【独占】『ソウルフル・ワールド』の前日譚『22番 VS 人間の世界』ケヴィン・ノルティング監督インタビュー "スピンオフのアイデアがある!"

本年度アカデミー賞長編アニメーション賞を受賞した『ソウルフル・ワールド』の前日譚となるDisney+(ディズニープラス)オリジナルショートムービー『22番 VS 人間の世界』が本日5月7日(金)より配信開始。本作は、2003年公開の『ファインディング・ニモ』からエディターとして、ディズニー&ピクサーで働いてきたケビン・ノルティングの監督デビュー作。エディターと監督業の違いや、『カーズ』や『ウォーリー』などに携わってきた彼は実はアニメーションの仕事するのは偶然だったことなど多くのことを語ってくれた。

『22番 VS 人間の世界』とは?

『22番 VS 人間の世界』は、世界中で大絶賛された『ソウルフル・ワールド』の序章ともいうべき短編作品。『ソウルフル・ワールド』で音楽教師ジョー・ガードナーと現実社会とソウル(─魂─)の世界を大冒険した"こじらせ"ソウル22番が、ジョーと出会う前を描く。

自分の"やりたいこと"(人生のきらめき)が見つけられず、「人間の世界に行きたくない」とソウルの世界に何百年も暮らし続ける22番は、5つの新しいソウルと徒党を組んで反乱を起こす。ところが、仲間たちに予期せぬことが起き、22番の反乱は人生の驚くべき意味を知るきっかけとなる...。

――まず、『22番 VS 人間の世界』を作られることに至った経緯を教えてください。

僕たちはDVD時代にいつもこういう短編を作っていたんだ。そして、『ソウルフル・ワールド』の公開の6カ月か8カ月前に、短編についめてアイデアを考えていた。DVD市場が昔のようなものでなくても、ディズニープラスはある意味そういう伝統を維持したて話し始。そういう経緯で、この短編を作ることになったんだよ。

――この短編のアイデアはどのようにして得たんですか? 『ソウルフル・ワールド』で使われなかったシーンがあったんでしょうか?

それには二つの答えがある。一つは、2020年12月にストーリー部門が、この短編をどういった作品にしたいかなど様々なアイデアを(『ソウルフル・ワールド』の監督で、ピクサー・アニメーション・スタジオのチーフ・クリエイティブ・オフィサー)ピート・ドクターにプレゼンした。『22番 VS 人間の世界』はそのアイデアから絞り込んだんだ。

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『ソウルフル・ワールド』はジョー・ガードナーのストーリーで、僕たちは彼の人生を深く掘り下げた。彼の家族に会うし、彼の友だちに出会った。『ソウルフル・ワールド』を作りながら、僕たちはいつも何が22番をああいう人にしたのか、ということについて話していた。他のすべての小さなソウルは地球に飛び降りるけど、22番はそうしない。それで、僕たちは22番をそうさせる理由を冗談で言っていた。メンターのアイデアはそういうふうにして出てきたんだ。そして短編は、22番を掘り下げる素晴らしい機会だった。そういうふうにしてアイデアを見つけたんだよ。

――初めて監督する上で最大のチャレンジは何でしたか?

エディターである僕にとっての最大のチャレンジは、僕がやったものを見せることで自分の考えを他人に伝えることに慣れていることだった。

編集ではいろんなことを試してみたり、違う道を進んだり、試行錯誤をする機会がある。だから、何かを見せる用意が出来た時には、僕はすでにじっくり考えるというプロセスを終えていた。監督は、自分が何をやりたいかを口頭で人々に伝えないといけない。自分自身でそれをやるのではなくね。エディターとして、そういったことをやるのはとても大変だった。

この短編を自分で編集することはおそらく出来たと思う。でも、素晴らしいエディター、ノア・ニューマンと一緒に仕事をしたいと主張したんだ。そして、エディターとして僕ならこうするだろうと思うことを、(ノアに)伝えることを自分自身に強いるようにした。ただ自分でやって、失敗して、またやり直すのではなくね。それが僕にとっての最大のチャレンジだったと思うよ。

――この短編を監督して、映画作りについて、どんなことを一番学びましたか?

常に学んでいるけど、最大のレッスンっぽいものは...、エディターというのは当然のこととして、とても一方的な判断を下しがちなんだ。僕らは素材をもらって、それが良いか悪いか判断していく。役者の演技を判断したり、監督が選んだもの(テイク)やカメラ(撮影の出来)をね。だから、大きな学びだったのは自分が判断される人になることだよ。たぶん、これからはあまり手厳しくならないね(笑)

――『22番 VS 人間の世界』を製作するにあたり、『ソウルフル・ワールド』の監督ピート・ドクターはどれくらい関わったんですか?

彼は製作総指揮であり、『ソウルフル・ワールド』は彼の"子ども"だ。だから僕たちは、そこからそんなに離れることをするつもりはなかった。この作品は、あまりに素早く動いていたからテーブルを囲んで、彼からたくさんの意見をもらうという機会はなかった。だから、ピートが僕のブレーントラストで、彼に映画のコピーを送ると、彼がとても良い意見をくれるんだ。15年間、彼が監督している時に最前列でそれを見られるという機会を持っていてラッキーだったよ。

――『22番 VS 人間の世界』は、『ソウルフル・ワールド』と同じチームでやられたのですか?

ほとんどの部分ではね。僕らはラッキーだった。ピクサー作品のプロダクションに沿ってやったんだけど、偶然にもスケジュールはうまくいった。

短編は、(他の作品の)プロダクションのパイプラインの中で、スケジュールを見つけないといけない。『ソウルフル・ワールド』のそれぞれの部署が仕事を終えた時に、彼らがバケーションに行ったり、他の作品に移行する前に、スタッフを捕まえることが出来たんだ。だから、ノア・ニューマン以外のほとんどの人たちは、その長編から来て、この短編に関わったんだ。

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――この短編は自分の"人生きらめき"を見つけることについて描かれています。あなたはどのように"きらめき"を見つけるのですか?

僕が"きらめき"を見つけようとするときには、物事にオープンになって、(他の人の話や物事に)耳を傾けるのに時間を使う。ずっと確固とした考えを持ち続けるというのと反対にね。

他の人についてはわからないけど、僕の場合、それはずっとゆっくりなプロセスなんだ(笑) 徐々に出てくる感じ。だから、素早く考えて、素早く意見を言わないといけない仕事場にいると分かるんだ。僕にはそういったことは絶対にやれないのがね。僕は何かを見て、それから一晩時間をおかないといけない。そして次の日に、それについてもう一度考えるんだ。それが僕のやり方だよ。物事を染み込ませるんだ。

――あなたの"人生のきらめき"は何でしたか? 人でしたか? または歴史上のある瞬間とかですか?

それは良い質問だね。具体的に答えられたらいいんだけど...。僕たちは『ソウルフル・ワールド』の仕事を3,4年やって、すごくたくさんの人と、すごくたくさんの会話を交わした。だから、その質問に直接的な答えをするのは難しいかな。

『ソウルフル・ワールド』の主人公ジョー・ガードナーは、若い頃から何をやりたいか知っていたキャラクターだ。彼は人生に目的があった。『22番 VS 人間の世界』はその正反対のストーリーなんだよ。僕はジョーよりも22番の方にもっとずっと共感する。僕が何をすることになるかを考えるのには、とても長い時間がかかった。そして、僕は多くのことを試してみた。ある人たちは人生の初期の頃に、自分のこれからの人生を見て、どういう道を進むのかを見ることが出来る。僕の場合は振り返って、「今、僕が進んできた道は、間違いじゃなかった」と言うには、この年になるまで待たないといけなかった。でも同時に、僕はそこに立って、未来を見ていたんだけど、進むべき道はまったく見えなかった。22番はそういうタイプのキャラクターだと思う。

――もしあなたが22番だったら、地球にあるもので好きじゃないのはどういうものですか?

もし僕が22番だったら、それとも僕だったら?(笑)

22番は地球を知っていると思っているけど、あまり知らないんだ。22番が知っているのは、ソウルの世界から見たバージョンの地球と、"万物の殿堂"(人生のきらめきを見つけるための場所)でカウンセラーたちが言うことだけだ。だから、あまりよく知らないんだ。そして、それが22番の問題なんだよ。出かけて行くことへの恐れ、または成功出来ないことへの恐れが彼女の問題なんだ。

――人生の意味というのはとても大きなアイデアで、とても哲学的で深いアイデアです。そして、あなたはこれを家族のために作っていますが、子どもたちからどんな反応があると予想していましたか?

僕はピクサーで数本の映画の仕事をした後、子どもたちの好奇心や理解力に関して、彼らに十分に評価されていないことを学んだよ。彼らがなにかを言葉で表現できないからといって、彼らが理解できないことを意味しているわけじゃない。僕たちは常に驚かされている。特にピート・ドクターの映画でね。

『インサイド・ヘッド』を始めて2年ほど経った頃、その疑問が持ち上がったんだ。「子どもたちはこれを観たいと思うだろうか? 子どもたちはこれを理解するだろうか?」とね。それで僕たちは、子どもたちやその友だち、家族を会社に連れて来て、小さな上映会をやって、映画のラフカットを見せたんだ。そしたら、僕たちはとても嬉しい驚きを味わったよ。子どもたちがどれほど理解していて、どれほど映画について話せるかということに。そして、どれほど彼らが没頭しているかということにね。僕たちは長年にわたって、そういうことを学んだんだと思う。映画ごとにその話は持ち上がるけどね。僕たちがそういう会話を何度も交わすことは良いことだ。なぜなら、僕たちは子どもたちが好きなことを作品に足すから。それによってハッピーな要素がある作品になるからね。

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――あなたはいつアニメーションの仕事をしたいと思ったんですか? また、そういう仕事をするきっかけになったカートゥーンやアニメーション映画はありますか?

正直に言うと、僕がアニメーションをやることになったのは、まったくの偶然だったんだ。先ほど言ったように、振り返るタイプだから。でも、それはまったく理にかなっていると思うよ。なぜなら、僕は大学で文章を書くことと、絵を描くのを勉強したからだ。若い頃からコミックブックの絵を描いていた。でも、(アニメーションをやることになるとは)決して思わなかった。

これまで僕は実写映画の仕事をしていて、ディズニーで『シャンハイ・ヌーン』に携わっていたんだ。ポスト・プロダクションに深く没頭していたある日、ランチを取るために食堂に行ったんだけど、僕は何か忘れ物をして、オフィスに戻ったら電話が鳴った。僕がオフィスに入ったらすぐにね。その電話は一緒に仕事をしたことがある友人からで、彼はその時ピクサーで働いていて、人を探していたようなんだ。そして、彼が「(ピクサーで働くことに)興味があるか?」と聞いたんだ。僕はちょうどその頃、子どもたちをピクサー映画を観に連れて行っていたんだけど、それは僕も子どもたちも共感することが出来た最初の映画だった。だから、「イエス! 僕はもうロサンゼルスに住みたくない」とすぐ返事をしたよ。アニメーションの仕事をすることはまったくの偶然だったんだ。

――『ソウルフル・ワールド』はアカデミー賞で長編アニメーション賞を受賞しました。そして今、この短編が公開されます。その受賞でプレッシャーを感じていますか?

もちろんだよ(笑) 僕はそれについて考えないようにしている。もし、受賞について考えたら、いろんなことが手につかなくるから、作品をただ世に出して、うまくいくのを期待しているよ(笑)

――『22番 VS 人間の世界』から、どんなメッセージを観客に受け取ってもらいたいですか?

それに関して、僕が『22番 VS 人間の世界』など携わった作品について、あえてなにかを言ったりするようなことはしたくないんだ。僕が求めているのはどちらかというと、作品を見た後に人々が作品について話したり、考えたりすることなんだ。それが僕のアプローチだよ。

――『22番 VS 人間の世界』の続編やスピンオフのアイデアはありますか?

あるよ。でも、それを他の誰かがやるかどうかわからない(笑) 続編じゃないよ。先ほども言ったように、僕らが『22番 VS 人間の世界』や『ソウルフル・ワールド』に携わっている時、なにが22番をそういうふうにさせるのかについて話をしていた。僕にはものすごくたくさんのアイデアがあって、シリーズとして掘り下げられるほどにね。

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――もし22番がこの地球に来たら、どこに着地すると想像しますか?

映画に出てこなかったけど、実はそのシーンがあったんだ。だけど、そのどれもが、みんなを満足させるものじゃなかった(笑) だから、わからない。僕は、最終的にどうなかったかについてはっきりと答えを出さないままの方が好きなんだ。22番の人生がどうなかったというのを想像する方がずっと楽しいよ。

――ピクサーでは、多くの監督たちが、ストーリー・アーティストのバックグランドを持っています。ピクサーでエディターから監督になるというのは、どのぐらい珍しいことですか?

珍しいことだよ。(『リメンバー・ミー』の監督)リー・アンクリッチが同じ道を辿っていたけど。ピクサー作品ではないけど、多くのエディターが独自に短編を監督している。だから僕にとっては、それは完全に理にかなっていることだと思う。エディターは映画のあらゆる部分に深く関わっているから、それが難しいことには思えないんだ。

――今後ピクサーで他の短編や長編を監督する予定はありますか?

わからないな。ピクサーで長編映画の企画を動かすには、それを作るまでには長い時間がかかる。だから、僕がそれまで仕事をしているかわからないけど、短編は何本かぜひやってみたいね。でも、僕は編集していればハッピーなんだ。今も編集中だよ。編集するのも大好きなんだ。

――何の編集をされているのですか?

それについては話せないんだ(笑)

――ピクサーの短編や映画では、作品を成功させるための何か特有の要素があったりするのでしょうか?あなた自身はどのように見ていますか?

昔は大人と同じレベルで子どもたちを楽しませられる作品はあまりなかった。だけど、ディズニー&ピクサー作品はいつもとても幅広い人たちに魅力が伝わっていることに驚いている。それは年齢だけでなく、インターナショナルにおいても。はっきりと答えられないけど、僕はディズニー&ピクサー作品のそういった部分をとても楽しんでいるよ。

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『22番vs 人間の世界』は、本日5月7日(金)よりディズニープラスで配信開始。アカデミー賞長編アニメーション賞を受賞した『ソウルフル・ワールド』もディズニープラス配信中。

(海外ドラマNAVI)

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『22番 VS 人間の世界』© 2021 Disney/Pixar / 『ソウルフル・ワールド』© 2021 Disney/Pixar