多くの輝かしい成功と悲惨な失敗から多くの有益な教訓を学んできた」彼が、生きる知恵、仕事の心得を授けてくれる。

クリストファー・ノーラン監督の『バットマン ビギンズ』でマイケルと共演した渡辺謙は、本書について「人生は逆転できる。『仕事』は現場に着く前から始まる。真剣に楽しむ。大きな視点でとらえる。これらはどの仕事に就いたとしてもあてはまるものだ。俳優や業界人はもちろんだが、夢に向かって歩き始めた若者たちにもぜひ読んでほしい」と評している。

(海外ドラマNAVI)

Photo:『名探偵ポワロ』©ITV PLC/マイケル・ケイン ©AVTA/FAMOUS