"『スター・トレック:イントゥ・ダークネス』を死ぬ前に見たい"という願いを叶えてもらった末期がん患者が亡くなる

スター・トレック:イントゥ・ダークネス映画『スター・トレック:イントゥ・ダークネス』の全米公開(5月17日)までに命がもたないかもしれない末期がん患者の望みにこたえ、粗編集版を見せてあげたJ・J・エイブラムス。最後の望みを叶えた患者、ダニエル・クラフトさんは米国時間1月4日(金)の夜、がんによる合併症で亡くなった。

ニューヨークに住むダニエルさんが末期がんと診断されたのは6週間前のこと。それ以来、残された時間を幸せに過ごしてもらおうと、家族や友人は尽力していた。クリスマスの日に、「スター・トレックのファンである本人のために、すでに公開されている映画冒頭9分間のフッテージを見せてあげることはできないでしょうか」と、掲示板で友人が呼びかけたところ、ネットを介して情報はまたたく間に伝わり、エイブラムスやパラマウントの目に止まることに。ダニエルさん宅の留守電に、エイブラムスと脚本家のひとりデイモン・リンデロフからのメッセージが残っていたのは、掲示板の書き込みからわずか一日ほどのことだった。

翌日には、冒頭9分どころか、なんと映画全編の粗編集版を収録したDVDが、パラマウント関係者の手で本人宅に届けられることに。体力を温存するため前日からそなえていたダニエルさんは、守秘義務を記した同意書にサインしたあと、夫人が用意したポップコーンを手に、念願の映画鑑賞を心ゆくまで楽しんだ。その後まもなく、病院に移されて息を引き取ったという。

Hollywood Reporterが伝えたところによると、映画ファンだったダニエルさんは、MTV局のデータ部門に勤めるかたわら、ニューヨーク・アジア映画祭の設立者のひとりとして、ジェット・リーやジャッキー・チェンなどのアジア人俳優をアメリカに知らしめることに貢献。また本人も、中国のTVシリーズ数本で悪人を演じるほか、映画『キル・ビルVol.1』ではエキストラとして出演したこともあった。「長年にわたり映画のために尽くした彼は、最後に映画から恩返しをしてもらった」と友人は語っている。

また、Deadline.comによると、日曜日にコメントを求められたJ・J・エイブラムスは、ダニエルさんの件を宣伝に用いる気はなかったらしく「とてもセンシティブな話題だ」と話しにくそうにしていたが、死を目前にしたファンの熱意に強く心を打たれ、最後の望みを叶えてあげることの責任の重さを痛感していたという。

ダニエルさん自身も"心温まる美談"として注目を浴びるのは本意ではなかったようだが、それでも、秘密厳守の体勢を押し切って即時に対応したエイブラムスをはじめとする映画関係者の心意気や、ダニエルさんの願いを迅速に届けたネットコミュニティの力は大きな反響を呼んでいるところだ。(海外ドラマNAVI)

Photo:『スター・トレック イントゥ・ダークネス』
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