『ボディ・オブ・プルーフ』ダナ・デラニー(ミーガン・ハント役)ロングインタビュー

全米で大ヒットのクライム・ミステリードラマ『ボディ・オブ・プルーフ 死体の証言』で、主人公の検視官ミーガン・ハントを演じるダナ・デラニー。大ヒットドラマ『チャイナ・ビーチ』、『デスパレートな妻たち』などを経て、『ボディ・オブ・プルーフ』という作品に出会ったダナが今何を想い、ミーガン・ハントという役に打ち込んでいるのか。一人の役者が一つの作品にかける真摯な姿勢が伝わるロング・インタビューです。

――この新しいクライム・ドラマ『ボディ・オブ・プルーフ/死体の証言』を演じるようになったきっかけは何ですか?

このドラマの検死官ミーガン・ハント役はまったく思いがけないオファーだったの。私は『デスパレートな妻たち』のキャサリン・メイフェア役にとても満足していたんだけれど、ABC局から電話があって、「妻たちでの君の演技はすごくいいんだが、あの役はあまり長続きしそうにないんだ」っていうのよ。それからこう来たの「そこで、君には別の番組を考えてもらえないかな」。私は、もうあがいても無駄だなと思って、だったら何か新しいことやろうじゃないのと決めたわけ。

 

――『デスパレートな妻たち』を数年間やってきた後で、主役を張るというのはどんな気分ですか?

そりゃあ面白いけれど、自分の仕事がぐっと増えたわ。『デスパレートな妻たち』をやめた時、ここではキャラクターが大勢いてストーリーが枝分かれしているから自分の出番はあまりないとわかってた。『ボディ・オブ・プルーフ』は違うの。私が主役なのよ。仕事は多いけれどこのドラマは大好き。こんなチャンスが舞い込んですごくうれしいわ。それにキャストも楽しい人たちだし、うまくいってるわ。

 

――『デスパレートな妻たち』の製作総指揮マーク・チェリーは、あなたがやめるといった時、どんな反応でしたか?

マークはよく理解してくれたわ。最初からこう言ったの「君が主役のドラマを始める邪魔はしたくない」。あの日のセットの様子は今もはっきり覚えてる。私のキャラクターはジュリー・ベンズ演じるロビン・ギャラガーと付き合っていて、私が彼女にこう言うシーンだった「私は一人きりになったことがないの。付き合う相手があっての自分だったのよ。だから今度こそ独り立ちしたい。悪いけど、お別れよ」。そしてロビンが去っていくシーンだったわけ。でも、私がマークにやめると告げたことで全然違うシーンになった。マークはオフィスに戻ってシーンを書き直し、ロビンと私がパリに行く設定にしたのよ。とても素早い変更で、その日のうちだった。

 

――『デスパレートな妻たち』の楽しい衣装がなつかしいですか?

実は『ボディ・オブ・プルーフ』の衣装のほうがいいのよ!靴がすごくいいものなの。『デスパレートな妻たち』では女優が多くて6人もいるから、デザイナーはそれぞれまったく異なる衣装を着せなきゃならない。私はヴィンテージ物をよく着たわ。それが私の持ち味だったから。でも今は、プラダとかドルチェ&ガッバーナとか着るのよ。『デスパレートな妻たち』ではマーシャ・クロスがドルチェ&ガッバーナだったけど、今度は私の番ね。

 

――『デスパレートな妻たち』を去るのは悲しかったですか?

とっても悲しかったわ。あのドラマはすごく楽しかったもの。でも『ボディ・オブ・プルーフ』はいい気分転換ね。まったく違う役だし、どのシーンでも週5日仕事をしてるの。それにこのドラマはトーンが全然違うのよ。『デスパレートな妻たち』では何をやっても大丈夫だけれど、『ボディ・オブ・プルーフ』はもう少しリアルで、実社会に近いドラマね。

 

――『デスパレートな妻たち』の共演者たちはあなたが去る決心をしたことを支援してくれましたか?

みんな素晴らしい共演者で素敵な人たちよ。『デスパレートな妻たち』をやめた時は涙、涙だったの。みんな泣いてくれて、最後の日はセットを去るのが本当に悲しかった。あのドラマはとても楽しかったし、今でもマーシャ・クロスやみんなに会ってるわ。みんなとの連絡を絶やさないつもりよ。

――『ボディ・オブ・プルーフ』を始める前、あなたは私生活とキャリアのバランスを取ろうとしていたわけですが、今では一層忙しくなってしまいましたね。どうしたんでしょうか?

断るのがあまりに惜しいオファーだったのよ。そんなオファーが来たら、チャンスを掴まなくちゃ。掴んでよかったわ。私は女優業が大好きだし、この役も大好き。だからぴったりだったのよ。

 

――この役を引き受けたことで私生活で何か諦めたことはありますか?

ヨガのクラス、ルームランナー、それに友達と会うこと。シーズン1はロードアイランド州で撮影したんだけれど、セットが家族的な雰囲気になってとてもよかったわ。キャストとクルーが共に過ごす環境だったので、いつも一緒だった。映画に行ったり、週末は毎週一緒に食事したり、とっても楽しかった。大好きな仕事仲間ね。

 

――『ボディ・オブ・プルーフ』であなたが演じるのはどんなキャラクターですか?

私が演じるのはミーガン・ハント医師で、検死官なの。とても有能な脳神経外科医だったんだけれど、交通事故で人生が一変し、手術ができなくなってしまったのよ。

 

――元有能な脳神経外科医で検死官という役に対し、どんな下調べをしましたか?

この役を研究するために多くの検死解剖を見学し、様々な検死官に話を聞いたわ。でも大事な点は、ミーガン・ハントは最初から検死官だったわけではないから、少し変わってるということ。脳神経外科医だったので、違う分野から検死官になったわけ。尊大で任務に燃えるタイプで、頭脳明晰、ものすごく勝気だった。それが事故で人生が一変し、以前とは違う心構えで新しい職場にやって来たのよ。

 

――役の下調べで実際に脳神経外科医に会ってみましたか?

初めて検死解剖に行った時、ある女性の脳神経外科医とディナーに行ったの。検死解剖は本当に興味深いものだったわ。彼女は私に会うのをすごく不安がっていたそうよ。テレビドラマの女性医師の描き方が嫌だったのね。だから私は興味津々だった。レストランに入ってきた彼女は『ボディ・オブ・プルーフ』のパイロット版で私が着たのとまったく同じ服を着ていたのよ、偶然にね。

 

――彼女は『ボディ・オブ・プルーフ』のことをどう思っていました?

このドラマは現実そのままだって言ったわ。私の年で女性の脳神経外科医なんてまずいないからだって。仕事以外に私生活は持てないということが、このドラマの私のキャラクターから感じられるからだって言うの。彼女は脳神経外科医志望だったためにどこの医学部にも入学できなかったそうよ。こう言われ続けたそうなの「でもあなたはいずれ結婚して子供が欲しくなるでしょう?そうなるとやり通せない仕事なんです。だからあなたを受け入れるわけにはいきません」。それでもついに1人の男性が推薦状を書いてくれたそうよ、最初からこう断って「OK、彼女は頭脳明晰で、試験はすべて合格しました。ただ言っておきますが、彼女は女性です」

――あなたとドラマのキャラクターはどのような点で似ていますか?

ミーガンとはいろんな点で似ているわ。このドラマの撮影開始直前に私も交通事故にあったの。『ボディ・オブ・プルーフ』と同じでしょ。私はバスにぶつけられて脳震とうを起こし、指2本骨折したの。ドラマで私がよく指をこすってるのは、事故当時の感覚を取り戻そうとしてるからよ。

 

――他にもミーガン・ハントに共感できるところはありますか?

任務に燃えるタイプで仕事中心なところね。私は生涯女優を続けたいわ。実際、私の人生は女優一筋だったし、結婚もしたことがない。バランスを取るのは本当に難しいの。だからその点、キャラクターに大いに共感できるわ。毎晩、撮影が終わって家に帰る頃には疲れきってる。

 

――ドラマのキャラクターはとても強い女性ですが、人々が温かみを感じるような優しさを出すにはどうしていますか?

ドラマが進むにつれて彼女の優しさが現れてくるわ。パイロット版でタフに描かれていてよかった。視聴者が「うわぁ、こんな女性、どうかなぁ」と思うのはいいことだと思うの。勝気で、いつだって自分が正しいというタイプねと思われていても、回を重ねるにつれ、もっとバランスが取れた女性になるわ。失敗もする。彼女は素晴らしく科学的頭脳を持っているけれど、私生活では本当に未熟なのよ。

 

――ミーガンにロマンスは訪れますか?同僚のピーター・ダンロップ(ニック・ビショップ)とか?

そうはならないと思うわ。ロマンスは過去のものなの。私は男女関係は、文字通り、友達のままにしておきたい。私の実生活でも親友は男性だから、とてもよく理解できるのよ。ニックが演じるキャラクターは私の良心だと感じてる。彼だけがミーガンに真実を言えるわけ。とてもいい関係ね。

 

――ミーガンは勝気ですが、よく泣きますよね・・・

シーズン前半は毎回泣いてたわ。それでついにプロデューサーに言ったの「こんなのもうやめて。こんなに毎回泣いてたんじゃ、もういい加減にしろって思われるわ」。でも、ミーガンの殻がひび割れていく過程だから、それを見せる必要があったわけ。シーズンが進むにつれ、自分も人間なんだと悟り始めるのよ。

 

――「ボディ・オブ・プルーフ」は他の多くの犯罪科学ドラマとどう違いますか?

ドラマを見る人はあれこれ比べては「ああ、これって何々と似てるね」と言うものなの。一定のものさしがほしいのね。このドラマは三重になっていて、まず毎週ミステリーがある。これは欠かせない。毎週死体が上がって、被害者の死因が興味深いミステリーなの。2つ目は職場の人間関係。ユーモアたっぷりで楽しくて、粋で面白い。それとファミリードラマの面ね。離婚した夫と娘、私の母親との関係。徐々に他のキャラクターの私生活も紹介されるから、よくある犯罪科学ドラマよりはるかに人間の内面を見るストーリーになってるわ。

 

――あなたのキャラクターの娘と母親に対する関係はどんなものですか?

女が三世代で、3人とも強いからいつもお互いに突っかかるのよ。脚本家が私の意見を取り入れてくれるのがうれしいわ。私の母も強いから、どんな関係かよくわかる。私の意見が脚本に反映されて、キャラクターがより身近になったわ。それと娘役のメアリー・マウサーとのシーンも気に入っていて、ドラマの中でも大好きなシーンよ。

 

――これは第2のチャンスのドラマですね。あなたのキャラクターは娘とキャリアについてやり直すチャンスを与えられるわけです。あなた自身は第2のチャンスを信じますか?

私はやり直しはできると大いに信じているわ。誰もが第2のチャンスを与えられるべきだと思う。第2と言わず、第3、第4のチャンスもね。人間は進化し変わることができるし、その余地があると思うわ。

 

――欠点のある強い女性を演じるのは楽しいですか?

欠点のことを聞いてくれてうれしいわ、だってこのドラマの気に入ってる点だもの。パイロット版でミーガンがタフで意志の強い女性として描かれているのはいいことなの。このあと別の面が出てくるから。ミーガンは挫折したり打ちのめされたりして、人間味を取り戻さなければならないの。今後12回で徐々に進化していくはずよ。そこがテレビドラマの面白さ。キャラクターが成長し続けるのよ。

 

――ミーガンの成長に、あなたの意見はどのくらい反映されているんですか?

脚本家はとても協力的で感謝してるわ。私はこの役の医科学的な面はわからないので脚本家に任せてる。でも人間性の面では私も多少理解があるし、脚本家も耳を傾けてくれるわ。これまで多数のドラマを演じてきて言えることは、どんな主役であれ、ドラマのトーンを決めるのは主役だということ。私は最初から、みんなに関わってもらいたかった。キャスト全員のコラボレーションにしたかったの。だから全員でユニットとして仕事をし、全員がなんらかの意見を言う。みんなで協力してよりいいドラマにしていくの。

 

――あなたは「チャイナ・ビーチ」 の頃から変わりましたか?

年を取ったわね。今は「チャイナ・ビーチ」の頃ほど長時間仕事できない。あの頃は「わー!もっとやらせて。48時間仕事しましょうよ」って感じだったけれど、今は「今日はここまで。私生活はどうなるの?」

 

――でも『ボディ・オブ・プルーフ』のキャラクターに共感しているように見えますが?あの任務に燃えるタイプで私生活など忘れてしまいがちなところが...

もちろんよ。私も仕事は大好きだし、文句なんか言ってないわ。この世で演技ほど好きなことないわ。でもバランスが大事。最近はヨガのクラスに行ったり読書する時間があればなぁと思うだけ。それが私にとって理想の休日。それだけよ。

 

――『ボディ・オブ・プルーフ』の検死官役を引き受けるにあたり、一番難しかったことは何ですか?

私にとって一番難しかったのは医学専門用語ね。セリフをかなり速いスピードで、しかも熟知しているように言わなくちゃならないのよ。大変だけれど、インターネットってありがたいわね。俳優生活が一変したわ。以前、医師役をした時にはテーバー医学辞書と首っ引きでいろんな用語を調べたものよ。今ではスマートフォンやタブレットに単語を入力するだけで瞬時に情報を得られる、写真や説明や正しい発音まで一緒にね。だから今のほうがよく準備できるわ。

 

――『ボディ・オブ・プルーフ』は他の多くの犯罪科学ドラマとどう違いますか?

私の役はどのエピソードでも死体に執着するという点でまったく異なるキャラクターなの。おそらく死体に執着しすぎるのね。普通の検死官はそうじゃない。そこがこのドラマに違うペースを与えているんだと思うし、面白いのよ。一度、行方不明の子供が生存しているというエピソードがあったんだけれど、そうするとドラマの本質が変わってしまった。子供の搜索が主体になり、いつもより早く解決してしまったから。これはそういうドラマじゃないから、私には腑に落ちなかった。私は、すでに死体があり、それをじっくり調べることですべてを暴いていくというドラマだから気に入ってるの。

 

――ミーガン・ハント医師というキャラクターをどう見ていますか?

ミーガンは霊魂を冥界に運ぶ役目、ギリシャ神話でいうカロンだと考えているわ。死者の霊を船に乗せて三途の川を渡る渡し守。その役目は死者に審判を下すのではなく、安全に運んであげること。私はミーガンは死者にとってそういう存在だと考えてるの。黄泉の国へ運んであげることができれば、彼女の仕事は終わる。安全に運び終えるまでは絶対に終わりにしないのよ。だから毎回最後に死体にさようならを言うわけ。死者たちはミーガンがすべてを暴くまで葬られないのよ。

 

――ハント医師があんなに仕事熱心なのはそのためですか?単なる検死官ではなく、警察の仕事の範疇までやっていますよね。

その通り。彼女は死者の生前には興味がないの。でも死体には十二分な敬意を払う。自分の仕事を目の前にして「これは単なる死体じゃない、人間なのよ。ちゃんと生きてきた人だから、死の際も尊厳が与えられるべきだ」と思うの。

 

――このドラマで死体を演じる俳優に感心しますか?

そりゃあそうよ。素晴らしい仕事をしてるわ。何しろ簡単じゃないのよ。メイクのまま何時間もじっとして、息もしていないふりをしなければならないんだもの。その上、硬直状態の演技をしなくちゃならない。私たちがあちこちつつき回すわけだから大変よ。

 

――こういうシリアスなドラマだと、長時間セットで仕事した後で日常に戻るのは難しいですか?

禅の修行に「死ぬ前に死を練習する」というのがあるの。本当に解放されるわよ。人間はみんな、もっと死といい関係を作ったほうがいいと思うわ。

 

――あなたはこのドラマを始めてから、それほど死を恐れなくなりましたか?

変な話だけれど私はなぜか、以前から死といい関係を持っているみたい。死ぬのが怖いと思ったことは一度もない。検死解剖をたくさん見てきた今でも、死については大丈夫。穏やかな気持ち。「分かった。死ぬとこうなるのね」って感じ。これは検死官という仕事の利点だと思う。俳優という仕事の素晴らしい点の1つは、役を研究して違う職業のことを学べること。この役についていろいろ研究したし、検死官がどういう仕事をするのか知ることができて光栄だわ。私の目を開かせてくれた。

 

――検死解剖を初めて見た時は不安でしたか?

初めて検死解剖を見るとなると、みんなが前もって忠告してくれるのよ。「何か先に食べておくこと。ヒールのない靴を履くこと。気を失いそうになっても恥ずかしがらないで静かに座ること」。私はこの役が来るまで死体を見たことは一度もなかったけれど、検死官は死体に深い敬意を払い、畏敬の念を持って接していたわ。皆さん、とても真剣に仕事をされていたわ。

 

――検死解剖を見て一番難しかった点は何ですか?

死者の目がこっちを見てることね。でも検死官が顔を剥いだ時点で死体となってしまう。奇妙な経験だけれど、興味深かったわ。4回目の検死解剖になると私にも少し参加させてくれて、私も切開したのよ。プロセスすべてに目を見張ったわ。死体を切開して内部を見たとたん、驚愕よ。

 

――検死解剖を見て、一度でも気を失いそうになりましたか?

すべてが本当に興味深かった。検死解剖を見学できたのは光栄なことなの。誰もが経験できることじゃないから。見学させてもらえたことに心から感謝してる。考え方が一変するような経験だったわ。

 

――その経験から何か他にも得ることはありましたか?

深い畏敬の念を覚えたことね。切開したとたん、私たち人間の体というのは、一人ひとりに与えられた奇跡の贈り物だとわかる。このドラマがそのことを正しく伝えているということに、私はとても満足だわ。だってそう考えると、死体は証言だというのは本当だからよ。検死して体内を開き、あらゆる臓器を見ると、その人がどんなふうに生きてきたか手に取るようにわかるの、どんなふうに死んだかもね。実感できるのよ「自分は完璧に作動する機械という贈り物を与えられている、そしてそれを作動させ続けるのは自分の仕事なんだ」ということが。私の人生観を変えてくれたわ。

 

――どんなふうに変えてくれましたか?

自分の機械を大事に手入れしたい。調子よく動くようにしておくのは自分の責任なの。そのためなら何でもするつもりよ。

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Photo:『ボディ・オブ・プルーフ 死体の証言』
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