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『スパナチュ』ジェンセン・アクレスが四半世紀にわたり、常に第一線で活躍し続けられる理由

2025年7月19日 ※本ページにはアフィリエイト広告が含まれます

この人が出ているから観てみよう!あの人の最新作ならチェックしなきゃ!そんな風に思える俳優はこの世に数少ない。特に海外ドラマ界隈となると、その数はかなり絞られてくるだろう。映画と比べて、海外ドラマは人気が出れば、数年にわたってシリーズが続くことになり、特定の俳優の新作を短いスパンで視聴するということが極めて難しい。そのため、俳優が“ブランド化”されるという現象は、もはや異常事態と言えるほど稀なことなのだ。その人気を維持し続け、海外ドラマで長年活躍し続けるということは、ひょっとしたら映画界でスターに成り上がることよりも大変なことなのかもしれない。

そんな海外ドラマ界でブランド化された俳優たちの中でも、近年、より輝きを増している俳優がいる。かつて大ヒットホラー・アクション『SUPERNATURAL/スーパーナチュラル』で主人公の一人であるディーン・ウィンチェスター役として人気を博したジェンセン・アクレスである。このほど、彼の最新作である『カウントダウン』の配信がスタートしたが、筆者はふと気づいてしまった。ジェンセン・アクレスの海外ドラマを視聴していない時期が、この四半世紀、一度もなかった、と。そう、彼は約25年にわたり、常に海外ドラマの第一線で活躍し続けてきたのだ。なぜ、ジェンセンは長年にわたり成功を収め続けられているのだろうか?

ここでは、そんなジェンセン・アクレスのキャリアを振り返りながら、その理由を紐解いてみよう。

ファンの希望が多いR指定版『SUPERNATURAL』リブートについて、ジェンセン・アクレスの考えは?

2025年は、『SUPERNARUTAL スーパーナチュラル …

大学入学を辞退し選んだ俳優の道

ジェンセン・アクレスは、1978年3月1日アメリカ・テキサス州ダラスにて、イングランド、アイルランド、スコットランドの血を引く家系に生を受けた。学生時代は野球やラクロスといったスポーツに精を出す活発な少年であったが、俳優だった父親の影響から、徐々に演技に興味を抱くようになり、いつしか俳優を志すようになった。

高校卒業後は、理学療法士への道を進むことを決め、テキサス工科大学への入学も決定していたのだが、ジェンセンは入学式のまさにその日、あろうことかハリウッドで俳優を目指すという決断を下す。安定した道を進むのではなく、厳しく険しい道のりになるだろうが、自身の夢を追いかける。後に、この決断が英断となることを、この時の彼は未だ知る由もなかった。

若い頃は悪役を得意としていた!?

もともと幼少期より様々なCMへの出演やモデル業をこなしていたジェンセンだが、俳優としての本格的なキャリアが幕を開けたのは、高校を卒業して間もない、1995年のこと。ファミリー・ドラマ『夢見る子犬ウィッシュボーン』にて小さな役を演じることで、めでたく俳優デビューを飾った。その2年後となる1997年には早くもお茶の間の人気者になる。米NBCの長寿ソープオペラ『Days of Our Lives(原題)』にエリック・ブレイディ役として3年間、計448エピソード出演。同役における演技は高い評価を受け、デイタイム・エミー賞に3度ノミネートされたほか、ソープオペラ・ダイジェスト賞にて新人賞を受賞する活躍を見せた。日本のファンにはあまり馴染みがないかもしれないが、この時からすでに、ジェンセンのTV界における成功ストーリーは幕を開けていたのだ。

そして、ジェンセン・アクレスが最初に頭角を現した作品と言えば、何を隠そう、2001年より出演したSFアクション『ダーク・エンジェル』だ。

同作は、巨匠ジェームズ・キャメロン製作総指揮、ジェシカ・アルバ主演で大ヒットを記録。遺伝子操作によって生み出された特殊能力を持つ者たちの姿を描く同作で、ジェンセンは、ベンとアレックの二役を好演。最初に演じたベン役は1エピソードのみ登場する殺戮マシーンだったが、シーズン2より登場のアレックは、自己中心的な性格の持ち主でありながらも、次第に主人公たちのかけがえのない仲間になっていく。いわば善と悪の対極とも言える双子を見事に演じ分けた。

続いて、2004年よりジェンセンは、DCコミックスを代表するヒーローであるスーパーマンの若き日を描いた青春ドラマ『ヤング・スーパーマン』にてジェイソン・ティーグ役を演じることになる。当初、ジェンセンは主人公クラーク・ケント役のオーディションを受けていたが、あえなく落選していた。ところが、時を経て、まるで運命に導かれるかのように同作に関わることになったのだ。ジェンセンが演じたティーグは、ヒロインのラナ・ラングを巡るクラークの恋敵となる役どころで、高校フットボール部の副コーチとして登場する。だが、次第に大きな秘密を抱えていることが明らかになっていき、悪役へと昇華を遂げていく。

ここまでを振り返ってみると、若い頃のジェンセン・アクレスは、かなり振れ幅の広い俳優だったことが伺える。意外にも、悪役の演技を得意としている節さえあり、時折見せる狂気に満ちた眼差しは鳥肌ものだった。

そして、ジェンセンは『ヤング・スーパーマン』での仕事を全うすると同時に、自身の代表作との運命的な出会いを果たすのである。

『スーパーナチュラル』ディーン役との運命の出会い

2005年、ジェンセンはついに飛躍の時を迎える。後に15シーズンもの長期期間にわたり人気を博すことになる、ホラー・アクション『SUPERNATURAL/スーパーナチュラル』の主演に抜擢されたのだ。

同作では、ディーンとサムのウィンチェスター兄弟が様々な悪霊やモンスターたちを狩り、人々を救っていく姿が描かれる。ジェンセン演じるディーンは、お調子者で女たらしだが、弟や父親のためなら地獄に行くことさえ厭わない家族思いの男だ。劇中ではサム役のジャレッド・パダレッキや天使カスティエル役のミシャ・コリンズらと小気味いい掛け合いも見せ、コメディの才能も遺憾なく発揮。いたずらっぽさを感じさせるあどけない表情がそう思わせるのかもしれないが、ジェンセンにはこういった役どころがピタリとハマる。ハンサムという言葉を絵に描いたような色男だが、決して完璧ではなく、どこかしらの欠点がある。万人に好かれる親しみやすいキャラクター性を発揮している。これこそがジェンセン・アクレス最大の魅力であり、ディーン・ウィンチェスターというキャラクターと共に培われたものなのではないだろうか。ディーンとの運命的な出会いが、ジェンセン・アクレスという俳優の魅力を大いに引き出し、ティーン・チョイス・アワードやピープルズ・チョイス・アワードに幾度となくノミネートされ、受賞も果たしている。

同作は、北米でもっとも長く続いたSFドラマとして歴史に名を残し、ジェンセン・アクレスは、アメリカTV界のトップ俳優としての地位を手にした。しかし、ジェンセンは決してその地位に甘んじることはなかった。

実は『バイオハザード』出演の噂もあった!?映画での活躍

ここで、ジェンセンにとっての主戦場であるTVから少し離れ、映画の方に目を向けてみよう。実はジェンセンは、TVシリーズの休息期間に様々な映画へ出演している。

『ヤング・スーパーマン』出演直後の2005年には、ビデオ映画『いけにえ』に主演。インターネットゲームにハマってしまったジェンセン演じるジェイクが、現実と虚構の区別がつかなくなってしまい、奇妙な生き物たちと対峙することになる。まるで「スパナチュ」のオーディション素材のような同作では、俳優を目指すきっかけとなった実の父アラン・アクレスとの共演も実現しており、父子共演というこれ以上ない親孝行を果たした。

『SUPERNATURAL/スーパーナチュラル』放送中の2009年には、映画『血のバレンタイン』(1981)のリメイクとなる『ブラッディ・バレンタイン3D』も大きな話題となった。同作で主人公のトム・ハニガー役を演じたジェンセンは、ディーン役と大きく異なる演技を魅せ、改めて演技の振れ幅を証明する形となった。

その他、ジェンセンには映画「バイオハザード」シリーズへの出演の噂もあった。同名ゲーム作品における主人公の一人、レオン・S・ケネディ役を演じるのではないかという噂が大きく取り沙汰された時期があった。結局、後に本人の口から噂に過ぎないことが明らかになったが、実写だけに限らずアニメやゲームの声優もやってほしいというファンによる待望論は現在もたびたび持ち上がっている。

ジェンセン・アクレスの現在とこれから

一つ代表作と呼ばれるTVシリーズを手にすると、その後、キャリアに迷走する俳優もしばしば。ところが、ジェンセンはあえてTV界でそのキャリアを追求していくことを選択。こうして、彼は現在、Amazon Prime Videoにて配信中の『ザ・ボーイズ』『カウントダウン』の2作品で重要な役割を果たしている。

『ザ・ボーイズ』

© Amazon MGM Studios © Amazon Content Services LLC

『ザ・ボーイズ』ではシーズン3より、かつて圧倒的な人気と実力を誇りながらも、当時のチームに裏切られ、長年、冷凍保存されていたソルジャー・ボーイ役に扮した。劇中では、自身を裏切ったメンバーへの復讐を誓うと共に、最強ヒーローであるホームランダーと熾烈なバトルも繰り広げる。制御の利かない悪役として存在する一方で、救いようのない世界を救うための救世主的な役割を担っており、一筋縄ではいかないジェンセンの存在感が際立っていると言えるだろう。ソルジャー・ボーイは同作の最終シーズンとなるシーズン5でも物語のキーパーソンとなることが予想されている他、ジャレッド・パダレッキやミシャ・コリンズといった“スパナチュ・トリオ”の共演も実現予定。さらに、1950年代を舞台にした前日譚スピンオフ『Vought Rising(原題)』への主演もすでに決定しており、これからしばらくの間、ジェンセンとソルジャー・ボーイの親密な関係は続いていきそうだ。

そして、最新作となる『カウントダウン』は、あらゆる政府機関から集められたタスクフォースの面々が、刻一刻とタイムリミットが迫る中、巨大な陰謀に立ち向かっていく様子が描かれる、ハードアクション・ドラマだ。

©Amazon MGM Studios © Amazon Content Services LLC 

骨太且つリアル指向な描写が目を引く同作においてジェンセンは、ロス市警の刑事マーク・ミーチャム役を演じる。厄介者だらけのタスクフォースへと招かれる身勝手な問題児であるミーチャムは、脳腫瘍に蝕まれながら潜入捜査官として抜群の腕前を披露する。これまでSFやホラーといった作品で特殊な役柄を演じることが多かったジェンセンにとっては、新境地となる役柄と言えるかもしれない。47歳という年齢で挑戦し続けるその姿勢にはもはや脱帽でしかないが、そんなことはお構いなし!といった具合に、活き活きとした姿を見せてくれている。長年培ってきた演技力が試される重厚な作品で、モンスターや特殊能力者ではなく、犯罪を阻止しようと奔走するジェンセンの姿が新鮮に映ることだろう。

近年では、妻と共に製作会社を立ち上げるなど、製作サイドとしての活躍も期待されている、ジェンセン・アクレス。彼がおよそ四半世紀もの間、アメリカTV界のトップランナーでいられる最大の要因は、やはり決断の速さと正確さであろう。運命的とでも言うべき英断を随所に繰り返しており、その都度、新たな可能性を提示してくれる。だからこそ視聴者は彼の出演作をつい観たくなってしまうのだ。

ジェンセン・アクレスという俳優は決して人々の期待を裏切らない、まさに正真正銘のスーパースターである。

(文・Zash)

Photo:『カウントダウン』プレミアにて(C)Frazer Harrison/Getty Images for Prime Video

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Zash

子供の頃から培ってきた映画と海外ドラマの知識を活かしてライターとして活動中。皆さんに一時の幸せな時間をお届けできたら幸いです。

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