オリジナルドラマの人気にあやかり製作されるスピンオフドラマ。ゼロからスタートするよりも、認知度という点から有利として最近、ますますスピンオフへの期待が高まっているが、もちろんすべてが成功するわけではない。そこで米TV Guideで今まで報じられた「やらなきゃよかったスピンオフ」から、海外ドラマNAVI的視点から10本ピックアップしてご紹介しよう。

■『LAW & ORDER: Trial by Jury』『LAW & ORDER: LA』
"やらなきゃよかったスピンオフ"の第6弾は、『LAW & ORDER: Trial by Jury』と『LAW & ORDER: LA』の2作をまとめてピックアップ。その名のとおり、20年のロングラン記録を誇るクライム・ドラマの金字塔、『LAW & ORDER』のスピンオフドラマだ。本家シリーズは、ニューヨークを舞台に凶悪事件の発生から、裁判を経て陪審員の評決が出るまでを描く、刑事・法廷ドラマの最高峰ともいうべき作品。エミー賞作品賞に11年連続でノミネートされた高いクオリティと固定ファンをバックに、これまで4本のスピンオフと英仏露各国で計4本のリメイクドラマが製作されている。番組のフォーマットを継承する『LAW & ORDER』独特のフランチャイズ方式は、数多くのヒットシリーズに取り入れられ、米ドラマ界に大きな影響を与えたことでも有名だ。

そのスピンオフ第1弾は、1999年にスタートし、現在15シーズンを放送中の『LAW & ORDER: 性犯罪特捜班』。続く第2弾『LAW & ORDER: クリミナル・インテント』(2001年)も2011年まで10シーズン続き、どちらも本家の名に恥じない健闘ぶりを見せた。

それに続けとばかりに、2005年にスタートしたのが、3作目のスピンオフ『LAW & ORDER: Trial by Jury』。陪審員に焦点を当てた意欲作で、当然のようにロングランが期待されたが、なんとわずか12話で打ち切りが決定してしまった。これについてTV Guideは、「舞台を法廷内だけに絞ったことが裏目に出た」と指摘している。作品のトーンが単調になり、従来のファンがそっぽを向いてしまったのだ。さらに本家シリーズからレギュラー入りするはずだった名物刑事レニーこと、ジェリー・オーバックが急逝したことも大きな痛手となった。結局、同作は8ヶ月後、CourtTV(現TruTV)で放送された第13話を最後に1シーズンで終了した。

それから5年。本家シリーズ終了後の2010年にスタートした第4弾『LAW & ORDER: LA』は、パイロット版抜きで製作のゴーサインを得たにもかかわらず、本家の内容をロサンゼルスの街に置き換えた安直さがたたり、わずか8話であえなくキャンセルが決まった。番組側は主人公を降板させて建て直しを図ったが、時すでに遅し。4か月後に残り14エピソードを放送し、やはりこちらも1シーズンで終了となった。

この2作から、オリジナルがいかに偉大な作品でも、スピンオフがヒットする保証はないことがわかる。安易なスピンオフはもちろんのこと、決して数撃ちゃ当たるわけではないのだ。しかし、反対に4本中、2本のスピンオフをヒットさせた『LAW & ORDER』が偉大なドラマであることは間違いなさそうだ。(海外ドラマNAVI)