1930年代、不況時代のアメリカに実在した男女二人の強盗ボニーとクライド。彼らの凄絶な人生描き、アカデミー賞2部門を受賞した伝説の映画がリメイクされ、TVシリーズとして登場!いよいよ3月21日(月・祝)WOWOWプライムにて日本初放送となります。
このドラマの見どころの一つとして注目したいのが、彼らのファッション性。
「強盗」というレッテルを貼られながらも、一方では「金のあるところから盗み、貧しき人々を助けた」として、30年代のアメリカのヒーローとしても語り継がれている――。そんな生きざまを鮮明に印象付けるのが、劇中での彼らのスタイリッシュなファッションです。ドラマの中の衣装はもちろんのこと、実在した彼らの出で立ちは、クール且つ堂々とした振る舞いで、喜び、悲しみ、怒り、情熱、さまざまな思いを抱えながら一瞬の時を生きた、彼らの人格そのものを物語っていると言えるでしょう。
クラシカルな年代物の映画やドラマを観て、「あ、かっこいいな!」と思って登場人物たちの衣装を真似してみたくなることはありませんか?本作もそんな作品の一つです。しかし、いざ実際にトライしようとしてもなかなか難しいものですよね...。特に本作のクライドのファッションは、シックさと、彼のワイルドさが交錯する大人の男性にとっても憧れるものになっています。
そこで今回、海外ドラマNAVI編集部では、クライドのスーツ姿をモデルに、現代のファッションアイテムで1930年代のアメリカのクラシカルさを表現しながら普段使いで活用できるファッション術をみなさんにお伝えすべく、メンズファッションブランド「MR.OLIVE」でPRを担当されている手嶋祐生さんにお話を聞いて参りました!
――ボニーやクライドの衣装から、アメリカにおける1920年代~30年代のファッションの背景を教えて頂けますか?
1920年代は、自由が阻まれていた第一次世界大戦が終結をしたことへの反動、そして戦勝国となったアメリカが、経済的な繁栄を下地に、それまでファッションをリードしてきたヨーロッパから自立する時期でした。一方、ヨーロッパは大戦の戦地となった反動から、その立ち直りは遅く、移民の国アメリカがヨーロッパに文化面でも逆転した時期といえます。結果、豊かになったアメリカ人が大挙して英国仕様のSavile Row(オーダーメイド紳士服=背広)を仕立てに出向いたような時代です。
――アメリカではその後、不景気となりましたが、ファッション文化にも影響はありますか。
はい。1930年代に入ると、暗く重たい不況感漂う大恐慌の時代へと突入しますが、直前の20年代には英国Savile Rowで背広を仕立てたようなアメリカ人の富豪層には、まだ財力がありました。大恐慌の影響で一般人が困窮を極める中、ごく一握りのNew Rich (成り金、新富裕層)が相対的に目立ち、彼らがファッション界を席巻したため、逆に「人々の羨望」を集め注目されました。
その頃の1920年代ブリティッシュデザインが土台のものは、以下のような特徴が挙げられます。
★幅の広いピークドラペル(下襟の先が上向きになってとがっているのが特徴の襟)
★シングルは三つボタン
★ウェストはかなりタイトめでハイウェスト
※上着がタイトでトラウザーズ(主にイギリスで長ズボンを表す言葉。アメリカでパンツ、フランス語でパンタロン。狭義ではとくにスーツ、礼装用のズボンを指す)がゆったりしているのが特徴。上着のタイトなラインからトラウザーズへのゆったりとした流れが現代のスーツにはない、独特でエレガントな雰囲気を醸し出しています。
★ジャケットはウェストシェイプ、胸を強調したシルエット
※後ろからのシルエットでも胸からウェストにかけてシェイプしたラインが見てとれます。
★ベント(ジャケットの裾の切れ込み)はノーベントが主流
※ジャケットタイプによってはベントありも存在したらしいが、ノーベントのスタイルがクラシック
★肩の袖付け部分は少しだけ盛り上がったセミロープドショルダー仕様
★拝み合わせボタン仕様
※3つボタン仕様は真ん中、2つボンタン仕様であれば上野ボタンに施す
★ジャケットの下にはウェストコート(vest)を合わせるのが正統スタイル
★トラウザーズは現代のパンツと違い、股上が深くハイバック仕様でブレザーズ(サイスペンダー)で吊ってはくタイプが当時の主流
しかし当時は現代と異なり「ビスポーク(注文の、オーダーメイドの意)」が主流であったため、ディテールやシルエットはものによって違う場合も多くあり、この限りではありません。これらはあくまでも当時の特徴を備えたヴィンテージスーツの1例です。
――ありがとうございます!まさに、「ボニー&クライド/俺たちに明日はない」の舞台となった時代背景そのものですね。それでは、この時代のファッションの特徴を生かして、クライドのようにかっこよく着こなしてみるには、どんなアイテムを選んで、どう着こなすと良いか教えて頂けますか?
はい。今回のクライドのファッションを参考に、アメリカ30年代のテイストを表現しながら、現代のアイテムで全身コーディネートしたものをご紹介していきます。
■1.帽子
まず、ハットのポイントです。こちらはRacal(帽子ブランド)さんとのコラボレーションになっています。型としては、今トレンドのロングブリムハット(つばの部分が比較的長い帽子)で、長さが70ミリに設定されています。素材はかなり薄いウール素材で、通年かぶれるのがポイントです。そして、リボンも可能な限り細くしています。太いリボンだと、つばが長い分ボリュームもでているので、どうしても上に意識(目線)がいってしまいますから。
――確かに!リボンが目立って大きいと、ついついそれを見ちゃいます。
また、色も比較的に同色でおさめているのもポイントです。色を変えてキャメルやブラックにもできるんですけど、これもどうしても上部にボリュームがですぎてしまいます。最低限のハットとしての機能をはたすために同色にまとめました。
■2.ジャケット&スラックス
素材はポリエステル100%です。特徴としては、普通に洗えます!そしてしわがつきにくいです。
サイジングはタイトに、しぼりめにつくってあります。ストレッチとまではいきませんが、やわらかい着心地の良さがあるので、ストレスフリーで着用頂けますよ。スリーボタンの段返りタイプ、スリーパッチポケット仕様です。
――スマートな印象のジャケットですね! ジャケット選びのポイントを教えて頂けますか?
大事なのは、ジャケットに限らずのことですが、サイジングです。このジャケットはクラシックなアメリカンディテールを採用しているので、肩からウェストにかけてシェイプされていて、ラインはきれいに絞れています。最初に述べましたが、30年代のジャケットの特徴は肩が少しでていて、そこか後ろから見てもわかるように絞られているんです。30年代の場合だと、そこからもうスラックスも足元までダホっとした感じのシルエットになってしまうんですね。それだと野暮ったい印象があるので、現代風にすると、パンツは、ウェストとお尻周りはゆとりを持たせておきつつ、そこから裾にかけてはきれいにテーパーされている(先が細くなるように施されている)ので、スッキリとして見えます。また、丈直し無しではけるように9分丈設定です。モデルさんが腰ではくと、8、9分丈です。普通の日本人男性のサイズだとちょうど良くおさまる形になります。この微妙な9分丈の万能なサイジングが、とっても都合の良いパンツです。自宅で洗えるし、普段着としても重宝しますね。
■3.ベスト、シャツ、ネクタイ
ベストまでフォーマルにしてしまうと、きまり過ぎてしまうので、ジャケットの下はワークベストにしています。MR.OLIVEでは、リアルクローズという範疇の中でモノづくりをしているので、突飛なものはむしろ作りにくいんですね。ですが、面白みは出したいので、裏地を主張したり、またボタン等も遊びを効かせています。
――外はシンプル、内では遊び心を。 これってちょっと素敵ですよね。自分だけのこだわりも感じられるし、何気ない時に他の方が「おッ!」と気付いてくれたり...。
シャツも、白シャツかな、とも思ったのですが、フォーマル過ぎるので、このカラーのオックスフォードのボタンシャツにしました。このシャツの特徴としては横糸にムラがある糸を使っているので、若干スラブっぽく見えるというところですね。カジュアルなボタンダウンシャツを選びました。(オックスフォードシャツとは...オックスフォードクロスという生地を使って作られたシャツ。オックスフォードクロスとは、平織りで糸を交互に織り込んだ生地のこと。通気性が良く、洗濯してもシワになりにくいため、アイロンをかける必要もなし。スコットランドの繊維会社が、オックスフォード、イエール、ハーバード、ケンブリッジの4つの大学都市の名をつけて、シャツ地を作ったうちのひとつで現在ではオックスフォード・クロスだけが残っているそうです。)
ネクタイはペイズリー柄です。ストライプや星柄もありですが、カタさの中にも遊び心がある柄です。
■4.靴
バイカラーのブラックシューズ。ぐっとおしゃれ度が上がりますね。少し遊ぶ感じがする方が良いかと。もちろん、黒も合わせられますが、今回は、足元で程良い"抜け感"を演出してみました。靴にも少し遊びを効かせているので、上部でも少し遊びの要素をネクタイで出すと。そうするとまとまりが良いかな、と思っています。
――ありがとうございました!
最後に、今回のまとめとして、普段使いでジャケットを着る時やアイテムを選ぶ際のアドバイスをお願いします。
はい。トップスは今回のものを生かしつつ、ボトムスをカジュアルなデニムに変えて、スニーカーをはくだけでも印象が変わると思います。また、ハットが抵抗あるという方は、ニット帽やキャップでも良いと思いますし、普段使いで、かしこまり過ぎないコーディネートになると思います。
例えば...そうですね、ジャケットとスラックスはそのまま生かして、足元を白のスニーカーにして、ベスト・ネクタイ部分をタートルネックにすると。帽子はかぶってもいいですし、外してもOK。それだけで、充分普段でも大丈夫なスタイルだと思います。
コーディネートの際のコツですが、例えば、ネクタイとシャツがフォーマル過ぎるな、という印象があるように感じたら、じゃあそこを省いてみる。そしてハイネックやボトルネックのセーターなどに変えるだけで、まとまります。タートルネックにジャケット、というのはスタンダードなので、揃えておくと便利です。
――手嶋さん、どうもありがとうございました!
タートルネックにジャケットですね。覚えておきたいと思います!とても参考になりました。まさに場所、時を選ばず、どこへ行っても大丈夫なコーディネートですね。
「MR.OLIVE」 ショップ情報:
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いかがでしたでしょうか。
『ボニー&クライド/俺たちに明日はない』には、きっと真似したくなるような、スタイリッシュなファッションコーディネートが満載です。ぜひ今回のファッションという切り口からも、ドラマを楽しんでみてくださいね!『ボニー&クライド/俺たちに明日はない』は3月21日(月・祝)WOWOWプライムにてよる7:30から前編、9:00から後編放送となります。お見逃しなく!
【Twitterで盛り上がろう!】
放送を記念して、こちらの記事からTwitterで「#ボニクラファッション」であなたのファッションコーディネート写真や、お気に入りのファッションアイテムなどをご投稿ください!今回のクライドのファッションコーデに似合った、皆さんが考えるボニーのコーディネートスタイルなど、ファッション好き、海外ドラマ好きのみなさん、ぜひぜひエントリー、お待ちしております!
Photo:『ボニー&クライド/俺たちに明日はない』
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衣装提供:「MR.OLIVE」