ザ・シネマ『アウトロー』日本語吹き替え版 トム・クルーズ役 森川智之さんインタビュー!

明日7月19日(日)21:00より放送されるトム・クルーズ主演映画『アウトロー』日本語吹き替え版で、トムの声を担当している声優・森川智之さん。今回、長年にわたりトムの吹き替えを担当する森川さんに、トムとの思い出や、これまでで特に印象に残っているアフレコ現場でのエピソード、そして本作の見どころなどを語っていただいた。

――『アウトロー』の吹き替えをされて、今までのトム・クルーズ作品と違うと感じたポイントや、『アウトロー』の吹き替えで気をつけたことはありますか。

等身大のヒーローが現れたなという感じがして、もの凄くリアルに感じました。いつもトムは大体ミッションをこなしているんで(笑)、一般の人からすれば想像もつかないところで活動している感じですが、『アウトロー』は、なにか身近なものをすごく感じましたね。
吹き替えにおいては、間で芝居をするというか...展開が早い映画ではなく、間を見せながらどんどん進行していくような作品という印象を受けました。それまでのトムは、どちらかというと青春スターといった感じから出てきて、若者の葛藤から何から、ずっとそういうイメージで進んで来たじゃないですか。それをガラッと変えてきたなと感じたのは、僕の中では『コラテラル』。ザ・シネマでも放送しますが、この作品では銀髪の悪役なんです。殺人鬼の役で、今までの自分の役者としてのイメージを変えるぞ、という様なものが見えて、凄いなと思っていたら、今度はまた逆に、タイトルは『アウトロー』だけども、法外な正義。僕の想像だと、トムの中ではまたひとつ自分の活躍する大きな場所を見つけたのかな、なんて思っています

――たくさんの吹き替えを担当していらっしゃいますが、ズバリ! 吹き替えの良さを教えて下さい。

やっぱり字幕とは違って情報量が多いところですね。映像を細かく見られるというか。例えば、色んなアクションにしても、今は映像技術が凄いじゃないですか。やっぱり映画としても、映像を見てほしいという思いで作られている中で、字幕には字幕の良さがあるんですけど、字を追っちゃうと見逃してしまうところもあるかもしれないですよね。
そういう意味では、深く細かく映像を見られるのが、吹き替えの良さなのかなと思います。
それ以外にもたくさんありますけど、あまり話すと戸田先生に怒られちゃうので(笑)

――ちなみに森川さんは字幕版と吹き替え版どちらで映画をご覧になられますか?

僕は両方で見るんですよ。職業柄、両方見て「こういう風に作ってるんだ」と思っちゃうんですね。比べるというよりは、楽しみとして。字幕を見るときは、こう「観るぞ」って感じで、吹き替えはもう少しラフな感じで見られるというか。情報がたくさん入って来るので。

――森川さんの吹き替えにおける"役作り"について教えて下さい。

僕は、いちばん最初に東北新社さんでトム・クルーズの吹き替えをやらせて頂いたんですけど。スタンリー・キューブリック監督の『アイズ・ワイド・シャット』という作品があって、当時夫婦だったニコール・キッドマンとトム・クルーズが出演した、夫婦仲のちょっとしたすれ違いの話なんですけど、キューブリック監督らしい奥深さや味があって。僕も吹き替えのオーディションを受けさせて頂いて、運良くトム・クルーズの吹き替えをやらせて頂きました。

 

当時、声をあてることに関しては技術的な部分でだんだん慣れてきて、面白さもとても分かっていましたけど、自分の中で演技の確たる部分やプランに関して、「もう一つ上に行かないと、語れないな」という、思いを持っていました。「吹き替えの声優だ」って言えるくらいになりたいなと。そう思っていた時、『アイズ・ワイド・シャット』の日本語吹き替え監督さんが、木村絵里子さんで、それに同席で、キューブリック監督の右腕のレオン・ヴィタリさんが日本に来ていたんです。彼は『アイズ・ワイド・シャット』で助監督をやっていたんですよ。だから彼は、演出や、トムがどう役作りをして、どうディスカッションしていたかっていうのも分かっている中で、ゼロから作り上げたので、その経験が僕の中では「吹き替えの演技」に対する物の見方を開眼できるきっかけになりました。

その収録が凄かったのは、僕ら普通はスタジオにマイクを3本立てて、皆でせーのって録るじゃないですか。それが、ニコール・キッドマンを佐々木優子さんが吹き替えをやっていたんですけれども、夫婦の掛け合いを録る時に一人ずつ録るんですが、何十テイクも撮り直す鬼の様な監督と言われていたキューブリックと同じで、鬼の様に録るんですよ。「森川、今どういう気持ちでお前は言ったんだ」みたいな話をして、「これはちゃんと真剣に向き合わないと、死んだつもりでやらないと帰れない」と思いました。結局1週間くらいかけて、終わったのが夜中の3時くらいで。ベットシーンなんかも、出来たばかりのスタジオにソファーベットを持ってきて、僕そこで寝かされて。「ベットシーンはトムも横になっているから、お前も横になって」と。仮面をつけたパーティーシーンでは、本当にトムが使ったマスクを持ってきてくれて、そこに小さなマイクを仕込んで収録するんですよ。「本格的に、リアルを録りたい」と。「トムが作ったことと全く同じことをやってくれ」と。その経験で、自分の中で何かちょっと変わったかな、と思ってからトムの吹き替えをやらせてもらっているんです、それ以降の映画で。

そこから僕、何を見るかというと、トムのお芝居の台詞や、見得を切ったり格好良く言うとかではなくて、"呼吸"を見て役を作っています。上手くシンクロしていくんです、会話していると。ワンシーンで。上手くいかないと、呼吸がずれたりとかしちゃうんですけど。それを自分の中で新しく発見したと思います。ちなみに『アイズ・ワイド・シャット』日本語吹き替えを作った後、レオンさんから「日本語吹き替え版がいちばん良かった」とお手紙を頂きまして、そのマスクも頂いたんです。宝物として、とても厳重に家のどこかにしまってあります(笑)

――最後に『アウトロー』の見所と視聴者の方にメッセージを!

『アウトロー』は本当に素晴らしい映画です。僕ね、吹き替えを担当していますけど、一度字幕で見たんですよ(笑)。レッドカーペットに招待していただいて一緒に歩くこともあるんですけど、国際フォーラムで大スクリーンでの試写があったんですね。何千人も集まって、トムも来て。そこでマッカリー監督にも会って紹介してもらったんですけど、もうトムの『アウトロー』に対する思い入れが凄くて。こだわりというか、アクションも何も、肉弾戦というか、血が通っているアクション。これほど痛みというものや、トムの演技を肌で感じる作品っていうと、やっぱり『アウトロー』が抜群だと思うんですよね。そこを見てもらいたいですね。それから、世の中の理不尽な事とか、嫌な事とか、そういったものをジャック・リーチャーという新しいヒーローがスカッと一刀両断してくれるような気持ち良さや、格好良さを是非『アウトロー』で楽しんでもらえたらいいなと思いますね。

後はなんといっても、『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』と同じ監督ですからね、そのへんのところもすごい楽しみだったりします。この『アウトロー』のアクションがもしかしたら『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』にも活かされている部分もあるのかな、なんてちょっと楽しみにしています。

★『アウトロー』放送情報
ザ・シネマにて
【字幕版】7月18日(土)21:00~
【吹替版】7月19日(日)21:00~

Photo:
森川智之
『アウトロー』トム・クルーズ
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