飲んだくれ親父とその子供たちの破天荒な日常を描いたドラマ『シェイムレス 俺たちに恥はない』。これまでにないファミリー・ドラマの形を提示した本作は、その絶妙な日本語吹き替えも大きな見どころとなっている。そこでフランク役の梅津秀行さん、フィオナ役の坂本真綾さん、シーラ役の幸田直子さんによる日本語版『シェイムレス』のファミリー鼎談が実現! ドラマさながらの絶妙なチームワークを見せる3人がドラマの魅力を大いに語る!
―― ファミリー・ドラマというと普通はほっこり感動路線が定番な中、『シェイムレス』はかなり変わった位置付けにあると思うんですが、最初にこのドラマを見た時みなさんはどう感じました?
坂本 どうですか?
梅津 まずはビックリだよね~(笑)。だけど結構1話、1話おぉっと思わせるところがあるんだよね。あの子どもたちは泣ける! 一番健気。
幸田 真綾ちゃんそのままだよね。
坂本 あんなにしっかりはしてないと思うんですけど…(笑)
梅津 いやいや、普段見られない真綾が見られるからね、このドラマは。
―― 確かに役柄としてもかなり大胆なキャラクターですよね。
坂本 そうですね。始まる前に演出の方から「ぜひやって欲しい役があるんですけど、ちょっと過激なんですが…大丈夫ですかね?」って前フリがあったんですよね(笑)。だからどんな作品なんだろうって気になってドキドキしてたんですけど、心構えができてたせいか大丈夫でした(笑)。確かにちょっとエグい話とか下ネタとかたくさん出てくるんですけど、嫌悪感は全くなかったんですよね。女性から見ても嫌な気持ちになるような事は全くなくて、結構悲惨な事もなぜか笑えてしまう方向に話を持っていくので、あの家族のたくましさに励まされて、1話からすぐ好きになっちゃいましたね。この作品のファンになってしまったんです。
梅津 うんうん…(と真顔で頷きつつ)目、おっきいね~。
全員 爆笑
梅津 いや、まじまじと見るの初めてだからさ~。だっていつもは前(モニター)を見ているから!
―― 確かにいつもは映像を見てますもんね。でも実際フィオナを演じているエイミー・ロッサムも目が大きいし、どこか共通点がありますよね(笑)というか、今回みなさんにお会いして、みんなどことなくキャラクターに通じる雰囲気があるように思うんですが…。
幸田 第2シーズンを収録していて思ったんですけど、向こうの役者さんとこちらで吹き替えを担当している人の本質がすっごく合ってるな、って感じるんですよ。表面的なものではなく、核となる部分が。それを分かっててキャスティングされたのかなって考えると、ちょっと空恐ろしいんですけど(笑)
―― とはいえ梅津さんの場合は通じる部分が間違っちゃうと、とんでもない方向に行っちゃいそうですが(笑)
幸田 でも梅ちゃんはホントに人が好いんですよ。フランクみたいにフラフラしてはいないんだけど、人の好さという本質がすごく似てるんですよね。だからトチっても全然怒れないんです。ね、真綾ちゃん?
坂本 はい(笑)
幸田 トチると普通「あっ…」ってなるんだけど、梅ちゃんがトチるとみんな笑っちゃうという。
梅津 こういう作品だからじゃないの?
幸田 いや、そうじゃない、そうじゃない。これは梅ちゃんの本質だと思う。
―― みなさんはご自身で演じるキャラクターとの共通点はどこだと思うんでしょう?
梅津 やっぱいい加減なとこかな~。
坂本 そうは言うけど梅さんはめちゃくちゃ繊細だから(笑)
梅津 本質はそうかもしれないけどね(笑)
―― そうやって分かってるところがまたギャラガー家って感じですね(笑)
梅津 もう家族かもしれないね(笑) でも確かにやりやすいっちゃやりやすいんだよね、フランクは。尚ちゃんも言ってたけど、よく本質を見抜いたな、って思う。やー、オーディションってすごいね。あんな短い時間で、フっと振り向くと後ろでみんな笑ってるんだけど、そういうとこ、見てるんだな~って。
幸田 たぶん、普段の姿も見てるんでしょうね。
坂本 このドラマってフランクの事を愛せないと見ていてツライじゃないですか。ダメな親父って思ってもどこか可愛いところがあるというか、梅津さんも演じててその愛嬌のある部分をいっぱい投げてきてくれるので、幸田さんが言ったように本質という部分で共通するものがあるのかなって思いますね。何をしても嫌だって思わない。
幸田 本当に憎めない(笑)
―― ちなみに幸田さんはシーラはなぜあんなにフランクが好きなんだと思います?
幸田 まぁ趣味に合ったというか(笑)。それにエディに対する嫌悪感が強くて、彼に比べるとフランクはすごく自由に見えて、彼女の心の隙間にフっと入り込まれたって感じがしますね。彼女は家に閉じこもっているから余計に一人の男にのめり込んでしまうんでしょうね。
―― でもフランクはフランクで、あんなダメ男だけど結構モテますよね?
梅津 なんだかね~。え、誰がいたっけ? って人がいっぱいいますよね。
幸田 それは自分と重なるの?
梅津 う~ん、ま、若い時はね(笑)
―― でもフランクはなんであんなにモテるんでしょうね。
梅津 あんなにしわくちゃな顔なのにね。
幸田 甘え上手なんですよ、彼は。
坂本 きっと嘘でも何でもその時に女性が欲しい言葉を言ってくれちゃうんですよね、フランクは。女性もそれが長くは続かないって分かってても、その瞬間は癒されちゃう感じがあるんでしょうね。彼も結構上手にその場は取り繕うじゃないですか(笑) シーラが本当に弱っている時に彼がそばで励ましているセリフを聞いてたら、「こんなフランクだけど、とにかくシーラさんの傍にいてくれて良かった」って思ちゃって(笑)。そういう誰も永遠は求めてないんだろうけど、その時その瞬間はきっと幸せな気持ちにしてくれるんだろうなって思いますね。
―― 逆にフィオナからすると困ったお父さんですよね?
坂本 そうなんですけど、どこか基本的に受け入れている感じがあるから、そこはやっぱり家族なんだなぁと思いますね。どんなにダメな父親でも家族には違いないというか。このドラマって結局最後は「家族だからしょうがない」ってところに落ち着くんですよね。第2シーズンでも話が進むに連れてええっ!!って思う事がたくさん起こるんですけど、それでもやっぱり家族だから、切っても切れない縁があるんですよね。子どもたちが父親を家から追い出しても何かあれば結局助けるし、フランクにとっても何かあった時に帰る場所になってると思うし。フィオナが完全に縁を切ってないところが救いにもなってるんだと思いますね。
梅津 こっちはひょいっと勝手に帰ってきちゃうんだけどね(笑)
坂本 そうなんですよ。でもフィオナも時々フランクを慰めたりして、あれだけ破天荒な生活をしてても、絶対に切れない何かがギャラガー一家にはあるんですよね。
幸田 健気だよね、フィオナは。
坂本 本当に、第2シーズンでは本当にいろんな事が起こるんですけど、ここまでされてもフィオナは大丈夫なんだ、って驚きます。健気すぎてちょっと怖いくらい(笑)
―― このドラマってかなり際どいバランスで成り立っていると思うんですけど、そうとう脚本も練りこまれてますよね。
幸田 毎回必ず大きなテーマがあって、そこにさらにいろんなハプニングが盛り込まれて同時進行してるんですけど、実はその大テーマに向かって物語はきちんと進行していて、最後にこういうテーマだったんだ、って分かるんですよね。
梅津 どんなにひどい事があってもね(笑)
本物の家族のようなトークはまだまだ続く…続きは<後編>で!
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出演:ウィリアム・H・メイシー(フランク/梅津秀行)
エミー・ロッサム(フィオナ/坂本真綾)
ジェレミー・アレン・ホワイト(リップ/増田裕生)
キャメロン・モナハン(イアン/成家義哉)
エマ・ケニー(デビー/山根舞)
イーサン・カトスキー(カール/ふしだ里穂)
ジャスティン・チャットウィン(スティーヴ/川田紳司)
ジョーン・キューザック(シーラ/幸田直子)
ローラ・ウィギンス(カレン/嶋村侑)
シャノーラ・ハンプトン(ヴェロニカ/林りんこ)
スティーヴ・ハウイー(ケヴィン/中谷一博)
Photo: (c) Warner Bros. Entertainment Inc.