離婚寸前夫婦の本音トークが染みる...1話10分の斬新コメディ『State of the Union』

あわや破局かというカップルが、酔いに任せて言いたい放題。米Sundance TVの『State of the Union(原題)』は、10分という短い放送時間のなかに巧みな話術を濃縮したコメディドラマ。

ムダ話こそ、最良のカウンセリング?

一見お似合いのカップル、ルイーズ(ロザムンド・パイク)とトム(クリス・オダウド)。ここ最近の仲は良好とはいえず、顔を合わせればケンカばかり。ルイーズは冷淡になったトムの態度に不満で、トムのほうは音楽評論家の仕事が上手くいっていないことにプライドを傷つけられている。二人は激しく対立し、とうとう離婚の瀬戸際まで自分たちの関係を追い詰めてしまった。カウンセラーの元へ通うが、あらたまった場ではなかなか素直になれないもの。セッションが終わる頃には互いを非難しあってヘトヘトになっている。

そんな二人の潤滑油は、カウンセリングの前に診療室の向かいにあるバーで交わすアルコール。ひとたびお酒の力を借りれば、カウンセリングのセッションのときよりも、素直な本音がポロポロとこぼれ出る。自分たちの関係を病気や政治交渉などになぞらえて話し始めると、二人はいつもよりさらに饒舌に。酔いの回ったルイーズとトムの口から、筋の通っているようで支離滅裂なたとえ話しが次々と飛び出す。

当意即妙の掛け合い

間髪いれない二人のやり取りが本作のチャームポイント。結婚生活の問題点を議論していたはずが、あれよあれよと脇道に逸れてゆく。New Yorker誌はとあるシーンを紹介する。「最後の4秒間に話した話題についてしか私たち話せていない」とルイーズが核心を突くと、「誰かさんがおかしなことを言いだすから、おかげでそれについて喋って終わってしまうんだ」とトム。無駄口だらけの掛け合いに、楽しくくだらないひととき、と同誌は賛辞を贈る。

そんな二人を演じるロザムンドとクリスを、New York Times紙は評価している。表情豊かで活気ある演技に魅了され、あまりに愉快なトーンに離婚の瀬戸際という設定も忘れてしまうほど。生活のマンネリ化が不和の原因だが、ドラマの方は毎話フレッシュな会話劇を届ける良作となっている。

情緒豊かな50年代風の密室劇

二人のトークショーとも言うべき本作は、ほぼすべての時間がバーでの会話に割かれている。バーの後で二人はカウンセリングに通っている設定だが、カメラは診療室の内部には立ち入らず、視聴者はおもにバーでの会話を通じて前回のセッションの内容を推し量るという仕組みだ。

ワンシーンのみの内容だが、ルイーズとトムのキャラクターがそれぞれ視聴者の感情に強く訴えるため、まったく飽きはこない。狭いセット内をバリエーション豊かに見せるカメラ割りも優秀だ。監督のスティーヴン・フリアーズ(『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』)良い仕事をしている、とNew York Times紙は評価している。

70年前のドラマ黄金期の作品を振り返るようなシリーズ、とNew Yorker誌は表現。クリエイターのニック・ホーンビィ(『アバウト・ア・ボーイ』)は、本作であえて昔のドラマのような芝居臭さを残している。そのスタイルが良い味を出している、と同誌は感心した様子だ。

犬も食わないはずの夫婦喧嘩に不思議と聞き惚れる『State of the Union』は、米Sundance TVで5月に全10話が放送された。(海外ドラマNAVI)

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ロザムンド・パイク&クリス・オダウド
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