ユーモアと1990年代ノスタルジア満載! 英国でヒット中の女子高生コメディ『Derry Girls』

1990年代、紛争下にあった北アイルランドに住む女子高生たちのハチャメチャぶりを描いたコメディ『Derry Girls(原題)』が、Channel 4で今年1月から放送されて以来、本国イギリスで人気となっている。爆破テロや暴力事件と隣り合わせの当時の北アイルランドからは想像できない、おバカで無謀な彼女たちの日常が、懐かしの1990年代カルチャーを交えて描かれており、異色のコメディとして視聴者の心をとらえている。

◆社会不安もなんのその!「女子高生4人+1」が巻き起こす大騒動

『Derry Girls』の舞台は1990年代のイギリス、北アイルランドのデリー(ロンドンデリー)だ。「The Troubles(厄介事)」と呼ばれた北アイルランド問題(プロテスタント系住民とカトリック系住民の民族、宗教対立による紛争)が収束する前で、第1話では爆弾テロ予告やイギリス兵による検問シーンも登場する。

そんな歴史的、政治的にも重い時代を吹き飛ばすかのように、エンジン全開で多感な10代を生きるのが、エリン、オーラ、クレア、ミッシェルの女子高生4人組だ。主人公のエリン(シアーシャ・モニカ・ジャクソン)はメロドラマばりの日記をつける夢見る16歳。自分の世界を持ち、いつもボーッとしているいとこのオーラ(ルイーザ・ハーランド)は隣家の住人だ。クレア(ニコラ・コクラン)は飢餓に苦しむエチオピアのために断食するほどエネルギッシュで善意の人だが、なぜか常にパニックモードにある。ミッシェル(ジェイミー・リー・オドネル)は口汚いが世慣れており、テクノ音楽を愛するパーティガール。

そんな4人が通うカトリックの女子校に、イングランド訛りがうざいと男子校で仲間外れにされたミッシェルのいとこ、ジェームス(ディラン・ルウェリン)が転校してくる。地元女子にイングランド男子という不思議な5人組が出来上がり、様々な事件を起こしていくというストーリーだ。

◆どこまで分かる? 懐かしのカルチャー満載

英Guardian紙は、女子たちのおちゃめなユーモアセンスとともにドラマにあふれるのは、一分の隙もない1990年代のノスタルジアだと述べる。ミッシェルが話す下品な言葉は映画『パルプ・フィクション』(1994年)の影響であり、エリンと母親が交わす会話でジョークのネタになるのは『ホーム・アローン』(1990年)で一世を風靡したマコーレー・カルキンだったりする。

女子たちが独立の象徴として学校に着ていこうとするのは当時流行った懐かしの「Gジャン(デニムジャケット)」だ。サウンドトラックにはクランベリーズやサイプレス・ヒルもフィーチャーされており、1990年代に青春を過ごした視聴者が郷愁を覚えることは間違いない。

◆口コミで人気上昇。今後の賞レースでも注目

本作は、脚本、製作を担当したリサ・マギーの子供時代を元にしたものだという。Guardian紙によれば、第1話の視聴者数は280万人超と、Channnel 4のコメディとしてはここ5年間で最高の数字に。面白さが口コミで話題となり、シリーズ平均で視聴者数は250万人と成功を収めている。第1話の好成績により、早々とシーズン2の製作も決定している。

出演者の人気も急上昇中だ。中でもブレイクしているのが、ミッシェル役のジェイミー・リー・オドネル。地元デリー出身の26歳で、これまでは主に演劇やミュージカルに出演しており、TVドラマの経験もあったが、本作で全国レベルのスターとなった。ジェイミーはIrish Independent紙に対し、このドラマのおかげで「道端でみんなに呼び止められて、素敵な言葉をかけてもらえる」と嬉しそうだ。私生活ではDJのボーイフレンドと暮らして幸せいっぱいだが、各地を飛び回る俳優生活も今後は覚悟していると話している。

今月初めにはアイリッシュ・フィルム・アンド・テレビジョン・アワードで4部門にノミネートされた『Derry Girls』。「ガールズ・プラスワン」の快進撃はしばらく続きそうだ。(海外ドラマNAVI)

Photo:『Derry Girls』の"プラスワン"、ジェームズ役のディラン・ルウェリン
(C)JMVM/FAMOUS