『ナイトライダー ネクスト』KITT役・野島昭生さん&壷井正監督 スペシャル対談(後編)

現在フジテレビで放送中の『ナイトライダー ネクスト』。野島昭生さん(KITT)と演出の壷井監督の対談(前編)を掲載してから約一か月...。大変お待たせいたしました! いよいよ後編です。

後編では、アフレコ現場の話からスタート。声優という仕事について、そして『ナイトライダー』について...と、今回も二人のトークは止まりません!

※最後の最後でお二人から大サービス(!?)のネタばれあり。ご注意ください。

■『ネクスト』のアフレコ現場は笑いっぱなし!?

壺井:マイケル役の丹沢(晃之)くんが初めての主役ということもあって、それなりに緊張しているんだよね。だからみんなで丹沢くんをいじってる。いじりまくってるの。...丹沢くんを早く痩せさせて、もっと小さい身体にしてあげないと、ってね。身が細る思いをさせてやろうって(笑)でもダメだ。「ドスコイ」って芸風が(笑)

――丹沢さんにツッコミをかける際のトップバッターは野島さんですか?

野島:俺じゃないよ! 俺は何もいわない。ただセリフでつっこむだけ(笑)。テストのときに台本にないことをさらっと言うから、丹沢くんがおたおたしちゃうの。

壺井:緊張させないようにしないとね。人によってはテストのときは散々ふざけているけど、本番になったら気を入れなおして、って空気を作る現場もあるけど、「本番です!」って声かけてまた緊張させてどうするのよ、と僕は思うわけ。テストなんだか本番なんだかわからないくらい笑いの絶えない現場にしていますね。

野島:こっちが楽しくなかったら、視聴者も楽しくないだろうしね。

壺井:新しく現場に入った方によくあることなんだけど、緊張していると一生懸命セリフを"言おう、間違えずに言おう"となっちゃうの。するとセリフがそこだけ"浮く"んだよね。決められた言葉を言うのは当たり前で、その言葉をどう"活きた言葉"にするか、それをしてもらうためにあなたをこの現場に呼んだのだからリラックスしてもらいたい訳。だから、レギュラーメンバーは緊張しないように気を配ってるのよ。

――野島さんのアドリブといえば、サラ役の加納千秋さんが「野島さんがリハーサル中に『私もハグしてください』ってアドリブを入れてきた! という話をご自身のブログでされていたんですが。

壺井:うん。「私も」って言ったんだよね。

野島:KARRとの闘いのときね。無事倒してゾーイとビリーが「よかったよかった」ってハグし合ってて、マイケルとサラもハグし合ってて。楽しい雰囲気の中、俺(KITT)だけ置いてきぼり? って思ったの。映像では何も言ってなくてヒューンヒューンってライトだけ動いてるの。だからそのタイミングで「私もハグしてください」って入れちゃった(笑)。

壺井:これが日本語版だけで、何をやってもいいって話だったら使ったんだけれど、「日本語版だけセリフが入ってるじゃないの!」って必ず本国から突っ込みが入るんだよね。

――では、当然本番では使えないと。

壺井:使えないのよ。難しいところだね。野島さんは、結構アドリブを言うんですよ(笑)

野島:テストのときにね(笑)。KITTの気持ちになるとここでこう言いたくなる、ってことがよくあるんだよ。

壺井:でも、ここでそれを言ったらやりすぎかなって思うこともあって。

野島:壺井さんとは長い付き合いだから、壺井さんが「抑えて」と言わなくてもそのあたりはわかっていて、本番ではちゃんとやってますよ。

壺井:でもそれがすごーく寂しいの(笑)。「さっきのテストのアドリブを活かしちゃおうか」って気持ちになるのよ。これが本来の形だってわかっているんだけど、テストのときがおもしろすぎるのよ! サブチャンネルとかがあれば録っておくんだけどね。

――DVDの特典映像などで収録してほしいですね。NG集のようなものとか。

壺井:残念ながら録ってないんだよね。でもNGはいっぱいあったよ! よくNG集的番組があるけど、あれは僕に言わせたら単に言い間違えただけ。本当のNGというのは、間違えてることに気が付かず、本人が堂々と言っていることかな。みんながおいおい、と思っているのに、本人だけは全くわかってないってパターン。このほうがもっとおもしろいよ。あと、マイクのスタンドが何もしてないのにじわじわと下がっていっちゃうこととか。緊張しているからそういうちょっとしたことがどっと受けちゃう。

野島:KITTだっていっぱいありますよ。人間なら"言葉尻を飲みこむ"ような表現があるけど、KITTってコンピューターだからどんな言葉でもニュアンスを出しながらも最後まできちっと言わないといけないんですよ。

壺井:きっちりしゃべっている中に"ちょっとだけ"感情のニュアンスを入れるんだけど、これ、なかなかしゃべれないのよ。さらにKITTは機械だから「音の出」は均一でないとならないしね。KITTのしゃべり方は本国では"モノトーンガイ"と呼ばれているんだけど、それは無感情とかでなく音の一定さを表現してるんだよ。

■声の仕事だからこその"特殊な環境"

壺井:アフレコのときってヘッドフォンをしているじゃない? コレが結構トチリやすいんですよ。人間は何故しゃべることができるか、というと自分の声を自分の外耳で聞いているからなんです。ところがヘッドフォンで耳を押さえられると自分の声を内耳で聞くことになる。さらにヘッドフォンから違う音が聞こえてくるから、自分の声を自分で聞くこと、理解することができない。だから噛んだりトチったりするのは当たり前なんです。

野島:誰かが間違えると、「そりゃ言えないよなー。俺だって言えないわ」ってみんなで笑うの。

壺井:また、セリフにカタカナが多いの! これも間違える原因の一つ。漢字は見た目で意味が入ってくるから脳が理解できるんだけど、カタカナって一字一字を自分の脳みそで構成して理解して音にしなきゃならないからね。

――NAVIでこれまでに取材した他の声優さんからも「カタカナは難しい」という話をよく聞きますね。

野島:俺の場合は、カタカナの横にあえてひらがなを書いてるよ。不思議とカタカナよりひらがなのほうが読みやすいしパッとみたときに理解しやすいんだよ。みんないろいろやってるよ。人によってはカタカナを漢字になおしちゃう人もいるからね。

壺井:漢字にカナをふってる人もいる。漢字は音読みと訓読みがあるから。パッと急いで確認しなきゃならないときに迷ってるヒマはないからね。

野島:例えば「来」って字。これって「こ」「く」「き」「らい」って読み方があるでしょ? アフレコのときは目に入ってきた瞬間に判断して読まないとならない。間違えるわけにはいかないから読み仮名をふるんだよね。これは人それぞれ。人によっては企業秘密もあるだろうけどね。

壺井:そういえば、昔、面白い話があったなあ。声優さんがお見合いをすることになって、自分の仕事を説明するために台本を持参していったんだけど、漢字に全部読み仮名を書いていたので、「この人は漢字も読めないのか?」って誤解されたって(笑)

■改めて・・・『ナイトライダーネクスト』への想い

壺井:今、いちばん寂しいなって思うのが、この収録が来週で終わりなんだけど、もう俺たちが生きているうちにこの仕事ができないってことなんだ。

野島:うん。俺もそれ、思ったよ。だからこれが本当に最後だなって感じている。

壺井:『ネクスト』の収録ができて嬉しかった反面、全17話じゃない? なんだかあっけなくてねぇ。なんだかね、前作が「終わった!」って思った後に『ネクスト』が出てきて・・・まるで一度逃げた女が戻ってきちゃったような気分だよ(笑)

野島:(爆笑)その女が(全17話だから)またすぐいなくなっちゃうんだよ!

壺井:アイツなんで戻ってきたんだよ! で、なんでまたすぐ出ていっちゃうんだよ!

野島:何しに戻ってきたんだよー人を喜ばせておいて...ってね(笑)

壺井:『ネクスト』の収録が始まったときは、「はい、マイケル」ってセリフで「ああ、戻ってきたんだ!」って感じたんだけど、来週は...KITTのセリフが最後だからね。

野島:ええ? 俺、それ知らない。まだ台本見てないんだ。

壺井:最後はマイケルじゃなくてKITTがシメるんだよ。いいセリフかクサいセリフかは知らないけどね。

野島:...あまり力を入れないでサラっとやりますよ(笑)。