【映画レビュー】『アリータ:バトル・エンジェル』 アクション以外の温かな瞬間にも注目!

ジェームズ・キャメロンの約25年越しのアイデアが、ついに具現化した。木城ゆきとによる90年代のSFバトル漫画「銃夢(ガンム)」を原作とする映画『アリータ:バトル・エンジェル』が、2月22日(金)から日本解禁となった。哀しい過去を背負った、繊細なサイボーグの少女。従来のCGとは一線を画す、豊かな感情表現に息を呑む一本だ。

♦︎殺戮のエンジェル

ガラクタ同然の姿でスクラップ置き場に横たわっていたサイボーグの少女、アリータ(声とモーション:ローサ・サラザール)。記憶喪失で行くあてのなかったところを、年老いたイド博士(クリストフ・ヴァルツ)に救われる。馴染みのないディストピアのような世界に戸惑うばかりだったアリータだが、あどけない表情と親しみやすい性格が幸いし、すぐに新しい仲間たちが。ハンサムな不良のヒューゴ(キーアン・ジョンソン)との間にはいつしか特別な感情が芽生える。

ところが彼女は、3世紀も前に封印されたはずの殺人兵器だったと判明。自身の残酷なバックグラウンドに気づいてしまうアリータ。惨事を防ごうと彼女の元に送り込まれる刺客たち。極限まで磨き上げられた戦闘能力をフルに活用し、生き残りを図るアリータだったが...。

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♦︎斬新なビジュアル...だけじゃない!

革新的で目を見張るようなビジュアルの本作。鑑賞中に足元の床が揺れているような気分にさえなる、と米Detroit News紙。『アバター』以降で最も没入できる作品だと述べ、3D技術の巧みな導入に感嘆している。

SFアクション大作とあって戦闘シーンが山盛りだが、バトル以外にも見どころは豊富。自分の存在意義を問い続けるアリータが呑まれる、甘く切ないラブストーリーは心に響くこと請け合い。本作はアメリカをはじめ世界の多くの地域で、狙ったようにバレンタインデーに合わせて劇場公開されている。男女問わず楽しめる作品となっている、と米Los Angeles Times紙は述べている。

さらに娯楽作品でありながら、哲学的な問いをも内包している。アクション作品という側面よりも、こうした洞察に価値があると見るのは米San Francisco Chronicle紙。心を持ったサイボーグであるアリータの悩みを通じ、人間性とは何か、そしてその価値は将来どこへ向かおうとしているのかを考えさせる作品だ。「人間でなくてがっかりした?」と気に病むアリータにヒューゴが返す、温かなセリフは必聴だ。

♦︎キャメロン悲願のSF大作

キャメロン(『アバター』『タイタニック』)は本作の構想を長年温めていたが、アバターシリーズに時間を取られたためプロジェクトに着手できずにいた。その意思に賛同したロバート・ロドリゲス監督(『シン・シティ』『スパイキッズ』)によって実写化が実現したという経緯がある。

特殊効果は、『アバター』『ロード・オブ・ザ・リング』『アベンジャーズ』で驚異的な世界観を構築した、ニュージーランドのWETAワークショップが担当。アリータの声を演じるローサのモーションと表情をトラッキングし、滑らかで感情豊かな動きを画面に再現している。『ロード・オブ・ザ・リング』のゴーレムは全身が5万ポリゴンで構成されているが、アリータは片目だけで900万ポリゴンを使うという力の入れようだ。

日本での原作連載終了から20年以上の時を経て、スクリーンに蘇えった『アリータ:バトル・エンジェル』は、20世紀フォックス映画配給にて、2月22日(金)より全国公開中。(海外ドラマNAVI)

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映画『アリータ:バトル・エンジェル』
(C) 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation