Amazon『パトリオット ~特命諜報員 ジョン・タヴナー~』シーズン2 ジョンの物悲しいメロディーは続く

Amazon Primeのオリジナル・シリーズ、『パトリオット ~特命諜報員 ジョン・タヴナー~』。クールなスパイが颯爽と駆け回る姿を想像した方は、観始めると違和感に気づくだろう。過酷な指令と二転三転する状況に振り回される、哀しくも可笑しいスパイ物語の本作。11月上旬からシーズン2の配信が始まっている。

【関連記事】元祖"黒縁メガネスパイが復活!英スパイドラマ『ハリー・パーマー 国際諜報局』が日本上陸!

♦しどろもどろの諜報員

ジョン(マイケル・ドーマン)はアメリカの諜報部員。米国務省で情報長官を務める父(テリー・オクィン)の命を受け、非公式のスパイとして暗躍する。ところがシーズン1の開幕と同時に、ターゲットを取り違えて無関係な人命を奪い、トラウマを患うことに。マリファナに頼ったり、極秘のはずの任務をフォークソングに仕立てて歌い上げたりしながら気を紛らわし、傷を癒そうと務めてきた。

好評だったフォークソングのシーンは、シーズン2でも度々登場。物悲しいメロディーに乗せて、成功の見込みのほとんどない作戦が順調に運ぶよう願い、任務完了の暁には一杯のワインで疲れを忘れたいと寂しく歌い上げる。それでもジョンの負った心の傷は癒えないが、世界情勢の緊張が高まる中、情報長官の父には息子を顧みる余裕もない。やつれきったジョンは、警備厳重な隔離区域にいるイラン人の暗殺という難度の高いミッションをしぶしぶ受諾する。

♦「私たちみたいなスパイ」

任務に振り回されるスパイという着想がユニークな本作。Amazonが取り揃える『トム・クランシー/CIA分析官 ジャック・ライアン』などの本格スパイ・アクション作品と一見同類に感じるかもしれない、と米Salonはコメント。しかしその実、コメディテイスト溢れる作品になっている。主人公ジョンは骨の折れる仕事にいつも追われ、精神も極限まで追い詰められている。手際よくミッションをこなすヒーロー像とは遠いその姿を、同メディアは「私たちみたいなスパイ」と親しみを込めて表現している。

米Hollywood Reporterは、クセのある素晴らしいドラマだと讃え、主演マイケルの果たす役割の大きさに注目する。意気消沈したキャラクターを演じつつ、ドラマの主役として強力な磁石のように観客を惹きつけなければならない。有能なスパイ、愉快なキャラクター、そして時にはフォークソングの歌い手と、あらゆる役回りをやってのける。記者の仲間内では作品を「悲しみのスパイたち」という愛称で呼んでいるほどだといい、スパイでありながら哀愁を漂わせるジョンの姿が印象的なシリーズだ。

♦バイオレンスとコメディの融合

ルクセンブルクとパリを股に掛けるシーズン2のストーリーは、非常に複雑な展開を見せる。計画とは違った出来事に出くわすという物語の性質上、予想外のひねりがあちこちに。シーズン1ではイランの核開発を阻止するという壮大な目的を掲げたジョンだが、そのために潜入した配管工場での仕事はあまりにも地味。そのギャップがたまらなく好きだった、とHollywood Reporterは振り返る。こうして世界観とキャラクター性を築き上げてから、アクションに満ちたスパイ活動のシーンに一気に雪崩れ込むのが、製作・監督・脚本を手掛けるスティーヴ・コンラッドの手法だ。シーズン2では複数の指先が切り落とされ、どれが誰の指かわからなくなるというトラブルが発生。残虐なビジュアルにユーモラスな会話が重ねられ、独特の世界が展開する。

こうした気の利いた会話こそ本作の魂だ、と前述のSalonは評する。肉弾戦も銃撃戦も本作の主体ではなく、入念に練られたセリフの息もつかせぬ応酬と、それを際立たせる静寂こそが作品の核だと述べている。奇抜さと、星のない夜空のようにブラックなユーモアとを混ぜ合わせたドラマだとの評価だ。

傷心のスパイが繰り広げる『パトリオット ~特命諜報員 ジョン・タヴナー~』シーズン2は、Amazon Primeで配信中。(海外ドラマNAVI)

Photo:マイケル・ドーマン
(C) Denis Makarenko / Shutterstock.com t