『ベスト・キッド』の30年後描く『Cobra Kai』 コブラ会復活で二人の対決再び...

1980年代の大ヒット映画『ベスト・キッド』シリーズでは、弱々しかったアメリカ人少年が、空手の達人ミヤギから手ほどきを受けて因縁のライバルとの決闘にこぎ着ける。現在YouTube Premium(旧YouTube Red)で配信中のドラマ『Cobra Kai(原題)』は、その続編となる物語だ。字幕付き全10話のうち2話までを無料視聴できるほか、サービス加入者には全話が公開されている。

◆30年経ってもライバル

旧シリーズでの空手選手権で、少年ジョニー(ウィリアム・ザブカ)は主人公のダニエル(ラルフ・マッチオ)との一戦で屈辱的な敗北を喫する。相手の負傷している脚を狙ったものの、顔面にキックの反撃を受け、だらしなくマットに沈むことになった。それから30年が経った現在。今では中年となったジョニーは、散らかったアパートで二日酔いの朝を迎える。かつてのスポーツ少年の見る影もない彼を空手の世界に呼び戻したのは、隣人の少年ミゲル(ショロ・マリデュエニャ)からの依頼。イジメに悩むミゲルから、格闘技術を伝授してほしいと頼まれたのだ。「情けは無用」のモットーを掲げる残忍な道場「コブラ会」が、こうして復活する。

一方、ジョニーの宿敵ダニエルは、カーディーラーの社長として満ち足りた暮らしをしている。彼の写真を大々的に載せた広告看板には、得意の空手にかけて「ライバルを蹴散らします」の文字が。余裕の毎日を送っていたものの、ジョニーが道場を開いたという噂を聞きつけて敵対心が芽生えたダニエルは、弟子同士の対決に持ち込むことで再びジョニーを打ちのめそうと一計を案じる。

◆ノスタルジーと若い感性と

本作は単に『ベスト・キッド』の続編というだけでなく、ニヤリと笑ってしまうようなオマージュに溢れている、と米New Yorker誌は述べる。チープなジョークや使い古された仕草などもあるにはあるが、そうした欠点でさえ、彼が青年期を過ごした1980年代の雰囲気を伝える武器になっている、と同誌。過去作を知る人もそうでない人も、懐かしい空気感を楽しめる作品だ。

ノスタルジーと少年ならではの苦悩を織り交ぜた愉快なコメディ、と表現するのは米Entertainment Weekly誌。古い雰囲気をキープするだけでなく、現代に求められる男らしさとは何か、という新しいテーマを持ち込んでいる本作。その例として同誌は、ジョニーが弟子のミゲルを挑発しようと試みるシーンを紹介。「女々しいぞ、タマはついているだろう」とけしかけるジョニーに、ミゲルは「性差別だと思わないの?」と冷静に返す。弟子を取ったまでは良かったものの、若者感覚の理解に苦しむジョニー。師弟のジェネレーションギャップが笑いを誘う一幕だ。

◆かつての主人公は憎まれ役に

3作目からおよそ30年の時を経た続編とあって、本作では主役二人の変化にも注目したい。前シリーズで好感の持てる負け犬だったダニエルは、今作では少々嫌味な成功者という位置づけに。仕事で成功を収めている上に私生活では2人の子どもに恵まれているが、お高くとまった人間になってしまった、と同誌。以前の宿敵だったジョニーを主役に据えた物語とあって、ダニエルの印象の変化は致し方ないところだろうか。

しかし、そんなダニエルも安穏としてはいられない。ジョニーによる道場開設は、怒りと無力感に涙を呑んだ日々をダニエルに思い起こさせることになる。卑怯で暴力的な技の数々に震えた苦い過去を振り払うべく、打倒コブラ会を胸に誓う。ジョニーと直接拳を交えるシーンはほとんどないものの、精神的な駆け引きがハイライトとなる、とEntertainment Weekly誌。両者の門下生がトロフィーを奪い合う空手選手権が、本作の大きな見せ場となる。

永遠のライバル同士が弟子に勝敗を託す『Cobra Kai』は、YouTube Premiumで配信中。(海外ドラマNAVI)

Photo:ラルフ・マッチオ
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