『シカゴ・ファイア』スティーヴン・R・マックイーン 〜伝説の名優の遺伝子を受け継ぐ男〜

1960年代から70年代にかけて活躍し、今でも根強い人気を誇るハリウッドの名優スティーヴ・マックイーン。『大脱走』『パピヨン』『ブリット』など多くの名作を世に送り出し、"キング・オブ・クール"の代名詞で知られたマックイーンのDNAを受け継いだ俳優が現在、海外ドラマで活躍中なのを知っているだろうか。

スティーヴン・R・マックイーンは1988年7月13日カリフォルニア州ロサンゼルス生まれ。父は俳優のチャド・マックイーン、母は女優のステイシー・トーテン、祖父母も役者として名を馳せた、いわば芸能一家のサラブレッドだ。

 

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スティーヴン自身は伝説の俳優であった祖父の死後に誕生したため、面識はないというが、表情や佇まいに祖父の面影を感じさせることから、カリスマ性やスター性といったものに大きな注目が集まっている新進俳優だ。

その俳優人生は2005年から始まった。TVドラマ『スレッシュホールド ~The Last Plan~』でデビューを飾り、同年より出演した『エバーウッド 遥かなるコロラド』シーズン4で注目を集め、2006年の短編作品『Club Soda(原題)』では2006年度ビバリーヒルズフィルムフェスティバル最優秀男優賞を受賞するなど、早くから頭角を現す。

『Club Soda』では役名はなく、「少年」という役柄だったが、あまりに印象的な演技を魅せたことから、続編である長編映画『American Breakdown(原題)』では主演に抜擢。『クリミナル・マインド FBI行動分析課』のジョー・マンテーニャら実力派俳優たちと堂々と渡り合った。

その高い演技力にもかかわらず名優の子孫であることだけに注目を集めがちだったスティーヴンを独り立ちさせた作品が、2008年のディズニー・チャンネル・オリジナル・ムービー『タイムマシン大作戦』だ。当時のディズニー・チャンネルを代表する存在だったジェイソン・ドリーが主演を務める話題作として大々的に売り出されたSFコメディだ。スティーヴンはドリー演じるバージルの幼馴染のデレクを演じている。

ミドルスクール時代には親友であったものの、高校進学と共に性格が変わってしまうという役柄で、いわば悪役ともとれるキャラクターを好演。アメリカのティーン・ドラマに存在しがちなフットボール選手なのだが、他を寄せ付けない存在感と、どこか憎めない表情の数々で、大いに可能性を感じさせる演技を見せつけた。

同作がきっかけでティーン雑誌の表紙を飾ることも多くなったスティーヴンは、その後、『NUMBERS 天才数学者の事件ファイル』、『WITHOUT A TRACE/FBI 失踪者を追え!』、『CSI:マイアミ』へのゲスト出演を経て、2009年より大ヒットドラマ『ヴァンパイア・ダイアリーズ』のジェレミー・ギルバート役に抜擢される。

 

 

主人公エレナ(ニーナ・ドブレフ)の弟で、酒やドラッグに手を出し、ヴァンパイアに憧れを抱くも死亡。その後、魔法で復活。その副作用に苦しみ続けるというシリーズ屈指の壮絶キャラを放送開始から8シーズンに渡り演じきり、世界的に知名度を上げることとなった。

スティーヴンの俳優としての魅力は、やはりその存在感にある。

それは名優の子孫だからとか、そういった理由ではなく、イタズラな魅力に溢れ、悪ガキっぽさを漂わせながらも、どこか3枚目的な雰囲気も兼ね備えたイケメンであるというところだろう。それは2010年に出演した映画『ピラニア3D』でも存分に発揮されており、人気ドラマからこういったパロディ映画まで難なく溶け込んでしまうところに彼の面白さがあるのだ。

気になるプライベートに関しては、過去にはショーン・ペンとロビン・ライトの娘ディラン・ペンとの交際歴があり、ハリウッドきってのサラブレッドカップルとして名を馳せたが、のちに破局。2018年1月にモデルのアレクサンドラ・シルヴァと婚約したことを発表し、仲睦まじい姿をInstagramに投稿していたのも記憶に新しい。

また、彼の祖母ニール・アダムスの姪イザベル・プレイスラーは、グラミー賞歌手のエンリケ・イグレシアスの母であり、彼とは親戚同士であることも有名だ。

そんなスティーヴンが現在、日本でも密かに注目を集めている。アメリカTV界の重鎮ディック・ウルフ(『LAW&ORDER』シリーズ)が手がける大ヒット消防アクション『シカゴ・ファイア』にシーズン4より出演中なのだ。

 

彼が演じるのは、シカゴ51分署に配属されてくる候補生のジミー・ボレッリ。救助隊のメンバーとして活躍したピーター・ミルズ(チャーリー・バーネット)の離脱で、平均年齢がいささか上がってしまった51分署に若さと新鮮味を与える存在で、今まで(意外と?)いなかった爽やか系イケメンとして大きな存在感を放っている。

初登場シーンでは51分署の面々に不信感を与え、いきなりボーデン大隊長(イーモン・ウォーカー)にドヤされるという場面もあったが、はしご隊小隊長のマット・ケイシー(ジェシー・スペンサー)や他のメンバーからの教育、救命士チリ(ドーラ・マディソン)との職場恋愛を通して、消防士としても、人間としても成長していく姿がとても小気味好く映る。時には3枚目キャラ的な魅力も発揮しており、スティーヴンの長所を全て詰め込んだかのようなキャラクターが、このジミー・ボレッリなのだ。

 

『シカゴ・ファイア』に関しては、全部で25話の出演にとどまっており、何らかの理由で番組を去ることになるのだろうが、彼のこれからの俳優人生には大きな期待を抱き続けたい。一度知ってしまったら、後戻りできない魔性の魅力を備えた俳優である。

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