ロック大好き人間がひょんなことから名門学校の臨時教師となり、生徒たちにロックの精神と音楽の楽しさを教え込む2003年の大ヒットコメディ映画『スクール・オブ・ロック』。ありえないくらいダメダメ教員の主人公デューイ・フィンを演じたジャック・ブラックのハマリっぷりと、子役たちの歌声や演奏技術に全世界が舌を巻いたハートウォーミングな同作が、TVドラマ版として帰ってきた!
実はこの作品、2015年にブロードウェイ・ミュージカル版も上演されており、トニー賞4部門にノミネートされたほか、イギリスの演劇賞ローレンス・オリヴィエ賞でも2部門にノミネートされてもいる。そんなミュージカル版と時を同じくして、製作・放送開始された本作も2年連続でエミー賞にノミネートされるなど、高評価を得ている。今回、満を持して放送される同作の映画版との違いや、TV版の見どころを、オリジナルもあらためて振り返りながらお伝えしよう。
TV版の舞台は、「Live Music Capital of the World(世界のライブミュージックの中心)」という町の公式スローガンを持つテキサス州オースティン。毎年SXSW(サウス・バイ・サウス・ウエスト)やオースティン・シティ・リミッツ・ミュージカル・フェスティバルといった数多くの音楽祭とライヴで知られるこの町が舞台というのも、今の時代にマッチしている。基本的なあらすじやキャラクターは映画版と同じだが、TV版のバンドメンバーは、 トミカ、サマー、フレディ、ザック、ローレンスの生徒5人、そして教師のデューイと、コンパクトにまとまっている。
TV版は映画よりも時間が長いため、一人ひとりのキャラクターや友情、恋愛模様なども掘り下げて描かれており、オリジナルよりもっと明るくテンポがいい。例えば、バンドのマネージャーであるサマーは、ドラム担当のイケメンでお調子者のフレディが大好きでなんとか彼の気を引こうと毎回あからさまにアタック。お堅いロザリー・マリンズ校長は実は現代音楽が大好きで、一人で腰をフリフリ踊る姿を披露するだけでなく、全身に水をかけられたりと体当たりシーン満載で、さらにコミカルな魅力がパワーアップしている。コメディアンで俳優のトニー・カバレロが演じるデューイは、映画版よりもっとお調子者で、体を張って笑いを取る。そんなデューイが生徒を思う気持ちはとても大らかでいつも前向き。そして自分がミスをすれば素直に生徒の前で過ちを認めることができる。そんな先生がいたらいいなと大人も子どももきっと思う、ある意味で理想の先生像は健在だ。子どもならではの笑える台詞も随所に散りばめられていて微笑ましい。
また、映画版から10年以上経っているため、台詞や設定は当然現代に合ったものに変更されている。生徒たちはスマホやソーシャルメディアを駆使し、憧れのアーティストとして挙げるのはテイラー・スウィフトやビヨンセ、デミ・ロヴァートだ。
パフォーマンス面で映画版と一番異なる点は、デューイが子どもたちと結成するバンドのリードボーカルだろう。ジャック・ブラックがギターとボーカルを務めていた映画版に対し、本作ではブレアナ・イーディー演じるトミカがボーカルとベースを担当。映画版のトミカとケイティが混ざったようなトミカを演じるブレアナは、撮影が始まった頃は弱冠12歳。背が低くてとても可愛らしい女の子なのだが、演技力はもちろん、演奏の腕前とちょっとハスキーで特徴のある声がロックにぴったり!
映画やミュージカルと同様、演奏は全てキャストが実際に行っている。彼らが演奏するのは、ウォーク・ザ・ムーンのヒット曲「Shut Up and Dance」(2014年)やメーガン・トレイナーの「Lips Are Movin」(2014年)、ロマンティックスの1980年のヒット曲「What I Like About You」など、新旧織り交ぜた楽曲のほか、オリジナル曲も含まれる。
【関連記事】親子で一緒に楽しめる作品も! NAVIライター&編集部による2017年おすすめ海外ドラマ総括(前編)
さらに、ゲストとして有名ミュージシャンが出ていることも見逃せない。アメリカのバンド、フォール・アウト・ボーイのベーシスト、ピート・ウェンツが、数話にわたって子どもたちやデューイと関わるミュージシャンを演じている。
キャストと同年代のティーンはもちろん、大人が見ても安心して楽しめる『スクール・オブ・ロック』。アクション満載、ハラハラのサスペンスなども面白いが、映画版のファンはもちろん、『フルハウス』のような温かい軽快なコメディが好きな人には、年齢を問わず是非見てもらいたい。
新たな空気が吹き込まれたTV版『スクール・オブ・ロック』はNHK Eテレにて6月8日(金)19:25からスタート。
(文/Erina Austen)
Photo:『スクール・オブ・ロック』© 2018 Viacom International Inc. All rights reserved. 映画版『スクール・オブ・ロック』© Everett Collection/amanaimages