海外ドラマNAVI勝手にアワード【番外編】/すご~い記録を打ち立てた伝説"の海外ドラマたち

『LOST』『24 -TWENTY FOUR-』『HEROES/ヒーローズ』――。
第3回海外ドラマNAVI勝手にアワードでも「伝説に残るラスト」の投票が行われているが、2010年は人気シリーズの終了が目立った。

ロングラン番組『Law & Order』もそのひとつ。警察の犯罪捜査と検察による法廷での追及という二段構成で見せる"硬派かつ正統派のドラマ"として愛されてきたが、去年5月にフィナーレ。20シーズンで幕を閉じた。
これは、アメリカのプライムタイムで最も長く続いたドラマ『ガンスモーク』[米:1955-75]に並ぶ記録。「来シーズン、ついに記録更新か!?」と期待されたが、最終回目前でのキャンセル発表......。アメリカ人が愛する伝説のウエスタン『ガンスモーク』の壁は越えられない、というか、あえて越えさせないようにしているとしか思えない。
また去年は、1956年放送開始のソープオペラ『As The World Turns』も終了。こちらも55年(!)続いたものの、《連続ドラマの最長記録》には届かなかった。

◆伝説その1:ギネス認定!《史上最長の連続TVドラマ》

『As The World Turns』が目指していた(と思われる)世界最長記録保持ドラマは、1952年放送開始のソープオペラ『Guiding Light』。2009年まで、なんと57年と2ヶ月半もの長きにわたってオンエア。前身は1937年に始まったラジオドラマで、この14シーズンを含めると、シリーズとしては71シーズン・72年も続いたことになる。全15762話ということにはなっているが、初回から最終回までずっと関わった人もいないし、資料が全部残っているとも思えず、この数字が正しいかどうかはもはや誰も確認できない......。

シリーズ初期はシカゴ郊外に住む牧師と彼の家族が中心で、かなり保守的な宗教色の強いストーリーだったらしい。が、ドイツ系移民の一家がメインになって舞台はカリフォルニアへ。テレビ移行後は説教臭さも薄れ、登場人物が一気に増えた60年代からは徐々に路線変更。数年前に見かけたときはもうフツーの昼メロだった。
ソープオペラは、1年間ウィークデーに毎日放送するため、話数が多くなるのは当然。しかし、連日新しいエピソードを放送するべくハードスケジュールをこなし、ストーリーにも演技にも映像にも深みのない番組を何年も作り続ける粘り強さはある意味すごい。それが57年も......となればもう尊敬に値する。

そんな伝説のソープオペラは、いまやスターとなった人々が若い頃に出演していたことでも知られる。
無名時代のケヴィン・ベーコンや、本作でテレビデビューしたキャリスタ・フロックハート(『アリー my ラブ』)やテイ・ディグス(『プライベート・プラクティス』)。アリソン・ジャニー(『ザ・ホワイトハウス』)は30代の頃にメイド役で登場していたし、シェリー・ストリングフィールドは『ER』の10年以上前にレギュラー出演、メリーナ・カナカレデス(『CSI:ニューヨーク』)はこの番組でデイタイム・エミー賞に2度ノミネート。ヘイデン・パネッティーア(『HEROES』)も『アリー』出演直前までメインキャストの一人だった。
長い歴史の間には、新たな才能発掘の場としての役割もしっかり果たしていたようだ。

◆伝説その2:驚異の視聴率を叩き出したコメディは!?

50年代半ばの日本に「放送時間中は女湯がガラ空きになった」との逸話を残すラジオドラマがあったが、それと同時代に海の向こうでもすごい伝説を持つコメディが放送されていた。

月曜日の夜9時~9時半。
ニューヨークでは「ドライバーが番組を観ようと近くの飲食店に駆け込んで、走行中のタクシーが街から消え」、シカゴでは「デパートが営業を夕方で切り上げ」、都市部では「犯罪発生件数が激減」。住宅街では「みんながテレビの前にいたため電話を使う人がおらず、ベルがまったく鳴らなかった」......という。

こうした数々の伝説を残したのが、CBSで1951年から57年まで放送されていた『アイ・ラブ・ルーシー』。スタジオに観客を入れてラフトラックが入るよう撮影し、複数のカメラでフィルムに録画、現在のシットコム形式のベースを作った。日本でも第一次海外ドラマブームのさなかに放送され、人気番組に。

そんな『アイ・ラブ・ルーシー』が真に伝説となったのは1953年。
リカード夫妻を演じていたルシル・ボールとデジ・アーネスは実生活でも夫婦だったため、もともと番組には現実と虚構が混在していたが、ルシルの第二子妊娠がわかるとストーリーにもルーシーの妊娠が取り入れられた。......が、当時は妊婦が大きいお腹でテレビに出ることも、"妊娠(pregnant)"という単語を電波に乗せることもできなかった時代。出産をフィーチャーする物語を初めてテレビで放送するにあたり、宗教的問題の有無にも気を配りつつ、"pregnant"も別の言葉に言い換えて脚本が練られた。
そして迎えた1月19日。この日放送の第2シーズン16話は、ルーシーが息子を出産する特別なエピソード。ルシル本人の出産予定日2ヶ月前に収録され、ルシルの出産と同じ日に放送する段取り......というか、「ルーシーが出産する日」に「ルシルが赤ちゃんを産む」ことになっていた。
放送日の朝、ルシルは"帝王切開で"計画通りジュニアを出産。まさに主演女優自らカラダを張ったイベントが功を奏し、このエピソードは最高世帯視聴率71.7%という驚異の数字を記録。全米で推定4400万人が観たとされ、番組もルシル・ボールも伝説に!

『アイ・ラブ・ルーシー』が60年前に打ち立てた、ドラマ/コメディシリーズ歴代視聴率No1の記録はいまだ破られていない。当時と比べてチャンネル数は膨大になり、番組数も激増。新作も多いが、数字が取れなければすぐに打ち切られてしまう。視聴スタイルも多様になり、放送時間に家族全員がテレビの前に集まることもなくなった。
この状況だと、ドラマ/コメディ最高視聴率も、『ガンスモーク』『Law & Order』のプライムタイムドラマ最長記録も、塗り替えられる可能性はかなり低そう。あとは、第49シーズンに突入した現存最長のソープオペラ『General Hospital』がどれだけ続くか、だが......?