躍進目覚ましいボリウッドからNetflixオリジナル作品が初登場。ハードボイルド・スリラー『聖なるゲーム』は、閑職に追いやられた警部補がムンバイ市民2100万人の命を守る、エネルギッシュなシリーズ。インドの大物俳優サイーフ・アリー・カーンを主役に迎えた本作は、全米批評サイトRotten Tomatoesで一般視聴者から96%の支持を得ており、評価も高い。
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♦ムンバイの街、壊滅まで25日
警察としての理想を追うあまり、出世街道から外れてしまった警部補サルタジ(サイーフ・アリー・カーン)。そんな彼の元に、ある日、正体不明の人物から犯行予告の電話が。発信者の正体は、ムンバイ裏社会の大物であるガイトンデ(ナワーズッディーン・シッディーキー)。その殺人歴は150件とも言われる彼だが、17年前に姿を消し、死亡説さえ流れていた。
ガイトンデの予告とは、人々でごった返すムンバイの街を25日後に崩壊させるというもの。ギャングスターの突然の復帰に、ムンバイ警察は混乱状態に陥る。Xデーへのカウントダウンが進む中、裏社会との癒着や政治圧力に支配された警察組織は極めてずさんな対応を見せる。正義感の塊であるサルタジは調査から外されるが、巡査部長と諜報部の敏腕エージェントを仲間に取り込み、ムンバイの街を守るための一手に出る。
♦穢れなきヒーローに海外も熱中
主人公サルタジは、揺るぎない正義への信念を胸に秘めた男。金、女、名声が甘い声で幾度となく囁くが、その誘惑に決して屈しない。常に自身の信念を曲げることのない男だと、地元インドのHindustan Timesは紹介している。正しい行動の結果、腐敗した上層部から拘束を受けた時でさえ、その瞳が曇ることはない。
サルタジの高潔なキャラクターは海を越えたアメリカでも好評で、米New York Timesは、正義を貫いたことで長年昇進が見送りになってきた不運な男だと紹介。ハリウッドでもおなじみの人物像であり、アメリカの視聴者も受け入れやすいのだろう。一見100%純粋に思える彼だが、ガイトンデは犯行予告の中で彼の亡き父親の名を口にしている。犯罪組織と何らかの縁をも感じさせるというミステリアスな立ち位置だ。警部補サルタジを演じるナワーズッディーン・シッディーキーは、ボリウッドが誇る名優中の名優。いつの日か大事件に立ち向かうのだと夢見てきた万年警部補のサルタジは、どんなシーンでも親しみを感じさせる。
♦インドのパワーを世界に
インドで製作されるNetflixオリジナル作品は本作が初となるが、その出来栄えは秀逸。Rotten Tomatoesの評価は、批評家と視聴者による肯定評価がそれぞれ86%&97%と好評だ。Hindustan Timesは「Netflixと(ガイトンデ役の)ナワーズッディーンがインドの可能性を世界に見せつける」とのコメントをレビューに寄せ、自信を覗かせる。
撮影地ムンバイの特色を存分に活かしていることも本作が世界で愛される理由だろう。ムンバイ出身のラッパー、ディヴァインが本作のために新譜を書き下ろしており、インドの伝統音楽だけでなく、ボリウッド作品らしさも盛り込まれていると英Metroは指摘する。ストーリーにはユーモアと下っ端が見せるガッツが惜しみなく盛り込まれている。
New York Timesは本作を、「Netflixの視聴者層を広げ、世界のエンターテイメント業界にアピールする作品だ」と高く評価する。宗教対立の背景を踏まえたギャング・ドラマは、コロンビアのドラッグ・カルテルを題材にして成功を収めた『ナルコス』と構造は同じだが、わかりやすく、文化を超えて親しみやすい構成となっている。
信念の警部補がエネルギッシュなムンバイの街を守る『聖なるゲーム』は、Netflixで配信中。(海外ドラマNAVI)
Photo:Netflix『聖なるゲーム』