現在フジテレビで放送中の『ナイトライダー ネクスト』。実は本作の日本語版アフレコ収録が本日(4月27日)ですべて終了してしまうのです! となれば、NAVIとしては是非ともお話を伺いたい相手が! そう、KITTの声を担当する野島昭生さんです。初代『ナイトライダー』の話も交えつつ、野島さんと壷井監督にお話を伺ってきました。
――最後の収録まで残すところ、あと1話。今のお気持ちは?
野島:悲しいですねえ。あと100本くらいやりたかったなあ。
壺井:そうだね。
野島:終盤になって、やっと『ネクスト』がおもしろくなってきましたね!
壺井:今日の収録なんて、昔に戻ったみたいだったね。
野島:マヌケなワルが出てきて、KITT にいたずらしようとするというパターン。昔は3週に1回くらいあった気がするんだ。懐かしかったねえ。
野島:実は最初の1,2話くらいはまだ少し違和感があったんだけど、3話くらいになったらもう今のKITTに愛着がでてきてね。映像を見ながら「KITTだ! というか俺だ!」って思えるようになったよ。
――『~ネクスト』を見て、『ナイトライダー』との違いを感じますか?
野島:やはり「車」の違いは感じますね。今はCGでなんでもできちゃう。3Dなんとかで、何もないところから作っちゃう。インシュリンの注射器とか。バイメタルまで測れてしまう。
壺井:昔は実写で何台も走らせては壊し、走らせては壊しだったんですよ。今のは作られた映像だからね。でもあんな機能をKITTに全部積んでたらあの車の大きさじゃ無理じゃない!? トラックのサイズになっちゃうよ。(笑)
野島:とにかくいろんなものが出てくるよね。
壷井:KITTに予知能力があるんじゃない?「今日はどんな能力が必要かな...」って考えながら物をだすとか。(笑)
――マイクとKITTとの関係性はいかがですか?何か動きはありましたか?
野島:番組の後半にさしかかってきて、マイクとKITTの距離が近づいたよね。KITTも人間的になってきた。あれを見ていると、「僕ももう少し、いろいろやってもディレクターが許してくれるかな」なんて思えてきたね。
壺井:もし、前作『ナイトライダー』のまま話が繋がっているのなら、もっとくだけた感じになってましたね。でも今回は再びゼロから始まるので、最初は他人行儀な会話なんですよ。初めて二人が会う訳だからね。その後、徐々に二人の距離が近づいてきて、「この二人、できてるんじゃないか?」って思うくらい、二人にしかわからない話ができるようになる・・・でもそうなった頃にはドラマが終わっちゃうんですよねえ。もっともっと、いろいろやりたかったねって気持ちになるんです。話が続けば、あの二人のやりとりがさらに進化して「クスッ」と笑えるところがもっと増えていったんだろうと思いますよ。
野島:今日、マイクがラブシーンをする場面があったです。二人がイチャイチャしているところにKITTがすっと割り込んでくる。テストのときはいろいろやきもちをやいて頭にきているように演じてみたんだけど、監督に「本番では抑えて」って言われて。前作の最後のほうだと、かなりやきもちを焼く感じを出してたんですよ。
――KITTはマイクを何目線で観ているんでしょう? 相棒目線? 親目線? 知能を育てられているからもしかして息子目線?
壷井:KITTはマイクを尊敬はしてないでしょうね(笑)。相棒ではあるが尊敬はしていない。
野島:ときどきいろいろな気持ちが混じってるんですね。ときには相棒であり、ときにはお兄さんであり、弟であり、どうしようもない奴って気持ち、大好きって想い...いろいろ混じっているのがKITTだと思うね。
壷井:この間はマイクに命令されて、KITTが子どもを助けに行く場面でね、子どもを安全なところに運んだら、その子に「マイクを助けにいかないの?行動しないの?」って言われて。そのとたん、KITTがキュイイイインとUターンしてマイクの元に戻っていく...こういうのを見ると本当に人間くさいなーって思うねえ。
――『~ネクスト』で気になるのは、マイクとサラの関係ですが。あの二人はデキてるようでデキてない、微妙な距離感があるように見えますが...。
壺井:マイクとサラは、くっついちゃいけないんだと思います。マイクはなにしろモテるっていう設定なんだから、誰かとくっついちゃうとそこで終わりだと思うんです。とはいえ、サラの描き方はちょっと中途半端だったと思うね。
野島:本国でも模索してたんじゃないですかね。
壷井:もっと話が続けば、また新しい展開もあっただろうし、あれもこれもできたんじゃないかなあって思いますね。
――『ネクスト』のエピソードの中で、お二人が好きなのは?
壷井:「壊れる」シーンだね。
野島:飛行機から落とされそうになるところだね。「私を落としてください」ってKITTが言うんだよね。
壷井:マイクを助けるためには飛行機からKITTを下ろさないと...って場面で、KITTがそう言うの。それがすごく人間っぽいのよ。あの場面は、視聴者が「KITTって人間なんじゃないか!?」って思うんじゃないかな。深い場面だって思うよ。これが『ナイトライダー』の基本だなって、思わずほろっとくるんじゃないかな。
――『ナイトライダー』ファンの中には"KITTの名セリフ"をチェックしている方もいるようですよ。
壷井:今日もあったよね。「再び故郷に帰れるぞ」って。
――改めて、『ナイトライダー』の魅力って何なんでしょう。
壺井:今は車がしゃべるのって当たり前じゃないですか。機械がしゃべるって当たり前になってますよね。
野島:子どもだっておどろかないよね。
壷井:そうそう。でも俺たちが若い頃だと「へー! 車がしゃべってる!」って驚いてたじゃない? 人間のマイケルと車のKITTがしゃべる。そこが驚きだから、ドラマ自体はむしろすごく単純でよかった。視聴者は、車の中に人が載っているんだって錯覚を覚えるような感じが好きだったんだと思いますよ。最初はあたかも機械がしゃべっているように見せて、徐々に人間くさくなっていって。「おまえ、ウザイな!」って気持ちが視聴者に沸いてくるとおもしろい。「機械のくせになにやってんだ」って思われたとき、KITTが"人格化"されたという訳で。
だいたい、車が走るだけならF1とかでいいんですよ。車が、機械が、人間くさく感情含めてしゃべるところを視聴者がおもしろがってくれる、それがこの作品のおもしろさじゃないかな。だから、演出のときも、もっと感情こめて台詞を言わせちゃってもいいんじゃない?って思うし、それなら言っちゃおうよ!!ってなるんです。
野島:見ている人はそこが面白いと思うんですよ。「あ!? KITTがこんなことを言った!」って。
壷井:なんか最近"風水"とか妙なことを言うんだよね、KITTは。機械なんだから、もっと科学的なことを言えばいいのに、今日なんて「メタンのようだ」とかいってたし。「ようだ」って何それ!分析すればわかるんだから「あれはメタンだ」と言えよ!って思いましたよ(笑)あと、これはKITTならもうわかっているだろう表現なのに、なぜか知らないようなことをいうときもありますね。たとえば「心が折れる」っていう表現を使うと、「心は折れるようなものではありません」ってKITTが言うの。もうこのニュアンスくらいわかっているはずなんだろうけど、なぜか理解してない風なの。すねてるだけか?っていろいろ考えますね。
野島:実際『ナイトライダー』は、昔からいろんなところにツッコミどころがあるんで、「あれ?」って思う個所がいろいろあっても、そこは見なかったことにしてほしいですね。そういうのもまた楽しい訳だから。
『ナイトライダー愛』の深さでは、他の追随を許さないお二人。本作にあれやこれやとツッコミながらも、その顔が常に笑顔。好きだからこそいろいろ語りたい!という気持ちがひしひしと伝わってきました!