『アベンジャーズ』とのつながりも見逃せない!識者が教える『ギフテッド 新世代X-MEN誕生』シーズン2の魅力

大ヒット映画『X-MEN』シリーズの生みの親であるブライアン・シンガー製作総指揮のもと、マーベルが贈る『X-MEN』のTVドラマシリーズ『ギフテッド 新世代X-MEN誕生』(以下『ギフテッド』)。その大人気シリーズ待望の続編となるシーズン2のDVDが7月3日(水)にリリースとなる。

今回、アメコミライターとして活躍している杉山すぴ豊さんを直撃! 『ギフテッド』シーズン2の魅力や見どころ、そして大ヒット公開中の『X-MEN:ダーク・フェニックス』と絡めた楽しみ方などについて語ってもらった。

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――X-MENユニバースに新たな1ページを刻んだ本シリーズを初めて見た時はどう思われましたか?

X-MENはスケールの大きな話なので、これをドラマ化すると知った時は大丈夫かなと思ったんですよ。だけど、見てみたらすごく良くできていましたね。X-MENが持っている、人間とミュータントという、映画でも描いていたディスカッション・ドラマみたいな部分というものをドラマとしてうまく取り上げていて、X-MENの良さがしっかり出ているなと感じました。それと、そんなにX-MENのことを知らなくても一つのSFドラマとして楽しめるなと思っています。あえてタイトルを『X-MEN:ギフテッド』としなかった理由ってそこなんじゃないかなと思いましたしね。

――確かに映画のタイトルにある"X-MEN:"を付けたくなりますよね。

X-MENのTVドラマシリーズを作ろうとすると、普通は映画版のスピンオフを考えるじゃないですか。ミスティークのスピンオフとか、X-MENのメンバーのうちの誰かの話からいくのかなと思ったら、なんらかの理由でX-MENが全員いなくなっちゃって、残されたミュータントはどうするのかみたいな話になっているところが、すごくてハマれるなと。それに、映画シリーズはミュータントの方に感情移入する作りになっていて、人間の酷さを描いていますけど、『ギフテッド』は人間のターナーとかがやっていることも結構正しいんですよね。自分がターナーだったらこうなると思うので、このシリーズは意外にも悪者がいないんですよ。それぞれが被害者だし、それぞれが闇なことをしていて、みんなが罪人みたいな話なんです。それによって、いろんな視点で見られるというところが『ギフテッド』のすごく良いところですね。

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――今回のシーズン2の見どころや気になるポイントは?

シーズン1はそれでもX-MENっぽさがあって、ミュータントVS人間とかが描かれていたんですけど、シーズン2はその状況の中で家族がバラバラになっていて、家族を取り戻す話になるんですよ。だから、ドラマとしての密度が濃くなっていますね。それとシーズン1よりもアクションの見せ場がすごくいいんです。「アクションを見せるためのアクション」が減っている感じで、ドラマの中で必然的にこの力を使わないといけない描き方になっているんです。そうしたドラマとアクションがうまくリンクしているところも見どころですね。

――作る側としてはミュータントパワーをどうしても見せたくなるから、「アクションを見せるためのアクション」で作っちゃう方が楽ですよね。

そうですよね。でもシーズン2は、襲いかかってくるものに対してどうしてもミュータントパワーを使わなきゃいけないとか、とんでもない事態になるから止めなきゃいけないとかみたいなところがあって、無駄な救出作戦とかは少ない気がするんですよ。それから、シーズン1の時よりもそれぞれのミュータントが自分の力をうまく使えるようになっていますね。ローレンとアンディの姉弟は特にそうだし、ブリンクもシーズン2ではポータルを操れるようになっていますから。それと、コミックスとか映画に出てきたモーロックスとか、そういう設定が出てきたりしているのも嬉しいですね。

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――家族のドラマとして、シーズン1ではリードたちストラッカー家のドラマが中心でしたけど、シーズン2ではエクリプスとポラリスに赤ちゃんが生まれて、さらに、家族のドラマとしての幅が広がっていますね。

シーズン1では、ストラッカーという家族、そしてエクリプスとポラリスのカップルといった形で逃げていたんですよね。だけど、シーズン2は家族がバラバラになっていたり、カップルで子どもがいるのに一緒じゃなかったりだとか、そういったシチュエーションの中で敵味方に分かれているんですよ。そこから、家族を取り戻していくという。だから、シーズン2は人間とミュータントのどっちが生き残るかじゃなくて、家族を取り戻す方が大事になっているんですよ。そこがリアルなところだなと思いますね。

――シーズン2ではいろんなキャラクターの過去が描かれているのも面白いです。

見ていてうまいなと思ったのが、冒頭にその回のメインの人の過去が出てくるところですね。過去が出てくることで、そのキャラクターがこの行動を取るのにはこういう理由があったんだなと分からせる点はすごく良かったです。新キャラのリーヴァも嫌な女にしか見えないんだけど、過去を知るとこの人も大変だったんだなと思えて、感情移入しやすくなるんですよ。

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――シーズン2全体のストーリー展開はいかがでしたか?

シーズン2としての物語は完結するので見終わった後の感じはすごくいいですよね。シリーズ全体のミュータントと人間の対立という問題は決着しないんですけど、少なくとも家族の問題は一つ解決するから、満足感があります。今っていろんなアメコミドラマがありますけど、本作は割と初心者が見やすいドラマじゃないかなと思います。ドラマとしての完成度も高いので、原作とか映画を見ていない人でも楽しめるんじゃないでしょうか。

――X-MENの原作ファンや映画ファンからすると、シーズン2はどんな風に楽しめますか?

X-MENのコミックスとか映画が好きな人は、「この設定をこうアレンジしたのか!?」みたいなことで楽しめると思います。原作でマグニートーの娘という設定のポラリスがマグニートーのマークのようなメダルを持っていて、それであるものを作ったりとか、さりげなくウルヴァリンのジャケットが出てきたりとか、フロスト姉妹も『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』に出てきたエマ・フロストに関係しているんじゃないかとか、そういったところは面白いですよね。リードたちストラッカー家に至っては、世界観が違いますけどマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)にも登場する(編集部注:『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』)あのストラッカーの血筋ですよね。実はこの『ギフテッド』はFOX系のX-MENコンテンツの中で一番MCUにつながっていると言われているぐらいなんですよね。そういうところとかやっぱりうまくできているなと思います。

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――『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』のエマ・フロストが所属していた組織「ヘルファイアー・クラブ」から生まれたのが、『ギフテッド』シーズン2のフロストが所属する「インナーサークル」ですよね。

原作だとフロストの子どもは3つ子ですが、『ギフテッド』だと設定を変えて5つ子でクローンだったみたいなことにしていて、そういう設定が活きていますよね。「ヘルファイアー・クラブ」ってコミックスだとそもそもダーク・フェニックスを誕生させてしまう組織で、「ブラザーフッド」よりも面倒くさいカルト集団的な存在なんですけど、そういうのをうまくアレンジしていますね。

――「ヘルファイアー・クラブ」とダーク・フェニックスの話が出ましたが、現在公開中の『X-MEN:ダーク・フェニックス』と『ギフテッド』を絡めた楽しみ方があれば教えてください。

『X-MEN:ダーク・フェニックス』も『ギフテッド』のシーズン2も共通しているのが、身内がメンタルで暴走した時にどうするのかという話なんですよね(笑) その時、見捨てるのかどうかという。もしかすると人間にとって一番怖いのは、家族とかそういうものがそうやって壊れていくことなのかもしれないですよね。そういう意味では優れた家族ドラマだと思います。『X-MEN:アポカリプス』だといきなりすごい敵が出てきて、それをみんなでやっつけるというお話でしたけど、今回は身内の中からそういうものが出てきちゃった時にどうするのかというところなんですよね。『ギフテッド』のシーズン2も人間とミュータントが戦っているというよりは、家族同士のすれ違いとかがあって、アンディに対して見捨てるべきだという思いと、取り戻したいと思う葛藤があったりとかね。エクリプスも諦めが悪いですよね、ポラリスの方がとっとと「私は子どもと生きる!」みたいになっているのに(笑)

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――アメリカでも男の方が未練がましくて、女性の方がサバサバしていると(笑)

そうですね(笑) あと、『ギフテッド』のシーズン2と同じく『X-MEN:ダーク・フェニックス』も、「アクションを見せるためのアクション」を作っているんじゃなくて、割とドラマとアクションがシンクロしている感じがして、そこも良かったです。

――本作でもいろいろなミュータントパワーが登場しますが、ご自身が持てるとしたらどんなミュータントパワーが欲しいですか?

『ギフテッド』のポラリスも映画のマグニートーもそうですけど、金属を操るミュータントパワーで銃を使えなくすることができるじゃないですか。人類が忌むべき銃を無力化するポラリスとマグニートーというのはすごく象徴的なキャラクターですよね。一方で人の頭を読めるミュータントパワーというのは個人情報的にどうかなと。プロフェッサーXとかどうなのよって思うんですよ(笑) 自分がミュータントパワーで何を持っていたら一番いいかなといったら、ナイトクローラーや『ギフテッド』のブリンクの瞬間移動ですね。イヤだったらその場からいなくなるというのが最強なんじゃないかな(笑)

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――X-MENユニバースは新作が続々と登場しますが、今後新しいTVドラマシリーズが作られるとしたら、どんなことを期待しますか?

基本的にミュータントの話なので、例えば『ギフテッド』のキャストじゃなくても作ろうと思えば作れますよね。また新しい世代の話とかになるかもしれないと思いますけど。ただ、ポラリスと3つ子のフロストが好きなので、この人たちのドラマを作ってもらって、また会いたいですね(笑)

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『ギフテッド 新世代X-MEN誕生』シーズン2は、7月3日(水)DVD発売&レンタル開始、先行デジタル配信中。『X-MEN:ダーク・フェニックス』は大ヒット公開中。

(取材・文・写真/豹坂@櫻井宏充)

Photo:杉山すぴ豊さん『ギフテッド 新世代X-MEN誕生』シーズン2 ©2019 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved. 『X-MEN:ダーク・フェニックス』 ©2019 Twentieth Century Fox Film Corporation