新作『ツイン・ピークス』カイル・マクラクラン直撃インタビュー

WOWOWプライムにて7月22日(土)より放送が開始される伝説的ドラマの続編、新作『ツイン・ピークス』。オリジナル版の放送終了から約25年を経ての復活となったが、主人公のデイル・クーパーを演じるカイル・マクラクランが今作のプロモーションで来日。復活版のオファーを受けた時の過程や、役を選ぶ時の基準などを語ってもらった。

――『ツイン・ピークス』はその後作られたTVシリーズにも、そしてカイルさんの役者人生にも影響を与えている作品だと思いますが、実際どうですか? クーパー捜査官という役とデヴィッド・リンチ監督についても感じていることがあれば教えてください。

同感だね。『ツイン・ピークス』はTV業界にすごく影響を与えたと思うよ。いろんな人たちに刺激を与えて、(放送後は)TVではできないと考えられていたことがやれるようになったし、実験的なものがたくさん出てきたと思うんだ。成功した・しないにかかわらずね(笑)奨励したんだなって思う。

私にとっての『ツイン・ピークス』は俳優としてのキャリアを完全に変えてくれたし、いろんなことを可能にしてくれた作品だね。たくさんのプロデューサーや監督、脚本家が『ツイン・ピークス』の私を見て、私を起用したいっていうオファーをくれたんだ。リンチ監督の影響はやっぱり一番大きかったね。彼の最初の映画2本(『砂の惑星』、『ブルーベルベット』)で私を主役に抜擢してくれたんだけど、そのあと『ツイン・ピークス』を一緒に作り上げたことで、色んなことを学び、影響を受けたよ。

――先日の記者会見では、『ツイン・ピークス』続編のオファーを受けて「本当に興奮した」とおっしゃっていましたが、そこまでの過程はどのようなものだったのでしょうか?

リンチ監督から電話がかかってきて、「話がある。でも、電話ではだめだ」って言われたんだ。ちょうど、ニューヨークに彼が来ていたから、宿泊先のホテルに行って、そこではじめて『ツイン・ピークス』の新作を撮ることを打ち明けられた。私は何年も、「ツイン・ピークスをもう一度やらないか?」って監督にせっついていたんだけど、彼はずっと「いいや、やらない」っていってたから、もしかしたらこれは彼の気持ちが変わったのか?!って思ったね。

私は大好きなクーパー捜査官に戻りたいって思ってたから、すごく興奮したよ。SNS上でもファンが続編を希望しているのを知っていたから「やる価値はある」って確信したんだ。

――懐かしのレギュラーキャストに会ったときの感想は? 撮影現場の雰囲気などを教えてください。

同窓会みたいな感覚がずーっと続いてたよ。最初の日にアンディ(ハリー・ゴアス)と会って、次の日に(ローラ・パーマー役の)シェリル・リーと会って...。古いキャストも懐かしかったけど、新しいキャストにはオリジナルのファンだった人もいたし、とても熱意に満ちていて、『ツイン・ピークス』への愛が溢れている現場だったよ。

(丸太おばさんこと、キャサリン・E・コールソンについて)不思議なことに、亡くなる数日前に全部撮影していたんだよ。悲しかったよね...。

 

――オリジナル版を見ていない人に、新しいシリーズの魅力を伝えるとしたらどんなところですか?

若い人って、無機質な"物"を手に入れるよりも、体験とか経験を求めていると思うんだ。この作品はどちらかというと後者、つまり体験型のドラマだから、最初から見てハマってほしいかな。人知を超えている、チャレンジングなものだからね。

――とっても美形なカイルさんですが、『ママと恋に落ちるまで』のキャプテンなど、演じる役は一癖あるキャラクターが多いですよね。そういう役がお好きなのですか? 選ぶ基準はありますか?

変わった役を好んで演じているよ。私が普通の人を演じると、とても退屈でつまらなくなってしまうんだ。エキセントリックな役、笑える役は子どもの頃からもともと好きだったんだ。たとえば、『じゃじゃ馬億万長者』(1962年から1971年に放送されたシットコム)などに出てきたちょっと変な人たちが好きでね。自分が興味を持つ役を常に探すんだけど、実はね、次にやる役はもう決まってるんだ。お父さんと息子が繋がりを求める、みたいな古典的なインディーズ映画で、そこでは普通の人を演じているよ。

――クーパー捜査官が身近な存在だと前におっしゃっていましたが、彼に関するエピソードなどはありますか?

やっぱり思い出深いのはパイロット版かな。自分でももちろん考えていったけど、現場でリンチ監督とキャラクターを作り上げていくプロセスが印象に残っているね。あと、新シーズンでは、今までとは違う"いるけど、いないクーパー捜査官"を演出していて、これはリンチ監督が視聴者にたたきつけた挑戦状だともいえるね。

――今までと違うクーパー捜査官ということですが、役者としても挑戦的なものだったのでしょうか?

ミスター・Cこと悪い方は、クーパーの持っていた特色とか良い性質が全てなくなって、力とか自分の意志だけで動いている。まったく逆なのがダギーで、まるで赤ん坊がはじめて世の中を見るみたいな人なんだ。両方とも演じ甲斐があったよ。

 

――復活版でクーパーを演じるにあたりどのような準備をされたのですか? また、リンチ監督がオリジナルと比較して演出の仕方などを変えたような部分はありますか?

リンチ監督は変わってないかな。進化はしてるけど。もっとシンプルになって、それでいてよりパワフルなんだ。準備としては、たくさんのことをしたけど...なによりミスター・Cのために人間性をすべてなくそうとしたし、ダギーは赤ん坊のような純粋な気持ちになるように努力したよ。

――記者会見では、1本の映画を撮るように撮影した(それを18話に分けた)とおっしゃっていましたが、ドラマを撮る感覚とは違いましたか?

映画を撮っている感覚で撮影に臨んでいて、普通のドラマだったら「ここでCMだな」、「ここでクライマックスだな」とかあるんだろうけど、そういう意識がないから、ゆっくりと展開していく感じがしたし、500ページの中で自分は今どういう状況なのかというのを分析するのも、とてもチャレンジングだったよ。

 

新作『ツイン・ピークス』はWOWOWプライムにて7月22日(土)21:00より放送開始。第1話無料放送も行われる。

Photo:『ツイン・ピークス The Return』"TWIN PEAKS": ©Twin Peaks Productions, Inc. All Rights Reserved.