米誌の選ぶ「2018年上半期ベストTVドラマ」人気作品をまとめてチェック!

2018年は早くも後半に突入。今年も豊作揃いの海外ドラマから、米各誌が上期の一押し作品トップ10を発表している。トレンドとして、「異文化の体験」「リアリティーの追求」「マイノリティーへの脚光」を主題にした作品が多くランクインを果たす結果となった。今年前半の良作を振り返って、うっかり見逃していた一本がないかチェックしてみよう。

■見知らぬ文化に想いを馳せて
まずは現実世界に疲れた私たちに、見知らぬ文化を疑似体験させてくれる作品をご紹介。『Patrick Melrose(原題)』(Vanity Fair誌推薦、以下V誌)は、『SHERLOCK/シャーロック』のベネディクト・カンバーバッチが破天荒な放蕩息子を演じる話題作。1960年代初頭のイギリスから2000年代のアメリカまで、上流階級の世界を時間と国を超えて見せてくれる。同誌はスパイ・スリラー『ジ・アメリカンズ』もピックアップ。こちらは1980年代、冷戦時代のアメリカを舞台にしたスパイ・サスペンスドラマ。ワシントンDCに潜伏するロシア人スパイの夫婦が、祖国ソビエト連邦への忠誠を果たすべく諜報活動を繰り広げる。自分の子どもにさえ正体を明かせない工作員夫婦のアメリカでの生活を追った作品で、絶え間ない緊張感がたまらない。

Rolling Stone誌(以下R誌)は、見過ごされがちな10本の中で『Howards End(原題)』を紹介。1910年代のイギリス小説を原作にしたこの作品は、階級社会が生んだ悲劇を描き、20世紀初頭のイギリスの雰囲気を垣間見せてくれる。時代やロケーションに工夫を凝らしたこれらのドラマは、現代とは一味違う空間に没入できる作品として、アメリカで人気のようだ。

異文化の擬似体験という意味では、コミック原作のドラマも忘れてはならない。おなじみMarvelブランドからは、銃弾をも弾く肉体を手に入れた黒人ヒーローがニューヨークのハーレム地区を守る『ルーク・ケイジ』(V誌)、そして少年と少女がタッグを組む『Cloak & Dagger(原題)』(R誌)がランクイン。Marvelと双璧を成すDCコミックを原作とし、電撃を自在に操る能力を持つ『ブラックライトニング』(V誌)も好評だ。現代アメリカとは違った時空を味わえる作品が各誌に多く取り上げられたランキングになっている。

■リアリティーが人気 実在の人物がモデルに
以上はフィクション作品だが、実在の人物や事件などをベースにした作品の人気も根強い。Paste誌(以下P誌)が選ぶ10本には、シーズン2が好評の『GLOW:ゴージャス・レディ・オブ・レスリング』が登場。取り柄のない女性たちがレスリング団体を立ち上げ、テレビ放送枠を手にする。爽快で現実離れしたコメディだが、実は80年代に実在した興行団体がモチーフ。

よりヘビーな一本を観たい方には、『ホームランド』(V誌)がお勧め。イスラエル作品をベースにしたこのスパイ・スリラーは、テロリストや特殊部隊の任務だけではなく、アメリカの闇と現代社会もリアルに描き、緊張感溢れるドラマ。

アメリカで起きた実際の事件を綴る作品もランクイン。『Unsolved:未解決ファイルを開いて』は、90年代に起きた二人の伝説的ラッパー、トゥパック・シャクールとビギー・スモールズの暗殺事件を題材にしている。彼らのカリスマ性を描いた作品は多いが、ドキュメンタリーとして事件の核心に迫る作品は本作が初めて。より臨場感を求める方には、同じく90年代の事件を扱った『Waco(原題)』も必見。複数の信者を「妻」として暮らす新興宗教の教祖が立て籠り事件を起こし、警察が突入を試みる(ともにR誌)。実在の事件や団体などをベースにしたこれらの作品は、特有のリアリティーに裏打ちされており、各媒体で堂々の選出となった。

■マイノリティーのパワー炸裂
昨今のアメリカ製作ドラマでは、社会問題をさり気なく取り入れることがトレンドに。各誌のランキングには、社会的弱者を力強く支える作品が顔を揃える。

『ダイエットランド』(R誌)は、ふくよかな女性への批判をはねつけるブラック・コメディー。他にも女性が奴隷として扱われる社会を描いた話題作『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』(P誌)など、エンターテイメント性の中にも性差別への問題提起を潜ませた作品は多い。

黒人差別を明るく皮肉る作品も。『親愛なる白人様』は名門大学に蔓延る人種差別を、巧みなユーモアを交えながら風刺。問題提起だけでなく、黒人への偏見をバネにビジネスで成功する少女の物語『Grown-ish(原題)』など、マイノリティーの活躍をポジティブに描く作品も人気だ(ともにR誌)。前掲の『ブラックライトニング』『Cloak & Dagger』も、黒人ヒーローの活躍が眩しい作品になっている。

また、今年はアジア系女優も注目の的に。V誌が推薦する『Killing Eve(原題)』は、アジア系カナダ人のサンドラ・オー(『グレイズ・アナトミー 恋の解剖学』)が主役を射止めたことで話題に。先日発表された第70回エミー賞でも、アジア人として初の主演女優賞ノミネートを果たしている。

さらにはLGBTQに光を当てた作品も流行。Paste誌が推す『Pose(原題)』は、80年代ニューヨークに暮らすLGBTQの人々が華麗なダンスシーンで魅了するシリーズ。キャストの多くに実際のLGBTQの人々を迎えている。オーストラリア人コメディアンが自身のジェンダーや性的指向、幼少時代の辛い思い出をを笑いに変えるトーク番組『ハンナ・ギャズビーのナネット』や、70年代に起きた同性愛にまつわる政治スキャンダル『A Very English Scandal(原題)』など、同誌は性自認をテーマにしたドラマを多く紹介している。

日常から遠く離れた世界に誘う作品から、あえてリアリティーを強調した作品、そしてマイノリティーの活躍にエールを送る作品まで、幅広いジャンルのドラマが各誌のトップ10を占める結果となった。見逃した作品がある方は、話題がホットな今のうちにぜひチェックを!(海外ドラマNAVI)

Photo:
『ジ・アメリカンズ』 (C)2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
『MARVEL ルーク・ケイジ』シーズン2
『GLOW:ゴージャス・レディ・オブ・レスリング』シーズン2
『Killing Eve』(C)BBC AMERICA/Sid Gentle Films Ltd 2018