ジュリア・ロバーツ主演『ホームカミング』は二つの時間軸を巡る上質の心理スリラー

昨年度、米大手紙のレビュアーがこぞって推薦したAmazon Prime Original『ホームカミング』が、日本でも視聴可能となった。元兵士たちの社会復帰を助ける謎の施設で、何が行われていたのか? ジュリア・ロバーツ演じるハイディが、当時と4年後の二つの世界で施設の真実に迫る。

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トラウマを癒す謎の施設

2018年、フロリダのホームカミング帰国移行支援センター。ここでは戦地で心に傷を負った兵士たちのメンタルをケアし、市民生活に復帰できるよう手助けを行っている。ほかの入所者との共同生活や就業訓練などを通じ、トラウマの克服を目指すプログラムが進行中。カウンセラーとして働くハイディ(ジュリア)は、除隊した兵士のウォルター(ステファン・ジェームズ)の担当に。不眠と暴力的衝動に駆られるという彼を回復させるのが表向きの計画だ。しかし、ハイディと上司のコリン(ボビー・カナヴェイル)との会話からは、治療のために時には薬物を使用すること、そしてウォルターが何らかの有力候補に挙がっていることがほのめかされる。

時折挿入される4年後のシーンでは、転職してウエイトレスになったハイディの元を、国防総省から来た監査担当職員が訪問。当時の兵士たちが強制収容されていた疑惑があるとして、ハイディに聞き取り調査を行う。しかし不可解なことに、彼女にウォルターの記憶はまったくなく...。施設の真の目的は何だったのか? 上司がドイツ人と詰めている完成間近の計画とは? 二つの時間軸と錯綜する記憶を巡る心理スリラー。

シンプルで奥深い、正統派スリラー

ミニマムな構成が非常に効果的な作品だと米New York Times紙は論評。疑心暗鬼の元兵士と職員たちが直面するショッキングな真相を、オールドテイストな映像美で描き出す。サブプロットに話が発散せず、一本のメインストーリーをどこまでも掘り下げている点も、ストーリーの質の高さに貢献している。全10話のエピソードには吸い寄せられるような魅力がある、と同紙は述べている。B級スリラーのように急な演出で驚かせるようなことはなく、無機質な施設や暗喩表現、そして組織の非人間的な理念などを通じ、物静かで得体の知れない恐怖をじわりと感じさせる作品だ。

ジュリア演じるハイディの不可解な立ち位置も、スリルを静かに加速する。2018年に確かにカウンセラーを務めていた彼女は、退職後になって当時の記憶がほとんどないことに気づく。二つの時間軸を通じて違った姿を見せるハイディ。そのギャップから、一挙一動について何か別の意味があるのではと疑わずにいられない、と米Entertainment Weekly誌。見かけ上のストーリーとは裏腹に、画面の背後には大きな別の真実が横たわっている。

映画女優がドラマへ

ジュリアといえば、やはり映画女優のイメージが強い。そのため、本ドラマへの出演および製作総指揮としての参加は、昨年大きなニュースとなった。作中では、施設でのキャリアを捨てウエイトレスに転身したハイディを演じる。プライドが傷ついたハイディだが、施設での記憶が蘇るにつれ不安はさらに増大。控えめな演技で精神的苦痛を表現する今回の役は、特に数年後に振り返った時に非常に興味深いものとなるだろう、とEntertainment Weekly誌は評価している。

ジュリアの演技についてはNew York Times紙も、慎ましく重層的な演技だとコメント。組織で働く彼女は良心に則った行動を信条としているが、徐々に忍び寄る惨事の前兆に気づき始める。

『ホームカミング』はAmazon Prime Videoで配信中。Amazonはすでにシーズン2製作を発注済み。続編にジュリアは出演しないが、引き続き製作総指揮を務める。作品レビュー、視聴記録は海外ドラマNAVI作品データベースから。(海外ドラマNAVI)

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Amazon Prime Original『ホームカミング』