Netflix劇場用映画初作品『ビースト・オブ・ノー・ネーション』キャリー・ジョージ・フクナガ監督に独占インタビュー

映画『闇の列車、光の旅』『ジェーン・エア』などを手がけ、昨年HBO制作のドラマ『TRUE DETECTIVE』で、見事第66回エミー賞ドラマ部門監督賞を受賞した、キャリー・ジョージ・フクナガ監督が、映画『ビースト・オブ・ノー・ネーション』の第28回東京国際映画祭パノラマ部門上映とNetflix配信開始を記念し10月に来日した。

 

『ビースト・オブ・ノー・ネーション』は西アフリカの某国を舞台に、内戦によって家族と引き離されてしまった少年が、やがて少年兵へと変貌していく姿を描いた作品。内戦の状況が悪化しつつも、まだ平穏に毎日を過ごしていたある日、主人公の少年アグー(エイブラハム・アッター)の暮らす村に、反乱軍を弾圧すべく政府軍がやってきたことから、彼と家族の日常は崩壊する。アグーは命からがら逃げ出すが、武装集団の指揮官(イドリス・エルバ)に見つかり、否応なしにその一味に加えられてしまう―――。

 

本作は、Netflixが初めて製作したオリジナル映画で、先月全米劇場公開と同時にNetflixでも配信さている。この度来日したフクナガ監督に独占インタビューを行ったのでご覧頂こう!

――『刑事ジョン・ルーサー』などでも高い人気を誇る俳優・イドリス・エルバですが、彼を本作にキャスティングを決めた理由について教えてください。

最初から、ぜひこの役は彼に演じてもらいたいと思っていました。すぐに脚本を読んでもらって、そして彼も快く引き受けてくれたんです。同じエージェントに属していたので連絡もしやすかった。
この役をやれる人はそう多くはいないと思っていたし、とても強くて、リーダー的な資質を備えつつ、そして危険な面も持ち合わせている、けれども魅力的で、人を惹きつけてしまえる人。また、西アフリカに何らかのルーツを持っている人が必要だと思っていました。

 

――主人公アグー役のエイブラハム君は、現地でサッカーをして遊んでいるところを、スカウトしたということだったのですが、ストライカ役をはじめそのほかの子どもたちのキャスティングや演技指導についても教えてください。

"キングコング"(ストライカ役のエマニュエル君の呼び名)は撮影に入る前のかなり早い段階でみつけてスカウトしました。現地首都の道端で見つけて、すぐに気に入りました。カメラを向けると物おじせず、ポーズをとったりできる子でした。彼は作品の中にいる時と普段はまるで別人のようですよ。
出演する子どもたちには、ちょっとした演技のワークショップのような形で、基本的なことは教えました。カメラがあることに慣れて、撮影中カメラに気を取られないようにするとか、そういったことですね。実際の現場でも、彼らが演技しやすいように、役に入れるような環境を作ってあげることを心がけました。

 

――撮影現場での思い出はありますか? 何かハプニングなどはありましたか?

うーん、そうだなあ。ああ、そういえば、こんなことがありました。イドリスは現場でもとても存在感があるんですが、現地で彼についていたボディーガードが、本当に真面目な方で、イドリスがどこへ移動するにもついて行っていたんだけど、トイレに行く時にまでね(笑)。それでイドリスが「トイレだけだから、大丈夫だから(笑)」というようなことがありましたね。

――撮影はスムーズに行われたのでしょうか? 映画の劇中では、激しい銃撃戦や、心に重くのしかかってくるシーンもありますが...。

それはすっごい大変でした。全然スムーズではないです。もう毎日が大変でした。とにかく連日何か事件が起きて...。それで、「うまくいかないことが多いのは、自分が上手く撮れていないんじゃないか...」と、ストレスに感じていたことが、一番苦しんだことですね。

 

――日本に住んでいる、特に若い世代の視聴者へのメッセージをお願いします。

もし『ビースト・オブ・ノー・ネーション』を観てくれて、心を動かされたとしたら、このサイトを見てみて欲しい。世界の現状がどうなっているかもっと知ることができるから。

こういったサイトを通じて、今世界で何が起きているのか知ることもできるし、日本から支援活動に興味を持ってくれるような人が、何人かでも出てきてくれたら嬉しいと思います。

――さて、話は作品から離れますが、昨年の第66回エミー賞で、ドラマ部門の監督賞を受賞されてから何か変化はありましたか?

何も変わりませんよ。今までと同じ。今でも自分でゴミ出ししています(笑)。

――今後、どんな作品を撮っていきたいと思いますか?

映画ですか? 限らず? ...そうですね。南北戦争についての作品など作れたらいいなあと思っています。『ビースト・オブ・ノー・ネーション』では少年兵、『闇の列車、光の旅』では移民の問題だったりしますけれども、そういった現実の題材で、フィクションを作ることによって、伝えたいことが明確に伝わると思うんです。もし実際に起きた事をそのまま伝えようとすると、どうしても制限がついてしまうし。だから「題材」をもとに「物語」をつくることで、よりしっかり伝えて行きたいと思うんです。

――日本にはこれまで三度いらっしゃっているそうですが、日本でお気に入りの場所、食べ物などはありますか?

いつも滞在時間短いんですよね...。でも、そうですね...。友達に会って、美味しいものを食べることが大事かな。一つ選ぶのは難しいけれども、すしも好きだし、焼き肉も好き。うん、一つにしぼるのは難しいですよね。あと酒も好きです。

 

――ありがとうございました!
フクナガ監督の社会派の鋭い目線が光る映画『ビースト・オブ・ノー・ネーション』は現在Netflixで配信中。


Photo:キャリー・ジョージ・フクナガ監督
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