6月1日(木)より公開中のマーベル映画最新作"最後"のウルヴァリンをヒュー・ジャックマンが全身全霊で演じる『LOGAN/ローガン』。
『ニューヨークの恋人』、『ウルヴァリン:SAMURAI』に続いて、ヒュー・ジャックマンとジェームズ・マンゴールド監督による3本目のコラボレーション作品となる本作。『ウルヴァリン:SAMURAI』とは打って変わって、衝撃的なストーリー展開とバイオレンス性が盛り込まれ、世界中で高い評価を得ている。
今回は、その衝撃作を作り上げたジェームズ・マンゴールド監督を直撃! 本作への思いや、出演者たちなどについて語ってもらった。
――本作はアメコミ映画としては非常に挑戦的な作風だと思いますが、アメコミファンがこの映画受け入れてくれるか不安などはありませんでしたか?
ファンとひと言で言っても、様々な方々がいますからね。子どもや、大人向けのウルヴァリンが見たいと願う大人、暴力描写のような血が足りないと思っている方もいれば、逆にそういう流血シーンとかは怖くて駄目だと言う人もいたり、それに、自分たちのヒーローが弱くなっているなんて見たくないという人もいますよね。本当に色々な意見を持った方々がいますので、結局は自分が良いと思うものを作らなくてはいけないということだけなんです。そして、一つの確固たる視点を持った作品をお届けするということしかないと思います。
――本作はアメコミの「Old Man Logan」をベースにしているそうですが、映画の内容はだいぶ違いますね。この作品の方向性についてはどのような考えがあったのでしょうか?
この作品は「Old Man Logan」を原作にしているわけではないんですが、影響は受けています。ビジュアルなどを参考にはしているんですけど、原作というほどではありません。「Old Man Logan」にはハルクですとか、その他のキャラクターが登場して、ちょっと私がコントロールできるものではありませんので。今回、私は全く新しい物語を書き上げるという気持ちでいましたし、もっとより個人的な物語にしたいと考えていました。『ウルヴァリン:SAMURAI』では既存のコミックをちょっと脚色して、あのような形で映画にしたということがありましたけどね。ただ、今回はウルヴァリンの最後の物語として、より個人的な物語にしたいということがあったので、既存の作品に忠実に沿うということではなく、全くオリジナルの映画にしたいと思っていたんですよ。
――作中では西部劇映画『シェーン』のシーンが引用されていましたが、その狙いは何だったのでしょうか?
私は別に『シェーン』のような映画を作ろうと思っていたわけではないんですけれども、ただ、『シェーン』で語られている内容がこの作品にも適切な内容だと思っていたんです。『シェーン』に登場する男の子に、ローラのような力は無いですが、ただ語っていることは『LOGAN/ローガン』にも通じることだと思うんです。シェーンのように、ローガンも若い頃はいわゆる人殺しであって、多くの人を傷つけて殺してきた闇の部分があって、なんとか自分を変えたいというような思いがあるんです。『ローガン』では、一度でも人を殺してしまうと普通の人生に戻ることはできないというようなセリフを『シェーン』から引用しています。これは、ローガンもシェーンと全く同じような葛藤があり、今までの暴力に満ちた過去があるので、普通の父親になることはできないという点で同じだと考えていたからなんですよ。
――ヒュー・ジャックマンとの映画製作はどうでしたか?
今まで本当にたくさんの役者と接してきましたが、彼とは最も多く接してきたんではないかと思えるぐらい本当に私たちは良い友人です。お互い気の置けない関係ですね。非常にリラックスできる関係です。
――ヒュー・ジャックマンが17年にわたって演じてきたウルヴァリンのラストを飾る作品を監督できたことについてどう思われますか?
この質問は私向きの質問ではないかもしれません(笑)私はプレッシャーというものを感じながら仕事ができる性格ではなく、そういったものを全て無視して仕事をする性格なんです。だから、皆さんからヒューにとってのウルヴァリンとして最後の日はどうであったかということを質問されても、私はそういうこと一切無視して取り組んでいたんですよ(笑)なぜなら、そういうことを意識して取り組むと、私が自分として機能できなくなるんです。そういったことを考えないで、逆な感じで自分はいつも取り組むようにしているんですよ。
例えば、映画『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』の撮影で、ジョニー・キャッシュ役のホアキン・フェニックスと一緒だったときの話ですが、毎日、ホアキンが私のところに来て、「ちょっとあれを言って」と私に言うんです。それで、私は「君はジョニー・キャッシュじゃない」と彼に言っていたんです(笑)そうすると、彼は感じているプレッシャーから解放されて、自由にやることをやればいいんだと思うようになっていたんです。それと同じ状況で、私としても役者に与えることができる一番の大きな贈り物じゃないですけど、ヒューにとにかく自由でいて欲しかったんですよ。プレッシャーとか、この作品がどれだけコストがかかっているとか、ファンからの期待とか、そういうことを気にせずに、とにかく自分たちが行けるところまで行こうと考えていました。
――映画デビューとなるローラ役のダフネ・キーンは非常に魅力的な子役でした。彼女を選んだ経緯や彼女の印象を教えてください。
ジョン・ヒューストン監督が「監督業の8割は正しいキャスティングを行うことだ」と言っていました。確かに、何かもう少しさらに良くなるようにとか、ちょっとシャープにしたいということについて、私が手助けできるかもしれません。だけれども、私自身、役者に対してちゃんと真実を芝居で伝えろという事は教えられませんし、また役者に感じて欲しいということも言えないんですよ。そういうものは役者がちゃんと持っているものなので。ただ、私は本物の役者というものを見分けることができると思っています。ダフネの場合は子どもなんですけれども、彼女は根底的なレベルのところから、演技というものに理解を持っているんですよ。非常に微妙なところも、ちゃんと演じることができますしね。ローラというキャラクターは、ほとんど言葉を話さないキャラクターで、ちょっと話したとしてもスペイン語を話すというキャラクターでしたので、この役自体が目で演技をしなくてはいけなかったんです。それで、私はまず彼女のテープを見て、彼女は目で演技ができるという役者だとすぐに思いましたし、また彼女に会ってからも、そのことがはっきりと分かりました。だから、そこから後の製作というものはとても楽なものになりましたね。
――東京でのオフの予定は?
ヒューとは一緒にディナーをしたぐらいですね、ヒューは相撲を見に行くと言っていました。私はオフにレコード・ショップに行こうと思っています。それと、古い伝統的な人形劇を見に行く予定ですね。博物館とかにも行って、東京をちょっと楽しもうと思っています。それと先日、アメリカでは絶対見られないような古い東宝の映画をリバイバル上映で鑑賞しました。
『LOGAN/ローガン』は大ヒット公開中。(海外ドラマNAVI)
Photo:『LOGAN/ローガン』
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