『ウルフ・ホール』ダミアン・ルイス(ヘンリー8世役)インタビュー

ブッカー賞受賞のヒラリー・マンテルによる原作を豪華キャストで完全映像化した、稀代の政治家トマス・クロムウェルの視点から描く歴史大作『ウルフ・ホール』。第67回エミー賞で8部門にノミネートされるなど高い評価を受ける本作が、AXNミステリーで1月9日(土)より放送される。そんな話題作に出演するキャストたちのインタビューを3回にわたってお届け。第2回に登場するのは、時の王、ヘンリー8世を演じるダミアン・ルイス。同役で第73回ゴールデン・グローブ賞にもノミネートされる彼が、自身とヘンリー8世の類似点や、彼と周囲の関係性などについて語ってくれた。

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僕はヘンリー8世だ。いや違った。僕は『ウルフ・ホール』でヘンリー8世を演じているダミアン・ルイスだ。この物語におけるヘンリー8世は...といっても、主人公は彼ではなくトマス・クロムウェルだが、(原作者の)ヒラリー・マンテルが描くヘンリー8世は、確かに時として独裁的で偏執病的で冷酷な王だ。だが今回の新しいヘンリー8世像においてもっと大切、いや最も大切なのは、女性と普通の関係を築いたりロマンチックな恋愛を求めたりする王である点だ。

ヘンリー8世は優しくて愛情深い男性であり、同世代の間で卓越したアスリートでもあり、人文主義者であった上に作曲家であり得るし、エラスムスをはじめとする同時代の非凡な人たちからは"彼こそが眺めるに値する人物"と絶賛された。アン・ブーリンはヘンリー8世を思いのままに操る力を持っていたが、この物語では、彼がロマンチックな恋愛というものを一般人と同じように求めたところにも触れている。

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彼はアンのことを5年間、追い求めた末、よく知られる通り、彼女の寝室に入ることを許され、挑発的にめくられたスカートの中に手を入れて太ももをなでたという。イギリスでは、そういった状況は非常によくあった。彼はアンを欲し、肉体的に求めていたが、同時に彼女の持つ本物の知性と意志の力にも惹かれたのだと思う。

これは今回初めて知ったことだが、アンはフェミニスト(男女同権論者)を象徴するような女性だった。彼女は明らかに不当な扱いを受けたと感じるよ。ヘンリー8世はアンを斬首刑に処すよりもマシな結婚の終え方を考えられたはずだ。

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一方でヘンリー8世は、クロムウェルに深い親愛の情を抱くようになる。ロンドン・パトニーにある鍛冶屋の息子として、質素な家庭に生まれた彼のことが気に入ったんだろう。しかもクロムウェルは、彼の周りにいる貴族の誰よりも世界各国を飛び回り、人生経験があった。マーチャントバンク(イギリス特有の金融機関)の原型のようなものを営み、ヨーロッパの一大金融都市アントワープに滞在したり、傭兵として従軍したこともある。まさに世界を股にかける男だ。ヘンリー8世は、そんな彼にすっかり魅了されてしまったんだろう。歯に衣着せぬ語り口、実際的なアプローチ、知性、法的思考力に惹かれたんだ。こうしてヘンリー8世はクロムウェルを全面的に頼りにするようになり、自宅を訪ねたり、人間関係を知りたがったり、クロムウェルが過去に経験した私生活での悲しみに理解を示したりする。クロムウェルに共感して、友情を築きたかったようだ。彼と一緒にいる時のヘンリー8世は、しばしば普通の友情を求めているように見える。普段は自分にゴマをするような人たちに囲まれているから、普通の人間関係を築くことができないんだ。

僕はヘンリー8世と似ているかって? これまでそう思ったことはなかったな。だがヘンリー8世について調べていると、性格的に似ている点がかなりあると分かり、うれしかったと同時に驚いた。みんなが判断してくれればいいことだけど、ヘンリー8世の衣裳を着て座っていると、巧みな配役だと感じるよ。僕たちの間には確かに共通点があるね。

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ヘンリー8世に興味を持つのは...というかヘンリー8世という人物は人の関心を引きやすい。常に堂々としていて、ヘタすると漫画っぽく見えそうな王だからね。

功績を挙げるならば、彼はトマス・クランマーに(聖公会の)祈祷書を編纂させ、聖書の英訳にも前向きだった。また、いささか乱暴なやり方ではあったが、英国国教会を設立し、彼の娘エリザベス1世の巧みな手腕によってその教義は普及していく。その他の功績としては、議会の発展において重要な役割を果たした。

音楽や文学も、彼が王の時代に繁栄した。だが人々が最も興味を持つのはもちろん、6人の王妃がいて、そのうち二人が刑死し、息子を持つことに執着していたというソープオペラ的な要素だ。

120年に及ぶテューダー朝は色彩で表現するにも鮮やかで、まさに爆発力を秘めた時代であり、創造的な探究心をくすぐられる英国史の一幕だ。そして、その中心に存在するのが偉大で素晴らしく、それでいて危険な王なんだ。

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■『ウルフ・ホール』放送情報
ミステリー専門チャンネル AXNミステリーで
2016年1月9日(土)7:00PM~ 全4話一挙放送
2016年1月28日(木)10:00PM~ レギュラー放送 毎週木曜10:00PM


Giles Keyte, Ed Miller, Simon Smith-Hutchon © Company Pictures/Playground Entertainment for BBC 2015
Giles Keyte, Ed Miller © Company Pictures/Playground Entertainment for BBC 2015