アカデミー賞受賞作『シェーン』と『アーロと少年』の意外な共通点

先日行われた第88回アカデミー授賞式で『インサイド・ヘッド』が長編アニメ映画賞を受賞するなど、興行的な成功に加えて批評でも数多くの栄冠を手にしてきたディズニー/ピクサー作品。毎回、彼らの作品は緻密な構成が高い評価を得ているが、新作『アーロと少年』もそれは同じのようだ。

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弱虫でひとりぼっちの恐竜アーロが、怖いもの知らずの人間の少年スポットと出会い、大冒険を通して初めて友情を築いていく本作は、アカデミー賞撮影賞を受賞した1953年の西部劇『シェーン』と意外な共通点があるという。ピーター・ソーン監督が明かした。

恐竜のアーロは家族と幸せに暮らしていたが、ある日、川に流されて家族と離れ離れになり、壮大な自然の中でひとりぼっちに。アーロは家族が待つ家へと帰るため、ギザギザ山を目印にして壮大な冒険に出るのだが、このギザギザ山のモデルはアメリカ・ワイオミング州にそびえるグランド・ティトン山。そこにはソーン監督の深い思い入れがあったという。

「僕が子どもの頃から大好きだった映画は『シェーン』なんだ。あれはグランド・ティトン山で撮影された。だから、アーロが住む場所の設定をそこにしたかったんだよ」と語るソーン監督は、この山の壮大な自然を映画の中に反映させるため、実際にグランド・ティトン山に出向いたそうだ。

ニューヨーク出身の都会育ちで、それまで壮大な自然に触れる機会がなかったソーン監督は、グランド・ティトン山で見た雄大で洗練された自然から多くのインスピレーションを受けたという。「黄金色や赤色のポプラが彩る風景は信じられないほど素晴らしかった。あんな光景を見たのは初めてだった。それと同時に、自然には怖さもあると思ったよ。アーロが家族のいるギザギザ山へと帰る旅は困難なものだと観客に思わせたかった。ただの楽しい旅ではなく、アーロが成長するには自然の怖さを乗り越えることが必要なんだ。実際僕は、あの土地があまりに広大なので自分をちっぽけな存在だと感じた。だから大きな恐竜すらも"ひとりぼっち"と感じる場所として完璧だと思ったんだ。自然は危険も潜んでいるけれど、同時にとても美しい。アーロとスポットの気持ちが通じた時には、とても美しい風景が広がっているんだよ」とソーン監督。

恐竜と人間、言葉が通じないもの同士の心情を表現する上で、監督入魂の自然が大きな役目を果たしている『アーロと少年』は、3月12日(土)公開。(海外ドラマNAVI)

Photo:『アーロと少年』
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