『コールドケース』『キケンな女刑事~』、邦題や副題の謎に迫る!

 

以前に海外ドラマNAVIのコラム「海外ドラマの日本語タイトルってどうよ?」でも取り上げていたように、海外ドラマの邦題ってかなーり興味深い。ある程度、英語がデキる人や原題のイメージを大事にしたい!というタイプの人が、「なんで邦題ってこうなっちゃうの!?」ってブーイングしたくなる気持ちもわからなくもないが、その裏には「日本の視聴者にドラマの内容をわかりやすく伝えたい!」という制作サイドの真摯な思いがあるわけで...。
そこで今回は、WOWOWの海外ドラマ担当者に突撃取材!邦題はどうやって生まれているの?教えてください!

まずは、どうやって邦題を付けるのか、聞いてみると...。
「エピソードタイトルの場合は、制作サイドで決めることが多いですが、ドラマのタイトルについては社内でタイトル会議を開いて大勢で検討することが多いですね。番組の内容やコンセプトに関連する単語をたくさん書き出して、それらを組み合わせながら邦題を考えていきます」。
なるほど。担当者がノリで決めちゃうというわけにはいかないのね。やっぱり。
「たとえば、『キケンな女刑事 バック・トゥ・80"s』の原題は『Ashes to Ashes』ですが、複数形をそのまま日本語にすると、すごくおさまりが悪いんです。"a" という定冠詞もそうですよね。『クリミナル・マインド FBI行動分析課』(原題は『Criminal Minds』)だって複数形にはしていませんしね。それに、『Ashes to Ashes』はデビッド・ボウイのヒット曲からとられたタイトル。これを訳してもドラマの内容とは関係ないですから(笑)。それなら、いっそのことまったく違うタイトルにしようということになりました」。
どうせ原題から離れるのなら、いっそのことまったく違うタイトルにしちゃったほうがいい、というのはわかる気がします。
「ポイントは80年代の雰囲気を伝えること。80年代を象徴するような単語や当時流行った曲名をたくさんリストアップして、それを元に映画部のメンバーで会議を開いて決めました。当初は『女刑事アレックス』のような邦題も候補に挙がったんですよ。でも、これじゃアメリカの刑事ドラマみたいだし、ひねりがないという話になって。『これはUKドラマなんだよ』ってタイトルで差別化したいという思いもありましたね」。
なるほどー。こうして話を聞いてみると、妙に納得してしまう。『キケンな女刑事 バック・トゥ・80"s』...、ジワジワとボディブローのように効いてくる! ちなみに、このドラマの親ドラマにあたる『Life on Mars』(原題)もデビッド・ボウイの曲名。しかしながら、邦題は『時空刑事1973~LIFE ON MARS』。"時空刑事"って一体!? でもこういうネーミング、嫌いじゃないです。

イギリスBBCで放送され、8月にはWOWOWでの放送も決定している『バーン・アップ 石油利権の闇』(原題は『Burn up』)。こちらのタイトル会議のために用意されたメモも見せてもらいました。「陰謀」「策謀」「暗躍」「企み」「罠」といったダークな単語たちがビッシリ! このメモ、間違って誰かに拾われたらかなり怪しまれるだろうな...と心配になるほど。しかし、苦労の末に決定したサブタイトル「石油利権の闇」、確かに惹かれるフレーズに仕上がってます!
シーズンを重ねるドラマよりも、ミニシリーズなどのほうが、より一層邦題でいかに視聴者の興味を惹きつけられるかが鍵になるのかも。『メサイア 血塗られた救世主』(原題は『Messiah: The Rapture』 )や『ライン・オブ・ビューティ 愛と欲望の境界線』(原題は『The Line of Beauty』もサブタイトルが秀逸なミニシリーズだったしなぁ。

そうそう、『原題+サブタイトル(副題)』あるいは『サブタイトル+原題』っていう構成の邦題も結構多い。放送開始当初、『グレイズ・アナトミー』には「恋の解剖学」、『コールドケース』には「迷宮事件簿」っていうサブタイトルが付いていたし。これ、途中のシーズンからとれてますけど、その辺はどういう事情からなんでしょう?
「『グレイズ・アナトミー』は、これまでの医療ドラマとは異なり、恋愛ドラマとしての要素が大きいことを伝えたくてサブタイトルを入れました。『コールドケース』は、日本ではまったくなじみのないアメリカ特有の時効制度の名称がタイトルになっていたので、やはりドラマの内容をイメージさせるサブタイルを追加しました。けれども、どちらも人気シリーズに成長。視聴者にはドラマの内容が周知されているものと判断して、途中からサブタイトルは割愛して原題を生かしたタイトルにしています」。
やっぱりそういうことだったのね!と、これまた納得です。
「逆に、『サード・ウォッチ/NY事件ファイル』や『ドーソンズ・クリーク 青春の輝き』のように、途中のシーズンからサブタイトルが追加された番組もありますよ」。
そうそう、そうでした!逆パターンがあったことはすっかり忘れていた!これは、「もっとわかりやすい邦題を」という声が途中から大きくなり、サブタイトルで補う動きが強まった時期と放送時期が重なった、という事情があったようです。

こんな面白いお話も。
「セットビジットで現地に行った際、『プライベート・プラクティス 迷えるオトナたち』(原題は『Private Practice』)のアディソン役のケイト・ウォルシュさんやピート役のティム・デイリーさんに、日本ではこんなサブタイトルを付けてるんですよってお話したんです。"アラフォー"っていう言葉の意味も説明しつつ。そうしたら、『いいね!』『ドラマの内容をうまく表現してるわ!』と喜んでいただけて...」。
なるほど、邦題は現地の役者さんにとっては新鮮に感じられたかも。秀逸な邦題が、いつか本国に逆輸入されたりなんかして!?

さて、これまでWOWOWが放送した海外ドラマの中で、これはいいゾ!と思う邦題はないかも聞いてみました。
「『ピープ・ショー ボクたち妄想族』(原題は『Peep Show』)なんてどうでしょう? でも、コメディの邦題を付けるのが一番難しいんですよ。いかにコメディ色をタイトルに出せるかが勝負ですから」。
そうですね。コメディだけに"すべらない"邦題が求められますもんね。これもわかる気がする...。
「『4400 未知からの生還者』(原題は『4400』)もいい出来だと思います。この邦題には『X-ファイル』へのオマージュが込められていて、それを"未知"という言葉で表現しました。『未知との遭遇』という名作もありますしね。"生還者"の部分は"帰還者"にしようという案もあったんですが、響きが"シュッポッポー(!)の機関車"みたいでしょ? なので"生還者"に落ち着きましたが、うまくはまったと思っています」。
映画の大作など、ほかの作品からのオマージュで邦題が付けられることもあるのね。じゃあ、『デクスター ~警察官は殺人鬼』(原題は『Dexter』)は、『奥さまは魔女』のオマージュか!? いや、まさかね...。

最近では、原題そのままという邦題も増えてきたけれど、個人的には、『白バイ野郎ジョン&パンチ』(原題は『CHiPs』)とか『あなたにムチュー』(原題は『Mad About You』)とか、コテコテな邦題も嫌いじゃない。でも「○○○○○ってサブタイトルだけはやめて~!」と思ってしまう邦題もあるのは確か。
しかし、「意訳しすぎ!」「原題のままじゃ意味不明!」「邦題ダサイ!」「日本人に英語がわかるかぁ、コラァ!」みたいな、いろんな声の狭間で、苦労して邦題が付けられているわけですね。
まあ、邦題に文句を付けたくなったら、まずはドラマを観てみるべし。そこで初めて邦題の"よさ"に気付くことができるのかも!

■『バーン・アップ 石油利権の闇』(前篇&後篇)
8月9日(日)15:00~前後編一挙放送!
【放送】WOWOW
(c) Kudos(Burn Up) Limited and Burn Up Productions Canada Inc. MMVIII