Netflix『エリート』レビュー スペイン発の学園ドラマはスタイリッシュなサスペンス

昨年、スペインで制作された『ペーパー・ハウス』が大ヒット。それに続けとばかりに今年10月に配信されたのが同じくスペイン発の『エリート』である。話は、エリート私立高校に入学することになった普通(もしくはそれ以下)の家庭の子供たちと、お金持ちの子息・子女とのトラブル。そして、学園で起こった殺人事件を中心に展開する。

一見、貧乏な主人公とお金持ちの子女とのロマンスをサスペンスで味付けした、ありきたりな学園モノに思えるかもしれない。しかし、入り組んだストーリーラインと伏線、俳優たちの演技は魅力にあふれ、思わずシーズン1の全8話をイッキ見してしまうほどの引力がある。

舞台はスペイン随一のエリート校「ラス・エンシナス」。そこである日、殺人事件が起こる。警察が現場検証に入り、遺体がまだ横たわる事件現場に血だらけの学生が現れる。彼の名前はサミュエル。エリート私立校に通えるような家庭環境ではないが、以前通っていた公立校で崩落事故が起こり、事態を収拾するために建設会社から提供された奨学金で入学してきた学生の一人だ。

ラス・エンシナスに奨学金で入学したのは3人。お金持ち子息・子女たちの一部は、育った環境がまったく異なる彼らを蔑視したり、興味本位でちょっかいをかけたりするが、一人は頭を低くして声を潜め、一人は周りの声を無視して勉学に励み、そしてもう一人は我関せずと明るく物怖じしない性格を前面に押し出して過ごしている。しかし、そんな学園生活も、殺人事件が起こったことで一転しようとしている。

すべてを手に入れることができる者と、なくすものが何もない者。そんな対照的な人生を送る高校生たちを主人公に織り成すドラマは、スペインものらしくセクシーでちょっと過激。そこにHIV、宗教、同性愛弾圧などの社会問題もちりばめた、考えさせられる作品である。

よくある学園ものの内容をふんだんに取り入れながらも、『エリート』が頭一つ抜けているのはストーリーの組み立てである。警察の事情聴取に答えるという設定で時間軸を現在から過去に動かしながら、伏線を張ることで飽きのこないストーリーラインを作る。

このドラマのストーリーに対して、Variety誌は『エリート』にはいくつものティーン向けドラマの典型が含まれているが、もっと深く掘り下げ、さらに興味を駆り立てるためのひねりがあるとしている。的確にフラッシュバックを使う構造をとっているので殺人ミステリーという主題がぶれることなく、全8話の結末を見る前に見るのを止めることは難しい、と高評価。

そしてGlobe and Mail紙は、やはり星の数ほど存在する学園ドラマの要素を含むと述べる一方、そこには居心地の良い親近感に隠された怒りが感じられると評している。屋根が崩れた公立校は、崩壊した(スペイン)社会の象徴であることは明らかである、と評する同紙は、「スペイン自体の怒りの告発だ」とする。そして、奇妙なほどに満足感を与えてくれる、一見の価値ありのドラマだとしている。

各メディアが論じる構成やメッセージ性はもちろん、早口のようにも聞こえる美しいスペイン語、控えめながら可愛らしい制服の着こなしなど、ヨーロッパらしいスタイリッシュな感覚がふんだんに盛り込まれた『エリート』。週末に一気に見たくなるシリーズだ。

『エリート』シーズン1はNetflixにて配信中。シーズン2は2019年中に配信予定。(海外ドラマNAVI)

Photo:Netflixオリジナルシリーズ『エリート』