今年も粒ぞろいだったLAスクリーニング。思いっきり主観的なお気に入り新番組トップ5のランキングを発表! あまりに豊作だった今年は第5位が2作品ランクインとなった。
■お気に入り作品BEST5
第5位『Salvation』(CBS)
映画『アルマゲドン』を彷彿とさせるが、『Salvation』では政府の隠蔽作戦に一般市民が立ち向かっていくサスペンスを絡めている。911前の"無垢な"アメリカを舞台にしていた1998年の『アルマゲドン』では、NASAや米国軍などの政府機関が総出で正義の味方をサポートしていたが、本作では不透明な政府という現代を反映したストーリーになっており、劇中で正義の味方の一人が億万長者で、実際に宇宙開発に着手しているテスラ社やヴァージン社の社長たちといった実在の人物を思い出させるキャラクターが面白い。
同5位『Valor』(CBS)
アメリカではハイティーン向けチャンネルCWで放映予定のミリタリー・サスペンスドラマ。現代の軍でも稀な女性のヘリ・パイロットがヒロインなのが女性視聴者にとって嬉しい。秘密のミッションでヒロインとキャプテン(ヒロインの上司)が目撃してしまった軍の機密を巡って物語が進む。そういえばこのドラマもまた軍と政府の陰謀が絡んでいる。事実は小説よりも奇なり。土台になっている実話があるのかどうかは不明だが、第1話の勢いを持続できればヒット確実。
第4位『Reverie』(NBC Universal)
幸せだったあの頃に帰れたら...と誰しも一度は思ったことがあるだろう。もし最新のテクノロジーを駆使してその願いを叶えいるプログラムができたら? 本作は、人間の脳に直接アクセスし、VRを使用して「幸せだったあの頃」のシミュレーションを体験できるプログラムがもう一人の主人公。現代のテクノロジーの進み方から判断して、こういったプログラムが現実になるのは時間の問題だろう。面白いところは、このVRプログラムが起こし得る副作用に焦点を当てているところだ。それは、ユーザーの「幸せだったあの頃」中毒である。あまりに「幸せだったあの頃」を渇望するあまり、VRプログラムを乱用することでヴァーチャルの世界から現実の世界へ戻って来れなくなる昏睡状態に陥り、やがては死にいたるという非常に現実味を帯びた副作用だ。こんなプログラムがあったら必ず問題になるのは火を見るより明らかで、ただのSFドラマとは思えない現実味がある。
元・人実交渉エキスパートでトラウマを経験して引退していた主人公が開発会社の委託を受けて、「幸せだったあの頃」に溺れてしまっているユーザーの心理に侵入してユーザーを現実の世界に連れ戻すというのがドラマの中枢。SFである前に人間ドラマが深く感動的で、LAスクリーニング出席歴数年にして初めて泣かせてもらった。おまけに個人的に大好きなデニス・ヘイズバート(『24』)が問題のVRプログラム"レヴェリー"を開発した会社の責任者の一人で主人公の友人を演じているのもトップ5入りの理由。
第3位『The Resident』(FOX)
医療ドラマはもう食傷気味...と思っていたのだが、この新番組はただの医療ものとは異なり、主人公のレジデント(研修医)が働くことになった有名大病院のセレブ院長の医療ミス、そして原因となっている持病隠ぺい問題が絡んでおり、レジデントを仕切ることになった一見"イヤな奴ドクター"が実は正義の味方で、なんとか院長に立ち向かおうとしている、というスパイシーな伏線がストーリーを盛り立てている。
映画『13デイズ』ではケネディ大統領、『スタートレック』ではパイク提督と、グッドガイ役の多いブルース・グリーンウッドが悪者院長、映画『マダム・マロリーと魔法のスパイス』で主人公ハッサンを演じたマニシュ・ダヤルが主人公の研修医役、嫌な研修監督だけど実はいいヤツだった医師コンラッドに人気ドラマ『グッドワイフ』のマット・ズークリーが起用されており、見応えタップリ。
第2位『The Gifted』(FOX)
今年のLAスクリーニングの新番組もマーベル・ヒーローたちの台頭が目立ったが、その中でも群を抜いていたのが『The Gifted』。Giftedというのは、「特殊技能のある」という意味。「天からのギフトを授かった人」というのが語源だろうか。だが子どもにしてみれば他の子たちと格差が付くような妙な天のギフトなど迷惑至極でツマはじきにされる格好の理由だ。このドラマの主人公アンディもそんな悩みを抱えた少年。おまけにお父さんがその"変な"パワーを持つ人間を牢屋に送る検事とあらば事は最悪だ。自分に"変な"能力があることを誰にも言えず後ろめたく、それがオドオドとした態度になってしまい、いじめっ子たち格好の標的になってしまう。
周囲の枠にはまりきれなかったり、悩みを周囲に明かすことができなかったりして苦しんだという経験は誰もが共感できるところ。視聴者の共感を呼ぶ、ここが高視聴率の可能性を示唆している。アンディは怒りが高じると自分の超能力を制御できなくなり周囲のものを破壊し、人をも傷つけてしまう。家族思いのパパは遂に仕事の掟に背いて愛する家族を必死でかばおうとするが...。
他の人たちと違うことが平凡な人間にとっては脅威に映り、やがてその人たちを迫害する。どこかで聞いたシナリオだ。マーベル・ヒーロー・ドラマを見ると現在の世界情勢が重なって見えるところがあって興味深い。また、『トゥルーブラッド』のスティーヴン・モイヤーが父親役でいい味を出している。
第1位『Claws』(WB)
実を言うとこの番組はすでに全米放映されていて、筆者はエピソード7まで視聴済み。というわけで公平なナンバーワン選出とは言えないのだが、それにしてもこのドラマはヤバい! 面白すぎる。とんでもないゲットー冗句で大笑いさせてくれた後には人情ドラマで思わずグッと来させる。最高である。舞台となるのはマイアミのゲットーにあるネールサロンで、貧困を抜け出そうと頑張る女たちの友情と地元マフィアとの危険な綱渡りを描いている。初めてヒロインのデズナを見ると余りのド派手さと迫力にドン引きしてしまうが、人は見かけで判断するなかれ。彼女は発達障害を持つ双子の弟の面倒に心血を注ぎ、自分のネイルサロンに務める彼女のクルー(従業員)たちを姉妹のようにケアする肝っ玉母さん的な存在なのだ。そして良いドラマに不可欠な"悪役"が絶妙。デズナが借金をしてしまったことで腐れ縁となる地元マフィアのボスがそれなのだが、『ブレイキング・バッド』でハンク役を好演していたディーン・ノリスが演じており、そのカラフルな悪さがたまらない。『Claws』のピリ辛感覚が日本の一般視聴者に伝わるかは少々疑問な部分もあるものの、個人的には今年のLASナンバーワンに決定。
■お気に入り俳優BEST5
第5位『The Gifted』ナタリー・アリン・リンド
『The Gifted』で、自分の持つ特殊能力の存在に苦しむ弟を思いやる同じくミュータントで高校生の姉ローレンを好演しているナタリーはスーパーパワーを自ら制御することを覚えた精神力の逞しい少女。18歳になったばかりのナタリーは、あどけなさが残る可愛い顔立ちをしているが、劇中に弟を守ろうとする姉の表情に彼女の演技力を感じ、これから注目していきたいティーン女優。
第4位『Salvation』イアン・アンソニー・デイル
人気シリーズ『HAWAII FIVE-0』でドラマファンにはすでにお馴染みのイアン。結構あちこちで見かけるのに、これまではゲスト出演が多かった。『Salvation』では重要キャラであるハリスを演じていて、メジャー級入りが期待される。お母さんが日本人で少年時代に両親と米国へ移住しアメリカ中西部で育った。ジャパニーズ・アメリカンの俳優台頭にぜひ一役買ってほしい存在の注目株。
第3位『Salvation』サンティアゴ・カブレラ
ラテン系に弱くイギリス訛りにすぐ骨抜きになる筆者にとって、ヴェネズエラ生まれロンドン育ちのサンティアゴは、単にそれだけの理由で主観的チャート上昇中! BBCシリーズ『マスケティアーズ/三銃士』でアラミスを演じ、最近では『ビッグ・リトル・ライズ 〜セレブママたちの憂うつ』でも活躍中。話題の本作では、テスラ社のイーロン・ムスクをもっと尊大な態度にしてセクシー・オーラをまぶしたダリウスを演じていて、番組の話題度と共に注目度上昇のこと必至。
第2位『Valor』マット・バー
人気シリーズ『スリーピー・ホロウ』シーズン2にも出ていたので見覚えのあるファンも多いかも。ブロンドでスラリと背が高く笑顔が素敵な典型的アメリカン・ハンサム。番組でもプレイボーイな役だが、部下から尊敬される良きリーダー。いざ実戦となれば部下を命がけで守る勇敢な男で、そこのコントラストに女子はグッとくる。思わずミーハーしたくなるタイプ。
第1位『Valor』クリスティーナ・オチョア
ただでさえ女性の少ないアメリカ陸軍ヘリコプター・パイロットの中でもエリートの集団Shadow Raiders(影の奇襲者たち)隊員という、カッコいいヒロインを演じるクリスティーナは、そんなキャラが板についている。ミラ・クニス(『テッド』)に雰囲気が似ていて、美人だけどオテンバなところが可愛い。LAスクリーニングの場で実際に会ったクリスティーナも気取らない非常にキュートな人で、ますます好感度アップ。これから見守っていきたい俳優のトップに決定!
(取材・文:明美・トスト / Akemi Tosto)
Photo:クリスティーナ・オチョア&マット・バー ©NYKC/FAMOUS