『ツイン・ピークス』作曲家アンジェロ・バダラメンティ、85歳で逝去

1990年代にカルト的人気を博し、世界中で大旋風を巻き起こしたミステリーサスペンスドラマ『ツイン・ピークス』と、2017年に25年ぶりに復活した『ツイン・ピークス The Return』。両作の音楽を手掛けたアンジェロ・バダラメンティが、家族に見守られながら85歳で永眠した。米TV Lineなど複数のメディアが報じている。

歌のコーチとしてリンチと出会う

バダラメンティの家族と見られる一人がInstagramで彼の死を発表。「私の偉大な伯父アンジェロ・バダラメンティが、あちらの世界へ行ってしまいました。『ブルーベルベット』、『ツイン・ピークス』、『キャビン・フィーバー』、『エルム街の悪夢3/惨劇の館』をはじめとした多くの作品や、デヴィッド・ボウイ、マイケル・ジャクソン、ポール・マッカートニー、ニーナ・シモン、ジュリー・クルーズ、イザベラ・ロッセリーニ、 ドロレス・オリオーダン、アンスラックス、ドッケン、イーライ・ロス監督、そして特にデヴィッド・リンチ監督との関係・共同制作などもあり、私にとって彼は世界で誰よりも興味深い人でした。私自身やその他の多くの人々にとって、真の音楽的・芸術的インスピレーションを与えてくれる存在でした。また彼は自分のルーツと家族に対してとても忠実で、(出身地である)北ニュージャージーからロサンゼルスに引っ越すようなことはせずずっと地元にいました。何気ないのに心を打つような話が尽きることがなかったのは、言うまでもありません。彼は多くの人に惜しまれるでしょう」

バダラメンティがリンチの『ツイン・ピークス』を手掛けたことは有名だが、リンチとのコラボレーション歴は長く、そもそものきっかけは1986年の映画『ブルーベルベット』で主題歌を歌うイザベラ・ロッセリーニの歌のコーチとして雇われたことだった。なお、『ブルーベルベット』の中でイザベラ演じるドロシーがクラブで歌っている時、その横のピアノ奏者としてバダラメンティが出演している。その後、バダラメンティとリンチは『ロスト・ハイウェイ』(1997年)、『ストレイト・ストーリー』(1999年)、『マルホランド・ドライブ』(2001年)などでもタッグを組んだ。『ツイン・ピークス』のテーマ曲でバダラメンティは1990年のグラミー賞最優秀ポップ・インストゥルメンタル・パフォーマンス賞を受賞。また、同作のサウンドトラック・アルバムは25カ国でゴールドディスクを獲得した。

アンジェロ・バダラメンティは1937年3月22日、ニューヨークのブルックリンで、魚市場を経営するシチリア系の父のもとに生まれた。10代の頃から夏休みにリゾート地で歌手の伴奏をするなど、早くから音楽に親しんでいた彼は、奨学金を得てニューヨーク州ロチェスターのイーストマン音楽学校に入学、その後マンハッタン音楽学校に編入し、1960年に学士号と修士号を取得した。作曲家としてのキャリアをスタートさせる前、バダラメンティはブルックリンで中学校の音楽教師をしていたが、その仕事がきっかけで音楽出版社に就職し、様々なアーティストのために作曲や編曲を手掛けるようになる。作詞家のジョン・クリフォードと共同で書いた2曲、「Hold No Grudge(原題)」と「He Ain't Comin' Home No More(原題)」はジャズ歌手のニーナ・シモンがレコーディングした。1973年、バダラメンティはオシー・デイヴィス監督の『ゴードンの戦争』で劇伴作曲家へ転身すると、映画やテレビの作曲家としても活躍。米NBCの『プロファイラー4/犯罪心理分析官』のテーマ曲、故ジェームズ・リプトンがホストを務めた米Bravoのトーク番組『アクターズ・スタジオ・インタビュー』のテーマ曲、1992年のバルセロナ・オリンピックで聖火点火セレモニーの際に流れる「Torch Theme(原題)」なども作曲した。

映画・テレビ界にも多くの名曲を残してくれたバダラメンティの冥福を祈りたい。(海外ドラマNAVI)

参考元:米TV Line