【リアルSMASH】ブロードウェイで戦う日本人女優から観た『SMASH/スマッシュ』とは!?<石村友見さん編>

20130409_c01.jpg「特集 どうしてもつかみたい夢がそこにある ドラマ『SMASH/スマッシュ』に迫る!」の関連企画、現在ニューヨーク・ブロードウェイで活躍する日本人への突撃インタビュー後編です!

劇団四季でキャリアを積んだあと、ブロードウェイの舞台を目指してニューヨークにわたり、昨年『Miss Saigon』のミス・チャイナタウン役を獲得した女優、ダンサーの石村友見さん。ニューヨークを拠点に活動する彼女に、ミュージカルの舞台裏や『SMASH/スマッシュ』ついてうかがいました。

----どうしてこの世界に入ったのですか?

高校2年生のときに、青年団のワークショップに参加したのがきっかけで、青山円形劇場でやった『転校生』という芝居で舞台デビューしました。平田オリザさんの精密な台本や演出に触れられてとても勉強になりましたね。でも、もともとやりたかったのはミュージカルだったので、劇団四季に入りました。高校のときからすでにクラシックバレエやイタリア歌曲の声楽も学んでいましたが、そこでダンスや歌のトレーニングを受けた後、『ライオンキング』でサラビ女王役を演じました。劇団四季にとどまるという選択肢もありましたが、大学のときに観光ビザで来たニューヨークでダンススクールに通った経験が強烈で、本場でダンスと歌の勉強がしたいと思うようになり、2005年の春にニューヨークに来ました。

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----アメリカのミュージカルには、どうやってアプローチしたのですか?

まず歌の先生を探すことから始めましたが、これが難しかったです。同業者にきいてもすんなりと教えてくれません。ライバルには、いい先生を紹介してもらえないものです。時間をかけていい先生にめぐり会っても、ある程度学ぶとまた他の先生を探さなければならない。ミュージカルによって選択する楽曲が違うので、そのジャンルに合った先生に学ぶためです。オーディションでは、18~32小節しか歌わせてもらえないので自分の声に合い、実力がみせられるような選曲が大事です。一番ためになったのは、現役でブロードウェイの舞台に立っていたり、オーディションに携わっていたりする先生でした。

ミュージカルでは、裏声を使わずしゃべる声のまま高い音まで歌い上げるやり方で発声をするのですが、白人や黒人と比べて骨格も違うし、肺活量が少ないアジア人は不利なんです。 それを克服するためには、彼ら以上に頑張らなければなりません。

----アメリカのミュージカルのオーディションはどんな感じなのですか?

ニューヨークでオーディションを受けることは、日本にいたときはすごく遠いことのように思っていましたが、来てみたら案外近いものでした。実力があって当たり前、その上で(役に合った俳優をキャスティングする)タイプキャストが多いので、メイクや服装も大事です。

また、いい意味でコネクションが命っていうところがあります。ディレクターもうまい人を使いたいし、時間を節約するためにも、ある程度最初から俳優を絞ってオーディションすることも少なくないので、どれだけ人を知っているかで、かなり結果も変わってくると思います。私はアジア人が出られそうなミュージカルのオーディションには必ず行くし、そうでないものもたくさん受けました。たとえば、『Chicago』『A Chorus Line』『The King and I』『Hair』『Rent』『Beauty and the Beast』など、あげたらきりがありません(笑)。そんなに興味がなくても、とりあえず受けて、顔を知ってもらうようにしています。

一年のうち、2月~4月までがハイシーズンで、オーディションが一番多い時期です。この時期に、年末までのプロダクションのオーディションが行われます。今年はリンカーンセンターで『The King and I』をやるという噂があり、そうなればアジア人がたくさん狙うと思いますよ。

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----『Miss Saigon』のミス・チャイナタウン役はどうやって手に入れたのでしょう?

オーディションの当日、一次審査のある1時間前に、仲のよかった伯父が亡くなったという知らせを受けました。一瞬、ショックで頭が真っ白になりましたが、伯父のためにも頑張ろうと思いました。物語に入って歌うという先生の助言に従ったら、落ち着いて歌うことができました。それで二次へと進み、ダンスをするのですが、コレオグラファーに4回転しろと言われたりして、もう必死でした。自分に自信がなくて、まさか受かるとは思っていなかったので、合格の通知を聞いたときは、へなへなになってしまいました。今では生前、私のことを応援してくれた伯父のおかげで受かったのだと思っています。そのときは、やり続けていてほんとうによかったと実感しました。
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----役作りで苦労したことはどんなところですか?

アメリカのミュージカルがどのように進められて行くのか全くわからなかったのでドキドキしていました。最初の稽古から、みんな完璧なんです。大半の人が他の公演で同じ役をした経験があったからなのですが、正直ひとりで焦りました。とくに歌があり得ないくらい完璧で、その美しい歌声に不覚にも涙がでました。一観客として聞いてしまったくらい、アメリカ人の歌のレベルは半端なく高いです。英語で物語を話すように歌い上げるミュージカルはとても力強いし、説得力がある。「このメロディーのような英語の発音とミュージカルは、ぴったりはまる。やっぱりミュージカルはアメリカのものだな」と、悔しい思いと憧れる気持ちとで複雑でした。

ストーリーの背景になっているベトナム戦争のドキュメンタリーや映画をたくさんみました。そして台本の言葉をブレイクダウンして、本当は何を訴えたいのか、何度も読みました。歩きながらもジムで体を動かしているときも、お風呂に入ってるときも、ずっと口にだしてセリフを体に落とす作業をします。とくに私の場合、英語が第二外国語なのでそこまで自分に響かない。愛とLove。どうしても、その響きで軽く感じてしまうのは英語です。それを腹まで落とす作業が難しかったです。

舞台は1週間で完成しました。1週間じゃ歌もままならないのにいきなり、すごい早さで歌と動きをつけられて、相手役とのからみ、踊りだすタイミングをだいたい決めたら、後はダンスリーダーが指揮をとります。踊りも任せられ、全て自分の役の振付けを考えました。
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----舞台の公演はいかがでしたか?

ペンシルバニア州のランカスターにあるフルトン・シアターというところで1か月公演が行われました。これはユニオン(組合)の仕事だったので、ユニオンが出演者一人一人にマンションを用意してくれて、期間中はそこに滞在しました。公演のあとは、連日パーティでしたね(笑)。みんな陽気で笑いが絶えず、家族みたいな雰囲気でした。驚いたことに、ほとんどの人が舞台の話をしないんですよ。それに一日2時間の公演以外は自由な時間だったので、みんなで遠足に行ったり、誰かがダンスの先生をしたり、私はヨガを教えたりとそれぞれが得意なことを教え合っていました。休みを利用してオーディションを受けにニューヨークへ行く人もいました。

----公演の期間中からもう次の仕事のことを考えているんですね。

アメリカの場合、日本と違ってカンパニーに所属せず、一回一回自分でオーディションを受けて仕事をとってこないといけないので、みんな次! 次! 次! です(笑)。私は、この舞台だけでも必死だったので行きませんでしたが。劇団四季に所属していたときは、カンパニーがダンスや歌などのレッスンをしてくれましたが、こちらでは個人が自分で先生を見つけてレッスンをしなければなりません。レッスン代も自分持ちです。ユニオンのメンバーなら、レッスン代がユニオンレートで多少安くなりますが。

----ユニオンには誰でも入れるのですか?

舞台のユニオン(AEA: Actor"s Equity Association)のメンバーになる方法はいろいろありますが、オンブロードウェイの作品に1本でも出ればすぐに入れます。ユニオンの関係するプロダクションでは、ツアーや地方公演の必要経費をすべて出してくれます。ユニオンのメンバーでなくても、それは同じです。ただ、給料がユニオンメンバーかそうでないかで圧倒的に違います。そして保証されていること、労働時間の制限がしっかりしていることが大きなメリットです。あと怪我したとき、問題が起こったときなどの訴えもユニオンが取り合ってくれて解決してくれます。泣き寝入りにならなくてすむのですね。その一方で、ノンユニオンの舞台には出られないという仕事の制限もあります。
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----『SMASH/スマッシュ』について、どんな感想を持ちましたか?

ちょうど(アメリカで)シーズン1が始まった頃に、『Miss Saigon』のオーディションに受かることができたこともあり、自分に起こったいろんなことがドラマと重なるんですよ。主人公に感情移入せずには、みることはできなかったです。

パイロット版でカレンがオーディションを受ける会場の一つが、以前私が受けたオーディションと同じ会場でした。あの場所をみると心臓がばくばくします(笑)。また、歌のオーディションで、審査員が自分の歌を聴いてない時はよくわかりますね。ドラマの中で、下手な人が歌っているとき、審査員が隣の人と話したり、顔をそむけたりしている場面がありましたが、まさにあんな感じです。
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カレンは地下鉄でオーディションに行き、終わったらすぐにウェイトレスのバイトに直行するのに、ブロードウェイの舞台にたっているアイヴィーは、タクシーで優雅にオーディションに行く、その対比はとってもリアルでした。それにオーディションのコールバックの電話のシーンや出演依頼の電話、初顔合わせのシーンも自分が体験したことのようでしたね。とくに出演者たちの会話でオーディションや生活の困難さ、お金になるコマーシャルの仕事の話なんかが出てきますが、実際、本当に同じようなことを話しています。実体験した人が脚本を書いたとしか思えないリアルさです。

----カレンがオーディションでクリスティーナ・アギレラの『Beautiful』を選曲したことについてはどう思いますか?

もしミュージカルが、新作ではなくてタイプキャストを求めていたら、選択ミスだと思いますが、ドラマのなかでは従来のマリリン・モンローのイメージをリフレッシュしたいっていうディレクターの意図があったので、ベタベタのマリリン路線にせずにあえてあの曲にしたのは、よかったのではないかと思います。最近はR&Bやロックなどのポップミュージックがブロードウェイの主流になってきています。『Glee』に続き、このドラマによってミュージカルがダサいイメージからカッコいいものに変わり、ミュージカルをみる層が広がるといいですね。

----アメリカではシーズン2が始まりましたね。

ブロードウェイに出ている友人が、バックダンサーで出演しています。羨ましい! ライザ・ミネリなどの大物も出るので楽しみです。

----ブロードウェイのミュージカルを目指している人にアドバイスをお願いします。

先人が道を開いてくれたおかげで、アジア人がキャスティングされる機会も増えてきています。若いほど上達が早いので、とにかく来て技術を磨いて、オーディションを受け続けて欲しいです。受けたらすぐにそのオーディションを忘れて、次の日のオーディションの準備をするくらいの勢いで、100回受けて一個を当てる気でやり続けることが成功への近道のような気がします。そして、同じ目標をもった友人をオーディション会場で作ること。彼らの情報は早く、そして確実です。

英語の発音の矯正は、日本人のクセを知っている先生に見つけることをお薦めします。どこにチャンスがあるのかわからないので、名刺や写真を常に持ち歩いたり、エージェントに送ったりして、コネクションを広げていくといいと思います。

(インタビュー/ほりうちあつこ)

20130409_c05.jpg石村友見さん略歴
千葉県出身。大東文化大学国際関係学部国際関係学科卒業。 高校2年のとき、青年団の『転校生』で女優デビュー。1992年劇団四季に入団、翌年『ライオンキング』に出演。2005年、歌とダンスを勉強しに渡米。2012年、ペンシルバニア州で行われた『Miss Saigon』にミス・チャイナタウン役で出演。同年ヨガの会社『Body Tone Yoga』をニューヨークで設立。講師の育成に力を入れている。日本で今年秋公開予定の韓国・香港・日本合作映画『Fly Me to Minami~恋するミナミ』(リム・カーワイ監督)に出演。石村さんのホームページはこちら。

portrait photo:(c)Atsuko Horiuchi
『SMASH』(c)2012 Universal Studios. All Rights Reserved.