お先見!『アメリカン・ホラー・ストーリー:怪奇劇場』 人間の心に潜む異常さを「見世物小屋」からご覧あれ!

シーズンごとにヤバさが倍増中の『アメリカン・ホラー・ストーリー』! 今回の副題は怪奇劇場ことFreak Show(フリーク・ショー)、俗にいうところの「見世物小屋」という意味。その昔、アメリカ中の町を巡業して回っていた奇人・変人を見せ物にする旅芸人一座のことです。

 

フリーク・ショーとは?

ドラマの舞台となるのが1952年フロリダ州の小さな町ジュピター。こういった小さい町にはまだまだ偏見や差別が横行していた時代で、そんな場所にエルサ率いるフリーク・ショーがやってきたことから、ドラマははじまります。面白いのは、歪んだ思考がまかり通るジュピターという町自体が異常でフリーク・ショーそのものに見えてくるという部分。差別がまかり通る警察にはじまり、連続殺人ピエロから人殺しが生き甲斐の変態金持ち息子まで、異常人間がはびこっていて、奇人・変人と差別されるエルサの芸人達のほうがノーマルな人間に見えてくるから面白いものです。

見世物小屋の女座長エルサを演じるのは『アメホラ』の女王ことジェシカ・ラング。醜い過去を背負い美しい容姿とは裏腹な歪んだ心を持ったキャラで、クラシック映画女優マレーネ・ディートリッヒをモデルにしたといわれています。エルサが舞台でデヴィッド・ボウイの「ライフ・オン・マーズ」を唄うシーンがあるのですが(当然の事ながら1952年にはこの歌はありませんでしたが...笑)、これが超逸品! ちなみにジェシカは、このエルサ役で先日ゴールデン・グローブ賞にノミネートされたばかりです。

ジェシカのほかにもアメホラお馴染みメンバーが奇人・変人を演じていて、サラ・ポールソンが「二つ頭の女」を演じ、キャシー・ベイツが「ヒゲ女」、そして「3つの乳房を持つ女」(!!)のアンジェラ・バセットなどなど、これを聞いただけでアメホラ・ファンの皆さんは新シーズンが待ちきれなくなると思います。(笑)

今シーズンは、ゲスト・スターも華やか。ソウルの女王パティー・ラベル(オリジナルの"レディー・マーマレイド"を唱ったシンガーです!)、映画『インターステラー』にも出ていたウェス・ベントレー、今度アカデミー賞の司会を担当するニール・パトリック・ハリス、そしてマット・ボマー(きゃぁ~~!)など、クリエイターのライアン・マーフィー好みのラインナップが揃っています。

ちなみに主要アクター達の傍を固めているのは、実際にギネスブックに登録されている人たちで、特殊メークとかじゃないんです!幼年期に難病で腰から下の両端を失ったローズ・シギンズさんは「足なしスージー」役、身長62.8センチで世界一小さい女性に認定されているジョティー・アムゲさんは「プチ・ママ (Ma Petit)」役で出演しているという、これって、日本のドラマではまずありえないキャスティングですよねえ!

アメリカ社会で「freak」と言うと、どことなく差別的で蔑んだ響きのある言葉とされているのですが、そんな言葉を躊躇することなくタイトルにしてしまうのが、この『アメホラ』シリーズ。普通の番組なら絶対に選ばないようなテーマを敢えて選んで、グロくもインテリジェントなドラマにしてしまうその手腕は、『アメホラ』のクリエイター陣ならではの絶妙ワザといえるでしょう。

Photo:『アメリカン・ホラー・ストーリー:怪奇劇場』(c)2015 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.