今年もエミー賞の季節が到来。海外ドラマファンの皆さんの熱い期待を背負って現場レポを敢行すべくエミー賞にお邪魔してきました!
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エミー賞自体の会場は昨年と同じマイクロソフト・シアターなのですが、プレスルームと呼ばれる報道陣エリアの場所が移動して、去年と全然勝手の違う場所にあり、たどり着くのに四苦八苦。家を早めに出て良かった! でも早めに着いたおかげで、プレスルームの近くで人気トークショーの『Jimmy Kimmel Live!(原題)』の名物おとぼけキャラことギレルモに会えてハイテンション!
今年の授賞式司会は、全米で人気のトークショー・ホストで、ドナルド・トランプのことが大嫌いということで知られるスティーヴン・コルベア。政治関係のギャグをやらせたらピカイチという人です。とにかくのっけから政治色がギンギン。おまけに歌と踊りが多過ぎっ。トニー賞じゃないんだから(苦笑)
でも授賞式名物の冒頭の小ネタギャグで、トランプの初期ホワイトハウス報道官でその後クビにされたスパイサー元報道官がいきなり登場したのには驚きました。プレスルームの中も大盛り上がり! 日本ではあまりインパクトないと思いますが、例えて言うなら、日本アカデミー賞にいきなり稲田朋美元防衛大臣が特別出演で登場したようなもの、といえばそのインパクトが推し量れると思います。(スゴい例えですが...笑)
授賞式中盤でやった寸劇コメディ『ウエストワールド』パロディもプレスルーム内で大ウケしてました。ジェフリー・ライトがドラマ同様に開発研究者として登場。ドラマ内で、いつもメモリーダウンロードの際、素っ裸にされるアンドロイドの役を司会のコルベアがおシリ丸出しで演じていたのに周囲は大爆笑。でもエミー賞主要部門においてその『ウエストワールド』は1部門も受賞できず残念無念。そのほかにも、個人的に応援していた『ストレンジャー・シングス 未知の世界』と『フュード/確執 ベティvsジョーン』(特にスーザン・サランドン!)がこの日無冠に終わったのは残念でした。
振り返ってみると、今回のエミー賞はマイノリティと女子パワーの年だった気がします。マイノリティについて言えば、『ナイト・オブ・キリング 失われた記憶』のリズ・アーメッド(彼は『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』にボーディー役で出演してましたね!)が、ユアン・マクレガー(『FARGO/ファーゴ』)、ベネディクト・カンバーバッチ(『SHERLOCK/シャーロック』)、ジェフリー・ラッシュ(『ジーニアス:世紀の天才 アインシュタイン』)やロバート・デ・ニーロ(『嘘の天才 ~史上最大の金融詐欺~』)といった有名俳優たちを差し置いて受賞したことは新鮮な驚きでした。(プレスルームで受賞者インタビューの時に聞いたのですが、テレビムービー部門でアジア人系男優が主演男優賞受賞するのはエミー賞史上二人目なのだそうです)
また、『アトランタ』のドナルド・グローヴァーはコメディシリーズ部門の主演男優賞と監督賞のダブル受賞という快挙を達成。コメディ男優のアジズ・アンサリとともに『マスター・オブ・ゼロ』に出演し、彼と一緒に脚本も手掛けているリナ・ウェイスは、エミー賞コメディシリーズ脚本賞で史上初のアフリカ系アメリカ人女性受賞者ということで、こちらも記念すべき快挙となりました。
ニコール・キッドマンとリース・ウィザースプーンが製作・出演した『ビッグ・リトル・ライズ 〜セレブママたちの憂うつ〜』が受賞しまくってたのも今年のエミー賞が女子パワー全開だったという証。彼女らが受賞すると、プレスルームでも女性ジャーナリストで歓声をあげている人がいましたから(笑)
リースは最近プロデューサー業にとても力を入れているので、授賞式のドレスもビジネスウーマンを意識したデザイン。彼女は、ハリウッドにおける女性の地位を向上しようと積極的に動いているアクターの一人なのです。30歳を超えると目に見えて出演オファーが激減するというハリウッド女優界にあって、「女優たちのためにもっと意義のある役柄を!」と訴え続けている頼もしい存在です。余談ですが、リースって本当に小柄で驚きました! ニコールがデカいっていうのもあるか(笑)
ニコールとリースが同じTVシリーズに出て、エミー賞受賞インタビューを受けているという光景も、4、5年前には考えられなかったことです。でも昨今映画界を席巻しているマーベル・ヒーローたちや『スター・ウォーズ』シリーズなど、大作映画の限られたジャンルの中で活躍する場が限定されてきた俳優たちが、同じく執筆の機会を限定されてしまった優秀な映画脚本家たちとともにTV界に流れ込んできて活躍を始めた結果が、今年のエミー賞に反映されたと言っていいと思います。
日本では2018年に配信予定のHuluオリジナル作品『The Handmaid"s Tale(原題)』の主要5部門受賞(クリエイティヴ・アーツ部門も入れると計8冠)の複数受賞も圧巻でした。受賞者インタビューで製作総指揮を担当したブルース・ミラー氏が、「Huluは本当にサポーティブで、安全な道を選べということを言わない。これは我々アーティストにとって非常に幸せなことだ」と受賞者インタビューで話していました。
大手ネットワーク局や大手スタジオ製作の大作映画ではそんなクリエイティブな自由がきかないことも多々あります。NetflixやHuluなどの配信サービス会社がスタジオを設立してオリジナル作品の製作を始め、作品が大ヒットを記録しているのは、クリエイターたちが伸び伸びと持ち味を発揮できる環境にあると言っても過言ではありません。
さきほど4、5年前ならリースと二コールがエミー賞に居ることなど考えられなかったと述べましたが、それを言うなら大御所のデ・ニーロがエミー賞の候補者席に座っていたっていうのもすごい話です。まさに、映画もTVも紙一重的な時代になったっていうことですよね。もう昔あったTVに対する概念というものは過去の産物になりつつあるのを、ガッツリと感じた今年のエミー賞でした。
(写真・取材・文: 明美・トスト / Akemi K. Tosto)
■放送情報
<第69回エミー賞 授賞式 Supported by ミスズ>
FOXチャンネルにて9月24日(日)13:00より放送
※レッドカーペットは13:00~、授賞式は14:00~放送
※11月にも再放送予定あり
エミー賞公式ページはこちら
<エミー賞関連作品>
・『アトランタ』
FOXチャンネルで今後レギュラー放送予定
・『ジーニアス:世紀の天才 アインシュタイン』
毎週水曜20:00よりナショナル ジオグラフィックにて放送中
・『ビッグ・リトル・ライズ~セレブママたちの憂うつ~』
[字]スターチャンネル【STAR 1】にて9月27日(水)より毎週水曜 23:00~
[二]スターチャンネル【STAR 3】にて10月3日(火)より毎週火曜 23:30~
・『ウエストワールド』
スターチャンネルで12月に一挙放送決定!
・『ナイト・オブ・キリング 失われた記憶』
[字]スターチャンネル【STAR 1】にて10月26日(木)より毎週木曜 23:00~
[二]スターチャンネル【STAR 3】にて10月30日(月)より毎週月曜 23:30~
・『フュード/確執 ベティvsジョーン』
[字]スターチャンネル【STAR 1】にて9月23日(土)16:30より第1話<先行無料放送>
9月29日(金)より毎週金曜 23:00~
[二]スターチャンネル【STAR 3】にて10月4日(水)より毎週水曜 23:30~
※10月4日(水)は第1話無料放送
・『FARGO/ファーゴ 3』
[字]スターチャンネル【STAR 1】にて10月24日(火)より毎週火曜 23:00~
※10月24日(火)は第1話無料放送
[二]スターチャンネル【STAR 3】にて10月27日(金)より毎週金曜 23:30~
※10月27日(金)は第1話無料放送
・『LEFTOVERS/ファイナル』
[字]スターチャンネル【STAR 1】にて毎週火曜 23:00~ ほか
[二]スターチャンネル【STAR 3】にて毎週木曜 23:30~ ほか
・『GIRLS/ガールズ ファイナル』
[字]スターチャンネル【STAR 1】にて毎週水曜 23:00~ ほか
[二]スターチャンネル【STAR 3】にて毎週火曜 23:30~ ほか
・『TABOO』
[字]スターチャンネル【STAR 1】にて毎週日曜 23:00~ ほか
[二]スターチャンネル【STAR 3】にて毎週金曜 23:30~ ほか
・『嘘の天才~史上最大の金融詐欺~』
[字]スターチャンネル【STAR 1】にて9月23日(土・祝)23:30~ ほか
・『キャリー・フィッシャー~星になった母娘~』
[字]スターチャンネル【STAR 1】にて10月16日(月)18:30~ ほか
・『The Immortal Life of Henrietta Lacks(原題)』
スターチャンネルにて11月放送予定
Photo:
ドナルド・グローヴァー
©Television Academy
『マスター・オブ・ゼロ』プレミア特別試写会より リナ・ウェイス&アジズ・アンサリ
@Marion Curtis/Netflix
『The Handmaid"s Tale』
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