11月の頭から始まった、全米脚本家組合のストライキ。アメリカ人なら誰もが胸躍らせるホリデーシーズンも、脚本家たちは重い気持ちのまま過ごしたのではないでしょうか。

私の知り合いのメーキャップ・アーティストKさんによれば、脚本家のストライキ中でも、今のところは書きためておいた脚本で映画を中心に撮影の仕事があるとのこと。ただ、ストライキ中の脚本家当人たちは大変。「最初の一ヶ月は自分の貯金で過ごす。次の一ヶ月は親兄弟から借りる。その次の月は友達から。4ヶ月を過ぎると家を売らないといけなくなる」―こんな言い回しが業界にあるというのです。実際、10年前に5ヶ月続いた脚本家のストライキでは、たくさんの人が家を失ったと新聞で読んだ記憶があります。今冬のロサンゼルスは暖かいのが、せめてもの救いでしょうか。

さて、そんな辛いストライキでも得をした人(番組)がいます。今年はアメリカのテレビドラマにつきものの、キャンセル(途中打ち切り)のドラマが例年になく少ないのです。例年新ドラマの3分の一は打ち切りになるアメリカの厳しいテレビ事情。ところが今年キャンセルになったドラマは一本だけ。これは、いつ尽きるかわからないドラマの脚本をネットワークとしても無駄にはできないから。再放送ばかりでは毎年低下傾向の視聴率に拍車がかかる。内容も人気もイマイチだとしても、この際新しいドラマがとにかく欲しい、というわけなのです。

今年は打ち切りになった唯一のドラマとは『Viva Laughlin』。これも『CSI』シリーズなど再放送でも数字の取れるドラマを豊富に持つCBSだから、あっさり2回の放送でクビを切っただけのことで、他ネットワークならば、脚本がある分だけ放送されていた可能性は高いと思うのです。

もしストライキが起こってなかったら、もしくは早く終了していたら、キャンセルになっていたと思うドラマには『Life』『Journeyman』(NBC)、『Cavemen』『October Road』(ABC)、『Cane』(CBS)などがあります。通常なら、一ヶ月以内で放送終了の危機にあったかもしれないこれらのドラマ、撮影した分はどうやら無事に放送できそうです。

1月のミッド・シーズン始まりには『Terminator : The Sarah Connor Chronicles』『Cashmere Mafia』などの新ドラマ、『LOST』第4シーズンもあります。ストがあってもなくても、新しいドラマで埋まるアメリカのエンタメ力はやっぱり凄い!
今のところ、一番損してないのは視聴者なのかもしれませんねぇ。

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