『エージェント・オブ・シールド』クラーク・グレッグ直撃インタビュー in LA

マーベルの人気ドラマ『エージェント・オブ・シールド』で、シールドの頼れる存在であるフィル・コールソンを演じているクラーク・グレッグ。昨年末に来日して大勢のファンを沸かせてくれた彼をロサンゼルスで直撃! 「矛盾の塊」というコールソンとの関わり合いや、"甥っ子"アベンジャーズとの関係について語ってもらった。

――フィル・コールソンはいろいろな変化をしてきましたが、あなた自身は彼の変化をどんな風にとらえていますか?

コールソンがこれまでいろいろな変化をしてきたと見抜いているのは鋭いね。彼はまず2008年の映画『アイアンマン』でマイナーな脇役として初登場した。その時、僕はコールソン役はこれで終わりだと思っていたけど、その後、様々な登場人物との関わりによって徐々に新たな要素が加わり、だんだんキャラクターが膨らんでいった。作品によって異なる脚本家が少しずつ新たな要素を加筆していき、コールソンという人物は変化していったと思う。ところが2012年の『アベンジャーズ』で彼は殺されてしまう。僕はその時こそ「これで終わりだ。これが彼の最終章だ」と本を閉じてしまうような気分だった。だけどその後、コールソンがテレビで蘇るかもしれないと教えられて、今となっては毎週、新しいチャプターを開き、その度に新しいコールソンを知り、彼の過去を紐解いている。コールソンの変化に伴って彼に振りかかるチャレンジもどんどん変化していると感じているよ。

――コールソンは何かが起こる度に決断を下さなければなりません。それに関して、あなた個人が気に入っている点はありますか?

あるよ! 彼のリーダーシップだ。彼のリーダーシップの取り方に感銘しているからね。かなり実用的なものなんだ。このシリーズの脚本家たちは、コールソンのリーダーとしての方向性を実に上手いやり方で進めている。彼は、シールドの方針に逆らって邪魔するようなことをした人にも何か利用できる要素があるのではないか?と考える。そしてその部分を徹底的に考慮し、何かを見つける。それを上手く活かして、シールドにとって得になるように使う戦略なんだ。相手のやり方を見抜き理解することでコールソン自身が騙されないための戦略でもある。敵より一歩先にいるという感じだ。ある人物のことを他の人たちが敵と見なしても、コールソンは敵だから寄せつけないということをしない。「もしかしたら自分の側で上手く使えるかもしれない」と考えるのが彼なんだ。その良い例がスカイ(デイジー)。彼女は最初、シールドを破壊しようとしていたハッカーだった。でも今ではまるでコールソンの娘みたいに、彼に最も近い存在になっている。シーズン2では、スカイの本当の父親も登場し、コールソンがどんな人物なのかを理解するようになる。シーズン3ではそうした部分がもっと描かれるよ。

――マーベルの世界にいるのはどんな感じでしょう? 個人的な関わり合いを教えてください。

マーベルの世界を知ったのは僕がまだ少年の頃だった。マーベル・コミックスを沢山読んだし、特にアイアンマンが大好きだった。だからアイアンマンを映画化すると聞いた時は興奮したよ。僕の近所に住んでるジョン・ファヴロー(『アイアンマン』の監督)が、「もし興味があるなら、『アイアンマン』の中に小さいが君にピッタリの役があるんだ」と声をかけてくれた。もちろん、「やりたい」と即刻答えたよ。だから今ではマーベル・ユニバースの最前列で眼を見開いて見ている感じだ。その世界の一部に自分がなってるなんて嬉しいことだよ。アニメシリーズの中でもコミックの中でもコールソンを見ることができる。いつも僕の中にいる10歳の少年と一緒に仕事に行けるという素晴らしい楽しさがあるんだ。

――マーベルの中で特に好きなヒーローは?

その質問に対する答えはいつも簡単には出ないんだ。いろいろな理由がある訳だけど、コールソンはアベンジャーズのメンバーにとって"エキセントリックな叔父さん"って感じなんだ。アベンジャーズそれぞれのベビーシッターをしなければならなかった叔父さんなんだよ。だから彼らはみな、コールソンにとって可愛い甥みたいなものだ。コールソンのキャプテン・アメリカに対する心情はよく知られているよね。時間が経つにつれて『エージェント・オブ・シールド』の中にもマーベルのヒーローたちが登場する。これから登場するキャラクターで、コールソンに近い存在のヒーローがいるんだ。多分その時点ではこのヒーローがコールソンのお気に入りということになるんじゃないかな。でもそれが誰かは今は言えない。シーズン3を見ていない人に言ってしまったら楽しみを壊すことになるからね(笑) ただ、それは君たちも知ってる有名なヒーローだよ。

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――『エージェント・オブ・シールド』のクリエイターであるジョス・ウェドンとの仕事はいかがですか?

ジョスは僕にとって最高のストーリーテラーなんだ。(彼が手掛けた)『バフィー~恋する十字架~』も『ファイヤーフライ 宇宙大戦争』も大好きだよ。『アベンジャーズ』の後、ウィリアム・シェイクスピアの「から騒ぎ」を元にした映画『Much Ado About Nothing(原題)』でも役をくれた。これは今までで最高に楽しい経験だったよ。そんな彼から「フィル・コールソンが生き返る。だが将来どんなことが待ち受けているか彼は分かっていないし、それまでとは違う自分になったことでそれなりの代償は払わなければならなくなる設定だ」と聞いた時、「それはやりたい!」と即座に答えてしまった。その後、ジョスは『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』の撮影に入り、他のことも忙しくなって時間が経ってしまった。それはちょっとがっかりした点だったけど、その間も友達関係は続いていたよ。彼が『~ウルトロン』の撮影に入る時、弟のジェドと仕事をすることになった。ジェドの妻のモーリサ・タンチャローエンとも知り合いになり、彼ら二人とジェフリー・ベルを合わせた3人が今のコールソンの基礎を作ったと言ってもいいくらいだ。
(注:ジェド・ウェドン、モーリサ・タンチャローエン、ジェフリー・ベルは『エージェント・オブ・シールド』の脚本・製作総指揮を担当)

――コールソンを演じて久しいですが、彼の基盤とは?

コールソンとは、いつもいつも一緒にいた訳ではないけど、もう9年の付き合いになる。彼は矛盾の塊なんだよ(笑) 『アイアンマン』で初めて知った時は、特徴のない、なんてことのない男だった。いつも背広を着て、何とかしてミスター・スタークに会おうとしている男だった。その後、徐々にいろんな面が剥がされていって、ついには結構パワフルな男だということが分かる。そして非常にダークな面を沢山持ってる男でもあるんだ。つまり、『アイアンマン』で初登場した時のコールソンは「背広を着た普通の男のフリ」をしていただけだった。そして『マイティ・ソー』や『アベンジャーズ』の中で、だんだん違う面を見せるようになった。彼は何の特徴もない男の仮面を着けて生きている、異なる面を沢山持った男なんだ。実際は無力な男ではないんだよ。
そして『エージェント・オブ・シールド』のシーズン1で、彼は自分の死の秘密を知る。彼は組織の秘密を守り続けてきたけど、実は本当の秘密は彼だけが知らなかったんだ。その後、コールソンはあらゆることに疑問を持ち、それまでとは違う人間になっていく。依然としてシールドに忠実ではあるが、シールドとの関係や周りから秘密を守るという部分が大きく変わっているんだ。今の彼は秘密を守ることよりも、人を守る、世界を変えるということに焦点を置くようになっている。

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――おっしゃる通り、コールソンは人を守ることに力を入れてますが、保護するといえば、コールソンはデイジー/スカイに対してかなり過保護な面があります。あなたご自身も、父親として娘さんに過保護なのでしょうか?

娘といえば、一昨日15歳になったんだ。

――では、まさにティーンエイジャー真っ只中ですね?

その通り。ティーンエイジャー真っ只中なんだ(笑) 僕は非常に過保護な父親だと思うよ。本物のティーンエイジャーが側にいると過保護にならざるを得ない。デイジーは20代だけど時にティーンエイジャーのような言動を取るよね。だから過保護になってしまう。でも、本物のティーンエイジャーを守ろうとするなら過保護ではダメなんだということに気が付いたんだ。彼らを本当の意味で守りたいのなら、自分でいろいろなことをさせなければならない。過保護にしていたら人生の中の大変な部分、避けられない辛い体験をすることができない。自ら辛い思いをしてこそ自分をどうやって守っていくかを学ぶことができるんだからね。失敗をしなければ学ぶことはできない。さっき言ったリーダーシップの話に戻るけど、リーダーは下の者をプッシュしなければならないとコールソンは信じているんだ。彼らが自分にできると思っている以上のことに挑戦させなければ伸びないと思っている。そうすれば、彼らは自分でも知らなかった力があることを発見するかもしれない。それが成長なんだ。シーズン3の中でコールソンが感情的になってしまう時がある。すると彼は自分の役割をチームの他の人間に任せる。そして「もしかしたら自分より優れたリーダーがいるかもしれない」と思うんだ。

――そんなコールソンは、映画雑誌SCREENの2016年7月号で発表された、第2回"海外ドラマ大賞"のキャラクター部門で第2位になりました。

(その雑誌を渡されて)この雑誌、名前も知らないけど早速購読したい!! 最高だよ! 信じられない栄誉だよ、これは! えっ、『ウォーキング・デッド』のダリルがいるじゃないか。なんだって、彼は6位!? 信じられない!! なんてことだ! (デイジー/スカイ役の)クロエ(・ベネット)は8位!? 彼女にも見せた? 信じられない! 最高だよ!

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――2位になってどんな感じですか?

興奮して顔が火照りだしてるよ! 東京に行ければもう文句なしだな! この本、僕がもらっていいの? わあ、最高だよ! ありがとう! この雑誌を見せなかったら、僕が他のキャラクターを抑えて2位だなんて誰も信じてくれないよ(爆笑) これで証明できる!! ブライアン(側にいたスタッフ)見た? これ見てくれた?(と大興奮)

――どうしてコールソンはこれほどまでに人の心を掴むのでしょう?

答えは二つ。一つは、僕には分からない(笑) 本当に分からないよ。(雑誌の)このページを見て、ここにコールソンがいるなんて僕の理解の範疇を超えているんだ。僕にとっては、コールソンを演じるチャンスが与えられたこと自体、身に余る光栄だと思っているからね。コールソンの人気は周りの人にとっていつもサプライズだった。マーベルファンがコールソンにいかに共鳴して彼を好きになっていったのかは、かなり大きな驚きだったんだ。かっこいいスーパーヒーローたちの世界、プレイボーイで金持ちでスーパーヒーローのトニー・スタークやらハルクやらがいるのに、どう見てもごくごく普通のルックスで背広なんか着てるコールソンになぜ惹かれるのか? もしかしたら、あまり描かれていないタイプのヒーロー的行動を彼の中に見るからかもしれない。つまり、スーパーパワーを持たない彼は、簡単に殺されてしまったり、大きな怪我を負ってしまう可能性がある中でも毎日人を救うために出掛けていく。なぜなら彼にとってそれはやるべきことだから。ジョスや他のクリエイターたちは、普通の人がヒーロー的なことをする勇気を入れ込んで作ってるんだと思う。『デアデビル』『ルーク・ケイジ』にも似たようなキャラクターが登場するけど、こういう普通の人もヒーローになれるという要素は大事な部分なんだろうね。

それにしても、これはこれは(映画雑誌SCREENの第2回"海外ドラマ大賞"のキャラクター部門でコールソンが第2位ということ)...娘に見せて自慢しよう。「お父さん凄い!」とは言われないだろうけど(笑)

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――シーズン3ではさらにいろいろな面白いキャラクターが登場しますが、過去2シーズンと変わった点は?

インヒューマンズの一人だったデイジーの母親が持っていたクリスタルが海中に落ちたことから、伝染病の一種が発生する。それから発生する異常現象が凄い。僕にとっては「ええっ!」と興奮するほど素晴らしかった。サイエンス・フィクションとかコミックブックの中で起こることにはいつも魅了されるんだけど、今回の現象はこのシリーズの世界をちょっと変えるような、さらに前進させるような要素を持っている。突然人々の進化が従来とは違う形で急激に進む。彼らが選択した訳ではないけど、そうなってしまうんだ。それを見て「これは神が望んでいることとは違う」と思い、神の意志に反するような変化を求める者は撲滅すべきだと考える人が現れる。一方、「そんなことはない。彼らがみんな悪い奴とは限らない。我々の未来にとってエキサイティングな要素を持ってるかもしれない」と考える人も出てくる。インヒューマンズが増加していくことでシールドがやるべきことも変わってくる。シールドが法的に認められている組織ではないことから、シーズン3では政府の後ろ盾を受けた別の組織、ATCU(高度危機抑制部隊)が登場する。彼らは、それまでシールドが処理してきたことをやり始める。ATCUはシールドの、そしてコールソンの競争相手となっていき、当然摩擦が生じる。シールド側から見るとうるさい、面倒臭い相手でもあるんだ。ATCUのトップであるロザリンド・プライスは感じの良い女性だし、コールソン自身は好人物だと受け止めているんだが、シーズン当初はロザリンドとコールソンは対立している。ロザリンド役をコンスタンス・ジマーが演じていてかなり魅力的なんだ。

――先程、映画雑誌SCREENの第2回"海外ドラマ大賞"のキャラクター部門でコールソンが第2位になったことに娘さんは何の感動も見せないだろうと冗談をおっしゃってましたが、実際のところ娘さんのコールソンに対する感想は?

最初は認めてくれなかった。彼女が興味を持ってる世界とは違うからね。でもスカイ、シモンズ、メイといった女性のコンピューターの天才、科学者、戦士が多くの命を救ってるのを見て、すっかり考えをあらためて興味を持ってくれたよ。女性たちの活躍、時には男にできないことをして人を救うその部分に興味を持ってくれたんだ。嬉しいことだよ。今ではこのシリーズのファンなんだ。クロエや(シモンズ役の)エリザベス(・ヘンストリッジ)と友達になっただけでなく、シリーズそのものを好きになってくれた。一緒にテレビを見てる時、以前はコールソンが危機に陥ると離れて見てたのに、最近はだんだん側に寄ってきたりしてね(笑)

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――アメリカン・コミックスが世界中でこれほどまでに人気を博している理由は何だと思われますか?

はっきりは掴んでいないが、アメコミは随分昔から人気があった。40年代? スーパーマンは古いだろう?(注:1938年に誕生) 50年代には結構人気を博していたような気がする。いつも何らかの形で僕たちの前にあった。時代とともに人気の対象が変わっていくだろうと言われていたけど、アメコミのヒーローたちは消えなかった。多少の変化はあったけど基本的には変わっていない。テクノロジーの進歩は確実にアメコミの人気を支えている。コミックというものが伝えるストーリーは他のストーリーテリングとは違う。現実離れしたことをどんどんすることで見る者を魅了する。見ている人たちは自分たちにできないことをしてくれるキャラクターに惹かれる。テクノロジーの目覚ましい進歩でどんどんストーリーテリングが魅力的になる。僕が関わった『アイアンマン』は、進歩するテクノロジーを上手く使ったアメコミ映画のスタートだったと言える。テクノロジーが発達したことでこの手のテレビシリーズ、『ゲーム・オブ・スローンズ』『ウエストワールド』、DCシリーズが可能になったんだ。

――シーズン3でファンが期待できることは何でしょう?

シールドのチームがグラント・ウォードとの戦いをまだ終えていない部分が明らかになる。ヒドラも健在で、彼らとの戦いはシーズン3では想像もつかなかった形で進行する。個人的な関わりが増えていくよ。コールソンにとっても戦いが個人的な関わりを持っていく点が見どころだと思う。

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『エージェント・オブ・シールド』シーズン3 商品情報
・2月3日(金)
ブルーレイCOMPLETE BOX(20,000円+税)、DVD-BOX Part 1(4,700円+税)発売
DVD Vol.1~6 レンタル開始
デジタル配信開始
・2月17日(金)
DVD-BOX Part2、DVD-BOX Part 3(各4,700円+税)発売
DVD Vol.7~11 レンタル開始
発売:ウォルト・ディズニー・ジャパン

■『マーベル エージェント・オブ・シールド 3』放送情報
全国無料のBSテレビ局Dlife(ディーライフ/BS258)にて1月21日(土)放送スタート!
[二]毎週土曜 21:00~
[字]毎週金曜 27:00~

Photo:
クラーク・グレッグ
クロエ・ベネット
『エージェント・オブ・シールド』
© 2016 MARVEL & ABC Studios